日本語教育の業界用語

投稿者: | 2020年9月28日

大学を卒業してから、就職もせずふらふらしている時期がありました。いわゆるフリーターというやつですね。いろいろなアルバイトをしましたが、一番楽しかったのは

軽井沢のホテルでのリゾートバイト

でした。住み込みで2ヶ月くらい働きました。フリーター、学生、留学生、外国人労働者、訳ありの人などいろんな人がいてとっても楽しかったです。お金も貯まったしね。

さて、私はホテルのレストランのホールで働いていました。バイト仲間は楽しい人ばかりだったんですが、厨房の人って怖い人多くないですか?そこのレストランでも毎日のように厨房の料理人さんに怒られていたのですが、今でも忘れられないことがあります(あのヒゲだけは忘れんわ)。

「何かを持ってこい」と言われて、「どこにあるんですか」と聞いたら、「チャンバーの中に決まってんだろ」と言うんですね。で、その意味がわからなくて、「チャンバーってなんすか?」って聞いたら、

「お前チャンバーも知らねえのか」

とやはり大声で怒鳴られてしまいました。みなさん知っていますか?

どうやら飲食業界では「冷蔵庫」を意味するようなんですね。当時の私からしたら「知るか」というところなんですけどね。

さて、前フリが長くなりました。この話を急に思い出して、

日本語教育の業界用語って何があるだろうか?と思い、みなさんに聞いてみました。

実はわたしは「日本語教育業界にはあんまないだろうな~」と思っていたんですが、聞いてみると出てくる出てくる。今日はみなさんから教えてもらった日本語教育界の業界用語をまとめてみます。

専門用語と業界用語

まず専門用語と業界用語を区別しておかなければなりません。まあ厳密な定義はわかりませんが、私はざっくりこのようにイメージしていました。例えば、

サジェストペディア

という言葉があります。これはおそらく語学教育と関係ない人は知らない言葉でしょう。これは専門用語です。でも、もしこれを例えば

あの学校はサッペで授業やってるらしいよ

と発話し、その「サッペ」が「サジェストペディア」の意味で業界内で通じるのだとすれば「サッペ」は業界用語かな、という感じがします。つまり専門用語はその概念を正確に表している語であり、それ自体辞書に載るような言葉です。でもそれを仲間内で略したり、隠語的に使う場合は業界用語になるのではないかと思います(一応言っておきますが、「サッペ」というのは私が勝手に作った言葉です)。

活用形

意外に盲点だったのが、活用形ですね。

ます形、ない形、て形、た形

などは日本語教師と日本語学習者の中だけで使われる言葉ですよね。これは一般ではなかなか通用しないのではないでしょうか。学校文法では連用形、未然形、終止形などと呼んだりしますから、こちらの方が通じるかもしれませんね。また、

動詞の1グループ、2グループ、3グループ

なんかも立派に業界用語ですね。学校文法では五段活用、一段活用ですね。ただ、韓国の現場にいた時は「五段活用」「一段活用」で教える人が結構いたような気がします。

い形容詞、な形容詞

これも学校文法では「形容詞」「形容動詞」ですね。この学校文法の方も微妙ですけどね。

このあたりは私にとっては完全に血となり肉となっている語ですので、これ自体が業界用語だという認識はまったくありませんでした(笑)

しかし、余談ですけど活用形の名称はもう少し整理が必要かもしれませんね。

例えば、「ます形」「ない形」はそれぞれ「ます」「ない」をつけて、「ます」「ない」をとった部分を指します。「いく」の場合、「いき」「いか」がそれぞれ「ます形」「ない形」ですよね?

しかし「て形」「た形」は「て」や「た」が含まれた状態です。「いって」「いった」という感じで。このへんの統一のされなさに疑問を持つ人はいなかったのでしょうか。まあいいけど。

本の名前

圧倒的に皆さんからの通報で多かったのは「教科書の名前」でした。

みんにち

の認知度は圧倒的ですよね。みんにちで通じなかったらやはりその人はモグリの日本語教師ですね。

それ以外では、

文トレ( 文法トレーニング)
語彙トレ(語彙トレーニング)
かなでき(かならずできる読解)
完マス(新完全マスターシリーズ)
中から(中級から学ぶ日本語)

以上のような通報を受けました。私は国内の学校で働いたことがないのでこの辺はどの程度通じるのかよくわからないのですが、みなさんいかがでしょうか?

そう考えると、「まるごと」「いろどり」のような国際交流基金が出している教科書は省略しようがないですね。敢えて4音節にしてきた、と考えられますね。

初歩者

あと、この辺はコンセンサスがとれていないようですが、「ひらがな、カタカナ」の読み書きから始める初歩者の言い方にもいろいろあるということがわかりました。

完ゼロ
ゼロ初級
ゼロ基礎
ゼロビギナー
ゼロビギ
ゼロスターター
ゼロスタート

などの亜種があるようです。個人的には「完ゼロ」「ゼロビギ」が業界っぽさが出ていいな、と思いました。

その他

通報を受けた用語を一つずつご紹介しましょう。

パタプラ(パターンプラクティス)

みんにちとかで出てくるやつですよね。これからはだんだん聞かなくなってくるかな?

プレテ(プレイスメントテスト)

私の職場でもプレースメントテストはおこなっているんですが、略そうと思ったことがありませんでした。でもたしかに長いですよね。

入れる・入る

たしかにこれは使いますね。「あのクラスはまだて形入ってないから」「次入れますね」とか。「語彙をコントロールする」のが支配的だった時代の言葉でしょうね。この言い方を「嫌だ」という人は多いみたいですし、これからは使われなくなっていきそうですね。

レアリア

これもなかなか一般では通用しそうにないですね。でも教師はみんな知っているという。これは学習者の方も知らない言葉かもしれませんね。

板目

いため、と読むそうです。私はまったくわかりませんでしたが、「絵カード」を指すようですね。

積み残し

予定通り学習項目を教えられず、次の授業で別の教師にやってもらう場合などに使いますね。私は別の用語を使っていたような気がするんですが、思い出せません。

コピーする

普通のコピーではなくて、カンニングのことを指すようです。

チームティーチング

これは学校教育と日本語教育では意味合いが変わるようです。わたしたちは一つのクラスを複数の人が担当するときに使いますよね。でも学校教育では同時間に二人が同じクラスに入ったりするときなどに使うようです。私はそのような場合、日本語教育では「Co teaching」を使うかなと思いますがどうでしょうか。そもそも同時間に二人の教師が同授業に入ることは稀ですね。

学校教育ではそもそも同名科目に授業ごとに違う教師が入るということがないので、「引き継ぎ」も通じないようです。あと「教案」も学校教育では「指導案」というらしいです。

合唱・コーラス

みんなで一緒に声にだして読む、というやつですね。たしかに一般的にはこれだと歌を歌うことを考えてしまうかも知れませんね。

JLPT・能試・日試・日能試
EJU・留試

確かにこれも通じなさそう。しかし「能試」って声に出して読むとすごいですね。今はJLPT、EJUが普通ですかね?それだと業界用語とは言えないかな?

導入

たしかに!これは業界用語だ!英語教育なんかでも使うんでしょうか。

まとめ

というわけで、みなさんからお寄せいただいた業界用語を一気にご紹介させていただきました(一部紙面の関係上ご紹介できないものもありました)。

私はレストランのヒゲ料理人に「お前、チャンバーも知らないのか」と怒られたわけですが、考えてみるとその怒声もわからなくもないですね。業界用語も自分としては基本語彙になっているわけですからね。

しかしチャンバーを知らなくて怒られたのは、やっぱり理不尽です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です