「日本語教育推進基本法(仮称)と日本語教育機関」を聞いてみたよ。

投稿者: | 2018年8月28日

先日(8月7日)、日本語教育振興協会の日本語教育研究大会において日本語教育推進議員連盟の馳浩事務局長が基調講演をおこなったとのことです。2時間ほどの結構長い内容なのでネット上にまとめがあればいいな~と思ったのですが、以下の「にほんごぷらっと」の記事以外は見つからず。気になったので聞いてみました(音声ファイルに落として聞いたので)。

基調講演「日本語教育推進基本法(仮称)と日本語教育機関」 元文部科学大臣 馳浩 衆議院議員(youtube)←あとで削除されるそうです。
日本語議連の馳事事務局長が講演 秋の臨時国会では「基本法」成立に意欲表明(にほんごぷらっと)

講演の内容は?

動画では見えませんが、にほんごぷらっとの記事によりますと、聴衆の数は350程度で、ほとんどが日本語教師だそうです。

2時間のうち1時間20分ほどは、今後議員立法として成立を目指す「日本語教育推進基本法」の内容の説明です。

この「日本語教育推進基本法」がどういうものかというと、「日本政府が本腰を入れて日本語教育に取り組むぞ!」というものです。講演ではその「日本語教育」や「日本語教育の対象者」の範囲や定義などが述べられています。

国内の教育はもちろんのこと、国外の教育についても言及されていますし、継承語教育にかかわる部分や移民に対する教育に関しても言及されています。細かい部分では漏れや、不適当な部分もあるでしょうが、大雑把に言ってあらゆるシーンでの日本語教育について言及されているのではないかと思います。

ですから、この法案が成立すれば、日本政府は今我々日本語教師が従事しているさまざまな日本語教育シーンに対して本気で取り組んでいくことを宣言したことになります。

質疑応答は?

残りの40分ほどの時間は質疑応答にあてられました。ざっくり以下のような質問などが出ていました。

・在留邦人の定義をもっと明確にすべきでは?
・我々(日本語教育従事者)に協力できることは何か?
・法案が成立したとして、予算などはいつから出るか?
・JLPTは絶対的な物差しとして今後も存在するのか?
・日本語学校の法的立場の見直しは今後あり得るか?
・留学生ビジネスを国がコントロールできないものか?

質問や意見を受けた講演者は、断言を避ける形で「善処する」「検討する」などのコメントをおこなっていました(まあ、当然の反応ですね)。

発表内容についての直接てきな批判や提案はあまり出ませんでした。とりあえずこれはあくまで「基本法案」の骨子ですから、当然具体的施策については述べられておらず、その内容自体は曖昧模糊としています。ですからその内容に対する批判や提案はこの時点では出ないんでしょう。

うまく回るように期待したい!

おそらくこの法案の成立自体は、我々日本語教育従事者にとっては良いことでしょう。雇用の促進や待遇の改善にもつながるはずです。質疑応答では日本語学校で30年教鞭をとっているという方(経営者かもしれません)も「待ちに待った」というような表現を使っていました。

ただ、何事にも良い面と悪い面があります。政府が金を出すということはつまり口を出すということでもあります。もちろんそれはしょうがないことですが、そのあたりがうまいこと進んでいくといいなあと思います。

例えば今私は韓国の大学に勤務していますが、どの大学も国の基準に沿って行動しています。その基準に沿って動かないとすぐさま支援金がなくなり学校が破綻したりします。要は国の顔色をうかがっているわけですね。

これはどこかでペロっと聞いただけなのであれですけど、イギリスの名門大学などは卒業生の寄付金とかがたくさん集まるので、それだけでやっていけるそうです。国が金を出そうが出すまいが関係なく運営していけるから、結局「やりたいことがやれる」ということですよね。

雇用や待遇は改善されたとしても「あの頃は良かった」のような言葉が出てこないことを望みます。

ちょっと引っかかった点

最初にも書きましたが、聴衆はほとんどが日本語教師だったそうです。それにしては説明が丁寧過ぎたような気がしました。講演者は丁寧に、かつ飽きないようにエピソードを交えながら話されていて、その意図はわかるのですが日本語教師ばかりの席であればもう少し突っ込んだ話もできたのではないかと思います。

その辺が少し残念です。

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