半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記④

投稿者: | 2018年8月8日

半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記①
半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記②
半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記③ からの続きです。

私がわざわざ韓国から中国まで自腹を切って合宿授業を見に行った理由を一言で言うと「笈川メソッドの評判を聞いて」なわけですけど、決め手になったのは「よくネット上で目にする学習者との集合写真」です。今回の合宿で言うと、↓のような写真です。

なぜ、こんなにたくさんの学生を集めることができるのか → 集まっているということはそれなりの秘密があるに違いない→その秘密を知りたい!・・・という理路です。1クラス40人ほどでもまとめていくのは大変なのに、どうやったら数百人も指導できるんだろうか。

でも、参加してわかりましたが、やはりというか当然というか、参加学生一人一人へのケアはちゃんとしっかりなされているんですね。その一例が↓の写真です。

これ、隠し撮り(笑)したものです。手前に写っているのは私の頭。授業の真っ最中に、奥の方で笈川先生と学生が何やら深刻そうに話をしているんですね。私はチラチラ見ていたんですが、10分ほど会話が続いていたようです。最初深刻そうだった学生の顔も10分後には笑顔になりました。一体どんな魔法を使ったんだ!

後で思い切って聞いてみたところ、「ついていけそうにない」と学生が泣き言を言ってきたのだそうです。それを「君を気にかけてあげるから、がんばろう。特別に贔屓してあげるよ」というようなことを言っただけだそうです。

こういう手法は私も使うことがあります。特に韓国の学生なども「先生は自分に関心がないのでは?」というのを気にしたりするというあります。ここで特筆すべきは、その内容じゃなくて、200人を超える学生を相手にしても同じように一人一人をちゃんと大事にしているということでしょう。やっていることは特別なことじゃないんですね。教師としてやるべきことを数が増えてもちゃんと実践しているだけなんです。

学生に関心を持っているということを明示することによって、学生の勉強へのモチベーションは上がります。そして学習モチベーションを上げる、というのは教師の主要任務の一つです。今回の記事では、私がメモった学生のモチベーションを上げる笈川語録をいくつかご紹介します!

モチベーションを上げる!笈川語録!

「今できないのは能力が足りないからじゃない、練習が足りないからだ」

これは最初の日にメモりました。特に語録というほどのことでもないかもしれませんが、授業活動の軸が朗読の繰り返し、ということになると違ってきます。やりながらこの言葉がジワジワ効いてくるんですね。

①でも書きましたが、中国語素人の私でも朗読を繰り返すことによって、「谢谢你的提问。我喜欢的食物是咖喱饭。」(ご質問ありがとうございます。私の好きな食べものはカレーライスです。)は淀みなく言えるようになりました。特別なテクニックがあるわけではないんです。最初は言えないことも練習量が増えれば誰でも言えるようになるんです。

もちろん世の中のテクニックや技能の中には「練習量では補えない」ものもあります。でも外国語というのは、その習得のスピードに差はあるでしょうが、練習されすれば誰も必ずできるようになるものです。

そういった点で上のこの言葉は、朗読練習を続ける学生の心の拠り所になるに違いありません。

「礼儀正しくする、図々しく振る舞う、愛嬌を忘れない」

合宿には多くの日本人が参加しています。日本語を学ぶ中国人学生としてはそれらの人的学習リソースを生かさないわけにはいきません。でも、日本人に接する際にはこれだけは守ろう!という観点から発せられた言葉です。

まず、「礼儀正しくする」というのが一番目に来たのにはぐっと来ました。「礼儀正しくする」というのはいわば守りから入るということです。日本語教育の世界でも「ます形」から入ることが多いですが、これはディフェンスを固めるためです。

しかし、そんなの常識だよ~ということも言われそうですが、なかなか語学教育の世界で「礼儀正しく」という言葉が形となって表れることはないような気もします。実際この合宿の運営側の先生方もすべて丁寧でした。礼儀正しくすれば、よってくるのも礼儀正しい人だけ、ということでしょうかね。

そしてその後で「図々しく振る舞え」ということが言われるわけです。これは、日本語母語話者を学習リソースとして使い倒せということでしょう。勇気を出して「ちょっと話しませんか?」と言って日本語で会話をする機会が得られればそれは貴重な経験になります。積極的に行け!という指示だと思います。こういう一言があってか、私もたくさんの中国人学生さんと話す機会に恵まれました。

「一番は体、二番は心、三番は家族、四番は友達、そして五番目に勉強」

これは2日目の疲れてきたな~くらいの段階で出てきた言葉です。疲労の溜まり始めた学生に対して、「一番大切なのは勉強ではありません!一番大切なのはみなさんの体です!」という話から始まりました。まさにその通り。

そして「じゃあ、二番目に大切なのは何でしょうか?勉強じゃありません。二番目に大切なのはみなさんの心です!」とだんだん続いていって、最後に「5番目に大切なのは日本語の勉強です!」となるんですね。

これがすごいな~と思ったのは、敢えて勉強の優先順位を低くすることによって、逆に勉強へのモチベーションを高めているんですよね~。あなたたちはみんな守られている、一人一人が大切な存在ですと確認することによって「よし!じゃあ勉強(朗読)しよう!」という気になる。

これは考えてみたら私も使っていました。例えば「具合が悪いので早退してもいいですか」みたいな学生がいます。そうしたら「お~それは大変だ、授業のことは気にせず早くうちに帰りなさい。」と(多少オーバー気味に)体を気遣ってあげて、その上でその次週に学生が出てきたときなんかに「その後大丈夫だった?まだ回復しないなら無理しないでね」というようなことを言ったりします。結構そういう気遣いが信頼につながったりもしますし、この記事の上の方で書いた「一人一人に対する関心を態度で見せる」ことにつながります。

ただ、上の「一番は体、二番は心…」のような歯切れのよい言い回しはまだ別の意味でパンチがあります。これはいつか使いたいと思います。

一人一人を大事にする

以上、少ないながらも合宿授業で私がメモした笈川語録について紹介してきました。10日間いたらきっとこれの10倍は出てきたと思うのですが、とにかく2日だけでもインパクトのある言葉がありました。

言葉は「ただ言う」だけでは役に立ちません。その言葉が「私に向けてのメッセージである」という方向性、メッセージ性があることによってはじめて意味を成します。太宰治の小説を読んで「太宰はなんで俺のこと知ってるの?なんで俺のこと書いているの?」と感じる読者が多いように、すぐれたモチベーターは200人を相手にしてもそれぞれの心に向かった言葉を発せられるということでしょう。

そして、その結果が一番上の写真のような集合写真のような形となって残っているのだと思いました。クラスの人数が200人でも、30人でも、はたまた1人でも、一人一人を大事にし、一人一人に向けた言葉を発していく必要があるということを感じました。

次でこのシリーズ最後です。最後は、合宿授業における生活全般について書くつもりです~

半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記④」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記③ – さくまログ

  2. ピンバック: 半端ない!笈川式日本語合宿授業潜入記⑤ 最終回 – さくまログ

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