今の私の職場には現地人の講師が5名ほどいます。講師は皆さん熱心で、能力も高いのですが資格としては全員N2止まりです(1名はN3)。そこで私にあるミッションが与えられました。
講師たちをN1に合格させよ!
講師がN1を持っている必要があるかどうかとかそういった問題はさておき、とにかくこれは指令ですので私としては何らかのアクションを起こす必要があります。
問題点
このような指令を与えられた場合、まず最初に考えられるのは講師を対象にした授業をおこなう、ということでしょう。私ももちろん考えました。週に1度60分くらいの授業であれば、それほど負担にはなりません。
ただね、私の職場の講師は結構ハードなんです。授業を担当する時間はそれほど多くないのですが、それに付随する雑用とか、組織としておこなうイベントの運営とかで皆さん手一杯の印象があります。
そんな中で「授業やりますよ〜」と言っても講師の皆さんの負担にしかならないのではないだろうか、と思いました。
で、いろいろ考えたんですが、そもそもみんな講師をやっているわけです。またN2までは持っているわけですから勉強の仕方についてはよく知っているはずですし、ポテンシャルが高いのは付き合っていればわかります。だったら私が下手な授業をするより、伴走者として自律的な学習を補佐する立場をとったほうがよいのではないかと考えました。そういえば以前、以下のようなエントリーも以前書きました。
こんな記事↑を書いたことも忘れていたんですが、いや〜なかなかいいこと言ってますね。私がこれから書くことはまさにこの↑の記事の実践です。
N1 Project!
そういった背景のもと、私が始めたのがこのN1 Project!です。
目標
2019年12月の日本語能力試験において、カンボジア人講師5名にN1に合格してもらう(1名はN2)。
使用ツール
Google ClassroomおよびGoogle Form。すべてのやりとりはグーグルクラスルーム内でおこなわれます。

流れ
1.毎週月曜日の朝にグーグルフォームで作った「文法」「文字語彙」「読解」の問題をグーグルクラスルームを使って学習者(うちの先生たちですが、便宜上学習者とします)に配布。これらの問題を「課題」と呼びます。
2.学習者は各自空いた時間を利用して「課題」に取り組み、木曜日の夜までにすべての問題を提出する。
3.金曜日の朝に「課題」の内容を踏まえた「テスト」を配布。学習者は金曜日の勤務時間内に時間を見つけ、その日のうちにテストに取り組み、提出をおこなう。
Youtube日本語講義の活用
え?それだけ?と思った人もいると思いますので、すこし解説を。
この一連のプロジェクトの狙いは「課題」をきっかけに勉強する習慣や難しい日本語に日常的に触れる習慣を作ってもらう、という点にあります。
とは言いつつも、課題をやらせて終わり!だったらあまり芸がないな〜と思い、自分で解説動画を作るかと思いました。でもこれは結構手間です。N1だけならともかく、N2を受ける人もいるので、それぞれの問題に対して解説動画を作るとなるとこちらの他の業務に支障をきたします。
そこで思いついたのがこれ、Youtube上にあふれている日本語講義の動画の利用です。わかりやすく画像で説明しましょう。
↓学習者からみたグーグルクラスルームです。私が課題を月曜の朝に投稿すると、このような形で3つの問題が現れます。

↓問題をクリックすると、それぞれグーグルフォームで作成された問題が提示されます。

↓問題を解いて提出するとすぐに自動採点で自分の得点が表示されます。

で、ここからが重要な点です。↓ここにURLを貼っつけてあるのがわかると思います。ここをクリックすると解説動画に飛ぶのです。

↓解説動画(みなさんもご覧になったことがあるでしょう)
そうなんです。「課題」の問題のほとんどは「日本語の森」の動画と連動してあるのです。作業としては「日本語の森」の解説動画を見て私がグーグルフォームで問題を作っているので、当然ですけど、この動画が課題に対する解説動画としてはぴったりになるわけです。
問題は日本語の森のクオリティがどうかという点ですが、私が授業やるより遥かにいいと思います(この先生も、若いイケメンですしね)。
テストの意味
木曜の夜までに課題を提出します。金曜はテストです。テストはもちろん、課題と関連するところから出ます。
最初の課題は0点とか1点とかでも全く問題ありませんが、金曜日のテストでもそのようだと、「この人はただ課題を解くだけで、まったく学習をしていない」ということがわかるわけです。
ですから金曜日のテストは「各人がどれくらいこのプロジェクトに熱意をもって参加しているのか」を測るテストにもなっています。だって、ちゃんと日本語の森を見ていたら満点を取れるテストなんですから。
やっていくうちにテストで点を取れない人も出てくると思います。そんなときは点数だけを見て、その人と面談をしなきゃな〜とか考えたりできると思います。
その他
というわけで、ちょっと前から始めたN1Projectについてつらつらと書いてきました。
「お前、超手抜きじゃ〜ん」と言われそうですが、いやいや、それでも結構手間はかかっています。N1とN2の「読解」「文法」「文字語彙」の問題&テスト用の問題を作るだけでも鬼のように集中しても2時間くらいかかります。
また同じ方法だと飽きも来ますので、そのうち他の形式の問題も取り入れないといけないな〜とも思います。
このプロジェクトに参与するだけでN1がとれるとは思いません。これにプラスして本人の自主学習が必要になるでしょう。それはもちろんわかっていますが、このプロジェクトが「いい意味でのプレッシャー」になってくれればよいな〜と思っています。
確かに、インターネット動画で大体カタがつくので、それを提示する動画ソムリエ的な働き方があっていいと思います。作りたい方は、職人的に使ってらっしゃるので、それはそれで極められたらいい。私はと言えば、前者の方が性に合ってますね。
コメントありがとうございます。
自分で作れればそれがベストですが、結局それを本業でやっている人のものの方がクオリティも高いですからね。下手にやっつけ動画を作るくらいなら既存のものを活用したほうがいいですね。
コンテンツがあふれている現代は「ソムリエ的な働き方」の方が求められているとも思います。