レビュー『異世界転送の用意はいいか』

投稿者: | 2019年9月24日

村上吉文(2019)『異世界転送の用意はいいか』Kindle版

21世紀の日本語教育界を牽引する村上先生の著作です。『むらログ』の愛読者としては購入しないわけにはいけません。

とりあえずキャッチアップしておく

副題は「語学教師のためのVR入門」となっています。内容はまさにそのとおりで、我々語学教師が知っておくべきVRについてのこと、が書かれています。

今、VRで何ができるか、これから何ができそうか、また語学教育の分野では何ができるか、何ができそうか、そんなことが書かれています。

私は恥ずかしながら、VRについて何も知りません(VRについてどころか、世界の動きとか世の中のことはほとんど何も知らないんですが、それはまた別の話で)。でもこの本を読んで、ちょっとわかりました。何もわからなかった人間が「ちょっとわかった」ということは、入門書としての使命を十分果たしているということになりますよね。

ちょっとわかったことは以下のとおりです。

  • VRは体験してみないとわからない
  • まだ語学習得に特化したアプリはあまりない
  • 仙台育英高校が英語会話レッスンにVRを導入しようとしている

VRは体験してみないとわからない

私はVRについては何も知りませんでしたが、VRが何かは知っているつもりでした。

あ、あれでしょ。ゴーグルみたいのつけて自分が右向いたら右の方が見えたりするあれ。

↑こういう認識の人は多いのではないでしょうか。ただ本書を読むとわかるんですが、状況への「没入感」が尋常じゃないそうなんです(「没入」という言葉が21回も使われています)。

高いビルから空中に板が突き出しているという設定の場所で、著者は「仮想現実である」とわかっていながらも、怖くてその板に足を乗せることすらできなかった、というエピソードが出てきます。「まさか〜盛りすぎでしょ」というような話ですが、本当なんでしょう。

つまり、やったことのある人にしかわからないんですね。

なので、私は本書でも紹介されているVRゲームが楽しめるゲームセンターに、次の帰省時にでも行ってこないといけないな〜と思っています。

まだ語学習得に特化したアプリはあまりない

先ほども言いましたように、この本の副題は「語学教師のためのVR入門」なわけですが、実は語学教育を目的としたアプリはまだあまりないようです。じゃあ、なぜ「語学教師のためのVR入門」なのでしょうか。

もしかしたら「VRでガンガン外国語を学習するサービスとかアプリとかが既に結構あるのでは?」と思って読み進めていたのですが、話のほとんどは、このアプリはこういう部分で語学学習に使えるのでは?とか、これがこうなったら語学学習にもっと向いてくるのでは?という話でした。

で、最初は違和感があったのですが、読み進めるうちにこれはソーシャルメディアと同じだなとピンと来ました。

そう、著者の村上先生は早くからソーシャルメディアの語学教育・学習の利用に目をつけていました。で、今ではFacebookを利用して日本語を勉強するとか、Twitterを使って英語を勉強するというのはごくごく普通なわけですが、実はこういうソーシャルメディアって語学学習が目的のメディアではありません

それぞれのソーシャルメディアには他の目的があるんですけど、その「語学学習に使える」部分を取り上げて我々は使っているわけですよね。

わかりやすいのはCOOKPADとかでしょうか。COOKPADの目的ってレシピの共有ですよね?開発されたときに語学学習なんて誰も考えていないわけです。でも、語学教師の中には「レシピを書くことによって日本語の差作文能力を鍛えることができそう」と思いつく人がいるわけです。

VRもそれと同じですね。もちろん今後はVRにおいても語学学習に特化したアプリやサービスが出てくるとは思いますが、VRという分野自体が発展することによって、今まで思いもよらなかった語学学習への使いみちが開けてくる、ということです。

そこまで考えて、なぜ村上先生がちょっと前からVR、VRと言うのかやっと理解ができたような気がしました。語学学習における構造としてはソーシャルメディアとVRって同じなんですね。そして、更に言うと、基本概念としてブリコラージュが根底にあるから、なんかワクワクするんですね。

そうそう、いい言葉が出ました。ブリコラージュなんです(これについてまたいつか書きましょう)!

仙台育英高校が英語会話レッスンにVRを導入しようとしている

具体的な話としては、この仙台育英高校の話がもっともグッときました。

この本が出ている時点ではまだ授業が始まっていないそうなので具体的なことは書かれていないんですが、著者は、普通のスカイプレッスンをやるだけならVRがを使う意味がないので、何か状況に没入するような形になる、というようなことを書いています。

もし、これでスカイプレッスンの延長みたいな会話レッスンだったら腰砕けもいいところですが。この9月から導入するとのことですので、今はもう実践されていることでしょう。

私はこのニュースさえ知らなかったので、今後はもうちょっと興味を持って見ていかないとな、と思いました。

まとめ

というわけで、『異次元転送の用意はいいか』について思ったことを書いてみました。この分野について知らない私のような語学教師は、とりあえず現状をキャッチアップするという意味で読んでおくと良いと思います。

最後は以下のような文章で結ばれています。

VR 技術によって少なくともゲームの世界はすでに大きく変わりましたし、その次に変わるのが教育の分野だと言われています。この本をお読みになった皆さんは、その可能性に気づいているまだ少ない教育者の一人です。そして、この可能性に気づいてしまった以上は、僕たちには世界を前に進めていく義務があります。ぜひ、僕と一緒にこの世界を探検してみませんか。

やはり教育に携わる人のマインドって、これでいいんだなと再認識しました。パスをもらった人は、そのボールを誰かにパスしないといけないんですね。

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