組織としての準備 オンライン日本語コース(2/2)

投稿者: | 2020年4月30日

組織としての準備 オンライン日本語コース(1/2)

↑からの続きです。前回はオンライン対応の事務的な面について記録しました。しかしそればかりやっていたわけではなくて、並行して授業をおこなうための準備もおこなっていました。今回はそれについて書きます。

日本語コース

前回の記事でも書きましたが、私の職場では週2、週3のコースがメインです。それぞれのコースを一人の講師が担当するというのであればそれほど難しくはないのですが、曜日によって講師が変わります。つまり、週3のコースでいえば、月はA先生、水はB先生、金はC先生が入る、ということです。

そのため「じゃあ●●先生、オンラインコース、自分で考えてテキトーにやってください」とは言えないわけです。個々の授業の進め方に関してはそれぞれの講師に任せますが、全体としてのやり方や方針はある程度統一しておかなければなりません。今日は主にその内容となります。

ビデオ会議システム

コースのオンライン化にあたり、教育機関としての立ち位置を考えた結果、ビデオ会議システムを使ったリアルタイム授業を取り入れる必要があるだろうと、まず思いました。その辺の理路に関しては過去に書いているのでご参考ください↓。

語学スクールのオンライン日本語授業について考える

いろいろ検討した結果、ツールとしては****を用いることにしました。

・扱いが容易。
・ブレイクアウト機能がある。
・ギャラリービューにしたときに(PCなら)25名までの様子を一望できる。

というのがその理由です。セキュリティ問題に関して憂慮する声もありますが、自分としましては

・どんなツールを使おうとも対策をきっちりとれば大抵のリスクは防げる。

と思いました。実際先日は他のビデオ会議システムの脆弱性についても指摘されていました。

※オフラインで授業をやったとしてもいきなり変質者が包丁を持って乗り込んでくる、というリスクはあるわけです。もし「リスクがある」ということで授業ができないなら、オンでもオフでも授業はできません。必要なのは対策をしっかりとることです。

というわけで有料アカウントを2つ購入しました(同時間に2つの授業をおこなうため)。

模擬授業

講師は全部で7名います。その中にはビデオ会議システムの使い方に慣れている人もいますし、まったくの初心者のような人もいます。全員にある程度使い方に習熟してもらわないといけませんので、その練習が必要になります。

まずは簡単な講習をおこないました。この内容についても↓に書きました。これはそもそも外部向けのものだったのですが、職場の講師陣にも参加を要求しました(一石二鳥ですね)。

「****を使って授業ができるようになる」研修会を開いたよ

しかし、これは「このツールを使って何ができるか」を説明するためのものですので、使い方に習熟するためには練習が必要です。「習うより慣れろ」ということで、この後はひたすら模擬授業をやりました

一人の講師が先生、他の講師全員が生徒役になり模擬授業をおこないました。そこでつまづいたり、問題が発生するたびに適宜操作方法のインストラクションをおこないました。この方法は、操作に慣れた人にとってはおもしろくない部分もあったでしょうが、全員で共通理解を深めていけるという点で良かったと思います。また、私の方もこの模擬授業を通して様々な問題に気づくことができました。

授業の始め方

有料アカウントが2つあり、それを駆使して週に10のコースを運営します(同時間の授業は最大2つ)。

当初、各授業でホストになるべき先生は授業ごとにアカウントにログインしてホストになる、という伝統的な方法をとろうと思っていました。しかし、このために作ったアカウント=Googleアカウントでログインしようとすると、セキュリティのためでしょうけど、本人確認手続きが出てきて面倒になるんですよね。

そこで私達がとった方法はHostKeyを駆使するという方法でした。この方法は以前、村上吉文氏の個人アカウントをお借りしたときに教えてもらった方法なんですが、HostKeyさえわかっていれば誰でもそのアカウントのミーティングでホストになれるんですね。ログインすら必要ありません。

で、まとめますと、

①(私が)それぞれのコースのスケジューリングをおこない、各コースごとにMeetingIDを取得し、パスワードを設定しておく。もちろん「ホストより前の参加」をONにしておく。「待機室」もOFFに。
②講師はしかるべき時間に自分のクラスのMeetingID&パスワードを入力してミーティングに入る。
③講師は「ホスト権を要求」して、前もって講師陣内で共有しているホストキーを入力してホストとなる。

