レビュー『世界のニュースを日本人は何も知らない』(ワニブックスPLUS新書) Kindle版 ワニブックス

投稿者: | 2020年4月9日

谷本真由美 (2019)『世界のニュースを日本人は何も知らない』

村上吉文氏が主催する#日本語教師ブッククラブの4月の指定図書です。

おもしろそうな本の時には時々参加していました。今回は「世界のニュースを日本人は何も知らない」ということで、私は思いっきり何も知らない日本人なので読んでおくことにしました。

ホントになんも知らないわ

AMAZONのレビューを見ますと、「大体書いてある内容は知っていた」というコメントもありますので、日本人だから知らないということはないでしょう。アンテナを立ててニュースなどをよく見ている人にとっては結構知っていることもあるとは思います。以下のようなことでしょうか。まあ、私は何も知らなかったですが。

●アフリカのメディアを買収する中国
●本当はものすごく豊かなアフリカ
●日本人が知らないトランプ大統領の意外な評価
●EU・国連はまるで“町内会”
●ロンドンでは白人のイギリス人は少数派
●男女別の講義をしろという圧力に悩むイギリスの国立大学
●逆差別を受けている! と声を上げる白人男性

こういったことも目から鱗で非常に勉強になったのですが、読後に振り返ってみますと、自分でハイライトした箇所が最も多かったのが第4章でした。

第4章 世界の「最新情報」を日本人は何も知らない

ここでは「働くこと」に関するさまざまな「最新情報」が紹介されています。

周囲のためにすぐ妥協する人は欲しいものが得られず貧乏になってしまいがちです。これは非常に理不尽な事実ではありますが、自然界における競争原理主義を見ていると、納得するしかありません。 (Kindle の位置No.1376-1378)

↑は、「性格の悪いやつほど出世する」という流れからの文です。確かに理不尽だと思いますが、わからないでもないです。というのは私自身社会的地位が高めのおじさん(時にはおばさんも)とはできるだけ関わらないようにしているからです。私の感覚の正しさが証明されました(笑)

職場の同僚や部下に無礼な人がいると、周囲で見ている人も実際に無礼な振る舞いをされた人も、生産性や創造性が下がってしまう (Kindleの位置No.1387-1388)

やはり良いサービスや品物を生み出している組織は職場の雰囲気が明るく、お互いに気遣いをして良い雰囲気をつくろうという人々が集まっている。そういう人々が集まるからこそ新しいものが開発され、失敗を恐れずに何かおもしろいことをやってみようという好循環が生まれるのです。 (Kindleの位置No.1394-1396)

↑も納得。例えばミーティングなんかをするとき、非常に良い考えが思い浮かんでも面倒な人がいたりしたら「あの人はどう思うだろうか」「触らぬ神に祟りなしだな」と思い、その考えを提案しなくなったりします。ですからブレインストーミングなどでは「人の意見に否定的なことを言わない」」というルールが存在するんですよね。

従業員を厳しく管理したりプレッシャーを与えたりすることによって会社は成長できると経営者や管理者が勘違いしている組織もありますが、実はそのようなやり方は短期的にも長期的にもビジネスにはかなり不利になります。(Kindleの位置No.1396-1398)

↑これも我が意を得たり、と思いました。締め付けは良くないんですよね。厳しい管理をしないとさぼる人間が出てくる、という面もあるかもしれませんが、厳しい管理によってモチベーションが下がることも多いです。あと、管理のためだけに不必要なワークが出てきたりもしますしね。個人レベルでは締め付けないと働かない人もいるとは思いますが、総体としては絶対に緩い方が生産性は上がると思います

ビジネスのパフォーマンスと休息の関係性を国際的な比較データで見てみると、効率を上げたければたくさん寝てたくさん休んだほうがいいということがよくわかります。(Kindleの位置No.1410-1412)

より良いサービスや商品を生み出し生産性をアップしたいのであれば、休みを十分にとるべきで、仕事を早く終えたいのであれば長い時間寝ることです。(Kindleの位置No.1428-1429)

今の職場は朝出勤して夕方退勤なので、ちょっときついです。労働時間8時間とかですよ。私の場合、集中して仕事ができるのは昼休みを挟んで5時間くらいかと思います。じゃあ、あとの3時間は何やってるかというと、だらだらしています。それか、効率性の上がらない仕事をおこなっているかですよね。だったら家に帰って休んでいる方がよし、と思います。

もし許されるなら8時出勤14時退勤(昼休み1時間)を実現したいですね。てか、実質私がやっていることは、そのくらいでできます。休むときは休み、寝るときは寝て、時間あたりの作業効率を高める。これが現代的な働き方ではないでしょうか(もちろん長い時間待機が求められる仕事もありますので、一概には言えませんが)。

※授業がある場合はまた別ですね。ただPCの前に座ってやる事務仕事のはなしです。

疲れをとるには身体にとって原理原則的な四つのことをするのが最適とされています。 (Kindleの位置No.1434-1435)

↑の四つのこととは、
・良質のプロテインや果物を摂ること
・水を飲むこと(男性3.7リットル、女性2.7リットル)
・よく寝ること
・定期的な軽い運動をすること

らしいです。私は二番目の「水を飲む」というのをやっていませんでした。コーヒーなんかは結構飲みますが、それじゃだめみたいです。「水」を飲まないとだめだそうです。でもちょっとやってみましたが、水3.7ℓを一日で飲むというのは非常に難しいです。

教員には自己決定権がある?

つらつらと第4章で「へえ」「確かに」と思ったところだけ見てきましたが、他になるほど!と思ったのは、

人生の幸福度を決めるのは学歴や資産ではなく「自己決定権があるかどうか」という驚くべき結論が導かれた(Kindleの位置No.1685-1686)

幸福度を決めるのは「自己決定権があるかどうか」なんですね。

これらの職業に共通する点というのは収入ではなく自己決定権の大きさ。つまりどんな作業をいつ行うかなどを自分で決めることが可能ということです。(Kindleの位置No.1695-1696)

↑「これらの職業」には「教員」が入っています。↑の話を支持するなら「教員」は自己決定権があり、幸福度が高い、という理屈になります。まあ、教員といってもいろいろな教員がありますので杓子定規には言えないと思いますが、日本語教員の端くれとして言わせてもらえば、やはり自己決定権は他の職業に比べるとかなりあるのではないかと思います。

日本語教員や勤務校、授業をとりまく環境にはいろいろな制約があるとは思いますが、与えられた枠組みの中である程度の自己決定権を行使できます。つまり簡単に言うと「授業の進め方は俺が決める」ということです。授業を取り仕切るのは私です。それが良くも悪くもそれがこの職業ですね。

そういった自己決定権があるために、私のような人間が飽きもせずこの業界にいられるのかな、と思ったりしました。

まとめ

おもしろい本だと思いました。文章も上手で、読み物としてすらすらと読めます。日本語教師ブッククラブ、改めていい企画だと思います。だって、自分で選ぶとしたら、絶対に手に取らないような本が読めますからね。来月もぜひ参加したいです。

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