レビュー『黒コウモリと白コウモリ』

投稿者: | 2018年7月3日

N3~N4レベルの日本語学習者向けの短編

(アマゾンの内容紹介からの抜粋)

【日本語を勉強している人向けの物語[中級]】
この本は、
・中級の新しい言葉や文法、自然な表現を学ぶことができます。
・そんなに長くないので、最後まで楽に読めます。
・マンガのようなすてきな絵がたくさんあります。
・漢字にすべてふりがながついています。
・わかりやすく書かれているので、辞書を使わないで読めます。
少しむずかしい言葉がありますが、だいたい絵を見ればわかるようになっています。
・日本語能力試験(JLPT)N3-N4レベルの言葉と文法で書かれています。

【あらすじ】
黒コウモリの「サカサ」は、白コウモリの「ミンミ」と出会った。羽の色も生活のしかたも違うけど、サカサとミンミは仲良くなった。二人はまず白コウモリの村で、次に黒コウモリの森で暮らした。どちらでも、羽の色が違うコウモリは仲良くしてもらえなかった……。ある日、黒コウモリの森で山火事が起きた。
「みんなと違う」ことは、よくないことか。黒コウモリと白コウモリは、最後にどんな答えを見つけただろうか。

日本語教師のこれからの発信の形

実はこれ、私の大学の先輩が文章を書いたものです。日本語学校で勤務されていて、今まで多読的な本はいくつか出版してきたみたいです。そちらのほうはそちらの活動として、個人的な創作活動の拠点として「TONGARI BOOKS」というプロジェクトをはじめ、その最初の作品としてこの『黒コウモリと白コウモリ』を発表した模様です。

TONGARI BOOKS(外部)

私はこういった試みを全面的に支持する、という意味で記事にしています。

遠藤氏は私の大学の先輩なわけですが、日本語で飯を食う同業者でもあります。大学の先生であれば日本語関連の専門書や一般書の類を出版するということは珍しくありませんが、この人はそういうわけでもありません(そうですよね?)。

(他人のことなのに変な言い方ですけど)一介の日本語教師が(いわゆる)教材以外の出版で世界に発信をしているという例はあまりないのではないでしょうか。趣味で音楽をやっていてCDを自費で出した、というのとも異なります。

明らかにこの作品には日本語教師のエッセンスが入り込んでいますし、日本語を生業にしているからこそ書けた作品です。つまり日本語を教えながら得てきたスキルやマインドを、ど真ん中の教材という形ではなく、違った形で作品にしているというのが何ともぐっとくるのです。

作品の成立自体が「補完」を体現

また、この作品の成立に多くの友人・知人が絡んでいる、という点も重要なところです。

挿絵を書いている方は存じ上げませんが著者の友人だそうです。また、この「TONGARI BOOKS」のロゴを作った人、アマゾンの紹介文で英語文を書いている人は大学時代の友人で、私も知っている人たちです。

二人ともフリーで仕事をしているんですが、そうやって昔の友人を総動員して一つの作品を作り上げたというやり方にも共感を覚えます。この作品のテーマは、「対立から補完へ」といったところですが、まさにこの作品の成立過程自体が「補完」を表しているとも言えます。周りの人々の能力を最大限利用すれば、ここまでできるんだ、というような好例だと思います。

というわけで、私にも一枚かめそうな部分があればぜひともご連絡ください(笑)

レビュー『黒コウモリと白コウモリ』」への3件のフィードバック

  1. 遠藤氏

    どうも。本人(遠藤氏)です。
    この記事を読んで、「もうすでに一枚かんでいるじゃないか!」と思いました。

    作品を制作する過程が「補完」になっているという発想はありませんでした。
    言われてみると、だんだんそうかもしれないと思えてきました。
    ただ、そう考えると、さくま氏がここで取り上げてくれたことも補完になっているんじゃない? と。

    このプロジェクトは、作ってamazonにアップしたまではいいけど、販売戦略みたいなものがなくて、自分のfacebookとtwitterに投稿するぐらいで先が見えませんでした。
    だから、そんなタイミングでこうやって自分では書けないようなことを記事にしてもらえたのは非常にうれしいし、助かります。
    (早速、この記事を読んだMさんがtwitterをフォローしてくれました)
    足りないところにちゃんと必要な人がやってくるというのは、ありがたい。

    これだけでも十分だけど、さらにもう少しかみたいなら、どうやって広めていけばいいかを、いっしょに考えてくれると助かります。
    (今日付けで「TONGARI BOOKS」営業戦略本部部長に任命します。報酬は出来高払いで。仙台に来た時のビール代ぐらいにはなると思う)
    それから、「TONGARI BOOKS」は、わたしが書いた作品だけじゃなく、だれかが書いたものをわたしが編集して出すということも考えています。
    ぜひなにか書きたくなったら書いてください。一枚どころか十枚ぐらいかめます。

    では、どうもありがとう。

    返信
    1. shirogb250 投稿作成者

      遠藤さん、コメントありがとうございます。

      >「もうすでに一枚かんでいるじゃないか!」と思いました。
      >そう考えると、さくま氏がここで取り上げてくれたことも補完になっているんじゃない? 

      そうそう、書きながら同じこと思っていました。すでに噛んでるし、補完になっていますね~

      >今日付けで「TONGARI BOOKS」営業戦略本部部長に任命します。

      喜んでお引き受けします。
      ちょっと考えたところでは、やはりこのシリーズは、日本語学習者に直接働きかけないといけないと思うんですよね~日本語教育従事者よりも。

      だから日本語学習者が集まるオンラインコミュニティで宣伝できれば良いと思います。
      例えば今僕が熱心に参加しているFacebookの「日本語コミュニティ」は4万人近くの日本語学習者が参加しています。
      またFACEBOOKページで少しお金を払えば日本語学習に興味のある層を対象に、宣伝することもできます。
      結構この効果はあるらしいですよ。

      ただ、今はまだ1作しかありませんから、宣伝よりは作品数の充実に力を傾けるべきでしょうね。
      当然ですが、質と量があれば、数字は後からついてきますね~
      せめて5作くらいになった時に、集中的に宣伝をすべき(多少お金をかけても)と思います。

      って、かんがえてたら面白いですね~

      返信
      1. 遠藤氏

        ふむふむ、なるほど、さすが部長!
        「日本語コミュニティ」とfacebookの有料の宣伝ですね。
        facebookの宣伝は良く表示されるので知っていましたが、効果があるんだねえ。
        その二つは近いうちにやってみます(あまりお金はかけられないけど)。

        5作か・・・。実は、もうあと4作あるんだな~。
        (青春ロックバンド、少年忍者、ホラー、笑い話などなど)
        ただ、最後まで書いた原稿があるというだけで、まだ煮詰めていないし、イラストがない。
        全部自分の作品で5作そろえようと思ったら、あと1年半はかかるかなあ。
        がんばります!

        またいい案が浮かんだら、教えてください。

        返信

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