「ひろがる」を使った会話授業をやってみた

投稿者: | 2018年1月23日

担当する日本語会話の授業で「ひろがる」を使ってみました。ここではその授業の流れについて書いてみたいと思います。

「ひろがる」とは

国際交流基金の関西国際センターが制作した無料日本語学習サイトです。「趣味などの自分の楽しみを通して日本語と異文化理解能力の育成を支援するサイト」と 紹介されています。

ひろがる

のぞいてみると分かりますが、様々なテーマの話題が提供されています。 そして、そのテーマに沿った音声教材や記事などがたくさんあるので、日本語を一人で勉強する人などにとってはなかなか重宝するウェブサイトであろうと思われます。あまり一斉授業での利用などは想定されていないと思いますが、初めて見た時から「いつかこれは授業で使ってやろう」と思っていました。

対象としたクラス

韓国の大学の日本語専攻2年生の後期です。N 1を持っている学生もいますが、 大体は日常会話が何とかできるかというレベルです。規模は25人程度 で、男女はほぼ半々ずつ。一回分の授業時間は50分×2です。

この授業の目的は「 日常的なテーマについて楽しくおしゃべりできるようになる」 と設定しました。

授業の流れ

1.クラスの学生を 4人程度のグループに分けます。毎回6つのグループができました。

2.あらかじめ決めておいたその日のテーマのページに入ってメインの動画を 見せます。

「ひろがる」では動画の字幕を消すこともできます。はじめは字幕を消して見せました。また、ただ漫然と見せるだけではなくて、以下のスライドのような聞き取るべきポイントを示しておきました。

これはその日のテーマに対する動機づけのようなものです。1回か2回聞いた後に、各グループごとにその設問について答えてもらいました。そして最後に字幕を見ながらその動画の解説をしたりします。

3. そのテーマのメインのページを下の方に行くと 「トピックと私」という項目があります。

そこに入ると、日本語母語話者の人がそのテーマについての簡単な質問に答えている動画を見ることができます。ですが、これも漫然と動画を見るのではなく、見る前にタスクを課しました。そのスライドが以下です。

前もってそのインタビューの内容を自分(私のことです)で韓国語に直したものを提示し、その韓国語の内容を日本語で話すならどのように話せばいいだろうか、をグループで考えてもらう時間を持ちました。 私の翻訳も適当ですし、その翻訳に対する日本語の形も色々なものになると思うので唯一の答えがあるというわけではありません。

少し時間を与えた後に、各グループごとに考えた日本語を話してもらい、最後に実際のその日本の人が話している動画を見て、「こういう話し方をするんですね」というような確認を行いました。

4.さて、ここからがメインの活動です。以下のようなスライドを提示しました。

その日のテーマについて同じグループのみんなと日本語だけで話をしてください、ということです。あまりにもアバウトだと思われるかもしれませんが、この授業のテーマ自体が「日常的なテーマについて楽しくおしゃべりできるようになる」ということなのでこういうことにしました。

学生たちを見ると、授業時間の合間の休憩時間に本当に楽しそうにおしゃべりをしているんです。そういうのを日本語でできたらどれほど良いだろうか、というのがこの授業を考えるに至ったきっかけです。

しかし授業ですからやりっぱなしでは意味がありません。その会話の内容をスマートフォンで各自のグループで録音しておくことにして、その会話の後にフィードバックの時間を持ちます。

5.先ほどグループ別に録音した音声ファイルを、その4人程度のグループみんなで聞きます。そして、先ほどの会話で自分が言えなかったことや表現したかったことをどのように言えばいいだろうかについて、グループのみんなで考えようというものです。もちろん、この時のグループ内でのやり取りは韓国語でおこないます。これがこの活動の肝です。

この「音声ファイルを聞いてフィードバック」というのは自己の経験からくるものです。私は最近オンラインの英会話レッスンを受けているのですが、レッスンが終わるとすぐにそのレッスンの内容を録音した音声ファイルが送られてきます。そのファイルを聞きながら、英語が比較的上手な自分の妻と一緒に「ああでもないこうでもない」とフィードバックをしているんです。「この時はこう言いたかったけど、どう言えばいいだろうか」というようなことです。これは非常に勉強になります。

6.フィードバックが終わったらグループを変えて、また同じ活動(4番と5番)を繰り返します。もしちゃんとフィードバックができていれば、1回目の会話よりも2回目の会話はきっと上手になっているはずです。

これがこの授業の大体の流れです。私はただグループの周りを巡回して、彼らがやることを眺めているだけです。時々その会話に加わったりしました。テーマの設定によって、沈黙が続く回もありましたが、なかなかおもしろい活動だったと思います。

「ひろがる」を使った会話授業をやってみた」への5件のフィードバック

  1. 今井理衣子

    はじめまして。浦項にある威徳大で教えている今井と申します。会話の授業で悩んでいて、いろいろ探して先生のブログを拝見しました。ひろがるを使った授業、私も真似してもいいでしょうか?
    (実は、先日、慶州の東国大のまつざき先生とお会いして、佐久間先生のこと、ちょこっとお聞きしました。)よろしくお願いいたします。

    返信
    1. shirogb250 投稿作成者

      どうも、コメントありがとうございます〜そうですか、松崎さんのお知り合いなんですね。松崎さんにはいつもお世話になっています〜

      もちろん、私のやり方で授業に取り入れられる部分がありましたら、どんどん取り入れてください〜ブログを書いている身としては、一番嬉しいことです!ありがとうございます〜

      返信
  2. まつざき

    まつざきです~。今井先生からこの「ひろがる」サイトのことをお聞きして、同僚にも伝えたところ、今学期の授業でオフィシャルに使うことになりました。人がつながって、やることがひろがって、嬉しいです!お二人とも、今後ともよろしくお願いします。

    返信
    1. shirogb250 投稿作成者

      どうもご無沙汰しております。

      そうですか。それはよかったです~。

      わざわざご連絡ありがとうございます。

      返信
  3. ピンバック: Web上の音声や動画をダウンロードするには | さくまログ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です