作文の自動判定という分野

投稿者: | 2019年9月8日

こんな本読みました。

當作靖彦・監修、李在鎬・編集(2019)『ICT×日本語教育—情報通信技術を利用した日本語教育の理論と実践』ひつじ書房

ICTを利用した日本語教育の研究と実践の事例を紹介したものです。CASTLE/Jでしたっけ?今年も釜山で行われたみたいですけど、2017年だったかの大会で発表されたものをベースに構成されているみたいです。

私も、そんなに大きな声では言えませんが、得意分野として「ITの日本語教育への利用」を掲げていますので、どの論考・実践も興味深く読みました。

いろいろと発見があったのですが、私は恥ずかしながら作文の自動判定というジャンルがあることを、本書を読んで初めて知りました(「ITの日本語教育への利用に詳しい」という看板は降ろさないといけませんね(笑))。

以下初めて知った「jWriter」と「花便り」をご紹介したいと思います。

jWriter

ある程度まとまった量の文章を入力すると(300字以上が推奨されています)、その文章が「初級」「中級」「上級」」「超級」どの級に相当するかを自動的に判定してくれるシステムです。

以下の文は私がFacebookに投稿した文章です。字数は380です。

これを判定しますと、以下のような判定結果が出ました。

詳細は以下。

ちょっと見にくいかもしれませんが、この私の投稿した文章の場合「もう少し漢語を増やし、一つ一つの文を短くし、単語をもう少し易しいものに置き換える」と良い文になるようです。

本書を読みますと、その「判定がどのようになされているか」がわかります。ここで書くと長くなりますので割愛しますが、要は「日本語学習者の作文と言語テストのデータを分析してなんちゃらかんちゃら」だそうです(なんちゃらかんちゃらが気になる人は本書をお読みください)。

私はFacebookでは、日本語学習者の「友達」も多いので、できるだけやさしい日本語で書くようにしています。上で試した文章もその一つで、それが中級判定でした。実際、この文章以外にも判定してみたのですが、日本語の難易度に配慮しないで書いた文章を判定してみると、だいたいは「超級」判定が出ました。ということで、この判定は信頼性がある程度おけるものだと思いました。

花便り

http://hanadayori.overworks.jp/

「花便り」というタイトルからは想像しにくいですけど、これは「相手に配慮したメールを書く練習をするためのもの」らしいです。

例えば、タスク1は「花見の持参品の友人への連絡」なんですけど、「あなたは留学生交流サークルの橋本君から花見の日程のメールをもらいました。持っていくものの返事をしてください。」というのが問題の指示です。橋本くんからのメールは以下です。

これに対する返事をするわけですね。私は以下のように書いてみました。

これをチェックしてみると…以下のような判定が出ました。

すごっ・・・確かに橋本くんは一生懸命準備をしてくれているわけですから「お花見楽しみにしています」はあったほうがいいですね。「相手への配慮」というのはこの辺のことですね。

授業でどう使うか

というわけで、初めて知った「JWriter」と「花便り」についてご紹介いたしました。どちらも素晴らしいツールだと思います。あとはこれらを我々がどう料理するか、ですよね。

使いやすいのは「花便り」の方でしょう。「指摘がなくなるまで何度もメールを書いてみて、それを提出してください」とかすればいいわけですよね。タスクも1〜6まであり、順番にこなしていけば6をやる頃には相当素晴らしいメールを書けるようになっているのではないでしょうか。

JWriterの方は中級以上向けでしょうか。大学の作文の授業などで、書いたものをとりあえずここで判定してもらう。そして、判定に沿って書き直して、一つでも上の級に判定されるような書き直しをおこなうとかですかね。

作文の授業などは「添削が大変」とよく言われます。それはそうですよね。一クラス30人だとしてもその作文を一つ一つ直していては、いくら時間があっても足りません。

もちろん一つ一つ、先生が細かく見ていかなければならない種類の添削もあるでしょうが、作文の目的によってはこのような自動判定ツールを使って、学習者が自律的に添削していくような活動も取り入れていけたらいいですね。

このようなシステムを作っている人々に敬意を表したいです。

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