二人体制

授業は二人体制にすることにしました。その理由としては、もし講師一人にしてしまうと…

・その講師がミーティングから落ちたら授業が止まってしまう。
・授業をやりながら学習者の技術サポートやチャットへの対応をするのは難しい。

などの理由からです。授業が進んで慣れてきたら一人体制になるかもしれませんが、当面はこれでいくつもりです。

二人体制と言いましたが、コーティーチングとは違います。各授業ごとに「メイン」と「サブ」を決めて、授業の計画から実行は「メイン」がおこないます。「サブ」はあくまでもサブで、授業準備をおこないません

「サブ」がホストとなり、「メイン」が共同ホストになります。それは「ホスト」じゃないとブレイクアウトルームを作れないからです。授業の前に「メイン」はブレイクアウトルームの計画について「サブ」に話しておき、「サブ」はあらかじめブレイクアウトルームを作っておくという規則を作りました。

また、授業で使うスライドはあらかじめ「メイン」が「サブ」に共有しておき、「メイン」が何らかの理由で落ちてしまった場合などに緊急的に「サブ」が場をつないでいけるような仕組みも作っておきました。

二人体制にするデメリットとしましては、それだけ労働時間が増えるということです。「サブ」とは言え授業時間にはいつでも対応ができるようにスタンバイしておかなければなりません。

決め事ファイル

通常のオフラインクラスであれば、講師陣は授業を含めた業務内容すべてに精通しており、特に規則を書いた文書がなくても準備や行動ができます。しかし、今回はすべて初の試みであるため、例えば↑で書いてきたような決め事をしっかりと記録し、全員と共有しておく必要があります

そのために一つのファイルを作成しました。それが「All about online classes」と銘打ったGoogleドキュメントファイルです。

このファイルには、コース別のMeetingIDやパスワードなどはもちろんのこと、講師のシフト表、各コースのシラバス、ホストキー、その他必要なインストラクションや決まりごとをすべて載せておきました。

また、操作方法や複雑なことについてはビデオを使って説明をし、そのURLもすべてそこに記載しておきました。つまり、そのタイトル通り、私達がこのオンラインコースのために決めたことがすべてその資料から参照できるということです。

テレワークになって以来、MS系のツールを使う機会は格段に少なくなりました。URLを共有しておいて、変更があるたびに更新ができるGoogle系のツールが非常に便利ですね。実際このファイルも更新に更新を重ねています。

FBグループ

学習者との連絡にはFBグループを使います。これは前回のエントリーでも書きました。FBグループに放り込むまでは事務方の仕事、FBグループに放り込まれた後は各コース担当の講師が学習者の面倒を見ます

・毎回の授業の接続先の連絡(しばらくは同じところだが)
・授業関連の連絡や質問
・宿題の提出
・講師と学習者との交流
・日本語学習お役立ち情報の配信

このような使い方になると思います。やはり、このような手軽な連絡ツールは必要でしょう。

オリエンテーション

授業が開始される前にオリエンテーションをおこないました。普段のオフラインコースは第一回目の授業のときにおこなうのですが、やはり今回は初めての試みですので前もっておこなうことにしました。

・コース概要の説明
・ビデオ会議システムの操作練習
・質疑応答

こういった内容で、各クラス30分〜1時間おこないました。「学習者側の問題の把握」「場を作る」というのが大きな目的です。

まとめ

以上、2回に渡り私達がおこなってきたオンライン対応への準備について書きました。

これを執筆している今の時点で、まだコースは始まっていません。オリエンテーションが数回終わったという段階です。だからこれからどういう問題が出てくるのか、ちょっと怖いですね。

実は、最も憂慮している部分はインターネット接続の部分です。万全を期しているものの、模擬授業の間にも私を含め落ちてしまう人がいましたし、職場のWi-Fi、各家庭のWi-Fiもだめなときはだめです(一応講師はどこで授業をやっても良いという決まりです)。

保険?としてポケッ卜Wi-Fiも購入しました。停電ということもありえますので、それに対処する意味も含まれています。

あと、ですね私は常に「オンライン化というのはオフライン授業をただオンラインに移行するだけのものではない」と言っていて、それとは矛盾するかもしれませんが、今回に関しては…

オフラインでできていたことをオンラインでちゃんとできれば及第点

とも思っています。まずはできることをしっかりやり、その次の段階はその次考えていきたいです(もちろん、各回で全力を尽くします)。

ここまで組織としての準備はばっちりできました。後は各講師の創意工夫にかかっています。全体としてできることは、各講師の試みをお互いにシェアし、授業の質を少しずつ高めていくことですが、それはオフラインでもやっていたことです。

とにかくこれからどうなるか楽しみです。コースが進む中で、↑での決まりごとも変わって行くかと思います。また経過や結果についてはシェアしていきたいと思います。

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