文字導入の4つのタイプ

投稿者: | 2019年9月18日

私の所属機関では、数年間続いた「文字コース」を廃止することになりました。「文字コース」とは正規の課程に入る前に、「ひらがなとカタカナの読み書きだけを練習するコース(2時間×8回=16時間)」のことです。

廃止に至る経緯について書くと、それだけで一つの記事になってしまいますので(しかもあんまり面白くない)割愛しますが、とにかく「文字コース」がなくなるのです。それについて考えていたら、「そもそも他の国や他の学校ではどのくらいの時間をかけて文字の導入をおこなっているのだろうか?」ということが気になってきました。

おそらく学術的な論文があると踏んで、サラッとググってみたんですがめぼしい物はヒットしませんでした。そこで以下のような問いをTwitterで立ててみました。

文字導入の4分類

何ということのない問いだったのですが、思ったよりも多くの方々に回答してもらえました。いろいろな答えがあって面白かったのですが、それらの回答をじっと眺めていると、文字導入もいくつかの類型に分かれることに気付きました。

以下、今後長らく日本語教育界において言及されるであろう「文字導入の4分類(「佐久間の4分類」とも言われる)を発表します。

1)ガッツリ系
2)ちょっぴり系
3)自律系
4)並行系

1)ガッツリ系

まずはガッツリ系です。おそらく腰を落ち着けて学習できる環境の機関で取り入れられている方法であると推測されます。民間の語学スクールなどでは難しいと思いますが、単位が出るとか、なにか壮大な目標があって学習をしているという場合には最初に文字をガッツリやっておく、というのがいいのかもしれません。

高校や中学など、年少者の教育ですと、後述する「自律系」などは難しいかもしれません。学習時間をしっかりと授業時間に確保して、パズル感覚で文字を覚えていくのも悪くないと思います。

2)ちょっぴり系

おそらくこの系がもっとも多いのではないでしょうか。最初の数時間を文字の読みルールの説明などに当てて、その数時間で全部覚えなくても、後は授業を進めながら徐々に覚えていってもらう、というパターンですね。

3)自律系

自律的な学習ができる場合は、「勝手に覚えてきてください」という自律系が最も効率的ですね。日本語のひらがななんかは、形と音が一致すればいいわけですから、自律学習のハードルはそれほど高くないのではないでしょうか(って学習者の人に言ったら怒られますかね)。

たとえば、↓のような動画を一本渡しておけばいいわけですよね。

↓の2つはかなり潔い自律系です。

↑そんなコースがあるとは想像もしていませんでした。

↑現代的ですよね〜

あと、↓は「ちょっぴり・自律系」ですかね。授業で文字を覚える時間を取るが、その時間の使い方は学習者に任せる、みたいな方法です。私も一時そうやってみようと構想は練ったことがあるのですが、どうも踏み切れませんでした。

4)並行系

これは文字の導入と、いわゆる本課を同時進行的にやっていくというハイブリッド方式ですね(使い方違いますか?)。これがうまく決まればかっこいいよな〜と思いました。教師としての力量が最も問われそうな方法ではないでしょうか。

まとめ

というわけで、文字の導入は大きく4つのタイプに分類されることを見てきました。もちろん、どれが良いとか悪いとかいうことはありません。

大事なのはその学習機関や学習者の特性に応じて、コースデザインをするということですね。面白くない教科書的まとめになってしまいましたが、コースデザインをする上で、こういった「4つのタイプがある」と頭に入れておくことは実は大事なことかもしれません。

そうでないと、何も考えず「最初の自分の所属機関で取っていた方法」を採用してしまうなんてことも起きかねません。

また、この4つのタイプははっきりと区別されるものではなくて、それぞれが連続性を持っています。ちょっぴり系だけど自律系的な要素を入れるとか、ガッツリ系だけど要所要所で並行系的にすすめるとか。

ぜひみなさんも、この4つのタイプを今後の文字導入を考える上で参考にしてください。

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