レビュー『問いかける技術』

投稿者: | 2020年11月30日

また今月も「#日本語教師ブッククラブ」に参加してきました。2020年11月の課題図書がこれ↓

エドガー・H・シャイン、金井壽宏(2014)『問いかける技術』英知出版

謙虚に問いかける

この本に何度も出てくるキーワードがこれ。

謙虚に問いかける

この本のすべてはこの「謙虚に問いかける」ことについて書かれていると言っても過言ではありません。試しに「謙虚に問いかける」で検索をかけてみたんですが、ヒットしたのは

177件

推定ページ数は177ページということですので、ほぼ1ページに1回は「謙虚に問いかける」という言葉が出てくることになります。

「謙虚に問いかける」。これをもうちょっとこれを噛み砕いて言いますと、

社会や組織で地位の高い人は、下位の人にちゃんと問いかけることが必要だ

ということです。上位の人が下位の人に問いかけをおこない、何でも話し合えるような雰囲気をつくっておかないと組織としてうまくいかない、ということです。もちろんすべてが順調に回っているときは上位の人は一方的に下位の人に指示を出していればいいですけど、何か問題が発生したらそれではうまくいかないということですね。

聞くことの大切さ

というわけで、「謙虚に問いかける」をキーワードにその重要性や、方策、ケーススタディなどが本書の中では示されるわけですが、地位が高い人や上司的な立場にある人は読むべき本ですね。

そもそも、コミュニケーションの基本は聞くことです。私は以前「聞くことに特化した授業」をやったことがあります。質問されたことにだけ答えるという授業です。実はコミュニケーションというのはそれだけでいいんですよね。

時々聞いてもないことを延々と話す人がいますが、大体そういう人はコミュニケーション能力が低いと見ていいと思います。本書の中でも、

われわれの社会は話す力を過大評価しているが、むしろ発言を控えて問いかける力を高めていくべきなのだ。(Kindle の位置No.183-184)

と述べられていて、「話す能力の方が評価されがち」ということが指摘されていますが、そのあたりは私も常々思っていたことなので我が意を得たりといったところです。

ただ、聞いてもないのに延々としゃべっていて許される場合もあります。それは

その話がおもしろい時だけ

です。ちなみに、話が上手い人は「ゴリ押し」をしてきません。自然な流れで面白い話を入れてきます。言いたいことをただ言うだけの人は大体話の流れとは関係なく「ゴリ押し」で話を入れてきますし、その場合は話もおもしろくありません。

そして信頼関係を築く

それと、本書にも書いてあったかもしれませんが「謙虚に問いかける」ことと「その答えにちゃんと耳を傾ける」ということはセットで考えないといけません。それをセットにすることによって良い関係、組織が作れると思います。

だいぶ前ですけど、組織内でミーティングをしているとき、Aさんが司会を勤めていました。Aさんが何かを提案しています。私はその提案を聞いて、「ん?もっといい方法があるぞ」と思ったんですが、それを言いませんでした。なぜ言わなかったかというと、それを言うとAさんの機嫌を悪くしてしまうと考えたからです。

私は、私の提案がより合理的で、より良いものだと確信していたのですが、それを言うことがはばかられたのです。Aさんは怒りっぽい性質を持っていたからです。

もし私とAさんの間に深い信頼関係があり、目標をしっかりと共有していれば、私はその提案をしたはずです。でも実際はできませんでした。私は「それでは問題が出てくるぞ」とわかっていたにも関わらず、良い案を提案できなかったのです。

その経験からも「謙虚に問いかける」&「その答えにちゃんと耳を傾ける」というのは大事だと思いました。もちろんこれはAさんが一方的に悪いということではなくて、お互いに良好な関係を築けなかったということが問題です。

まとめ

というわけで、「どのように話すか」ということではなく「どのように聞くか」に焦点を当てた、非常に興味深い本を紹介させていただきました。上でも書きましたが、特にある程度地位がある人、上位にいる人が読むべき本だと思います。

そういえば、先日も上位の人と名刺交換をし談笑?しましたが、あちらからの質問などは一つもありませんでした。もちろんその人は私と関係を築くことに意義を見出していなかったからそうだったのだと思いますが、どちらにしても私はその人に対し良い印象をいだきませんでした。

私の経験から言うと、インターネット上で交流のあるそこそこ地位の高い人というのは、大体低姿勢で質問をよくしてきます。「私などに声をかけてくれるなんて…」と思うことすらあります。本を読まなくても「謙虚に問いかける」が実践できているんですね。

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