聞いた話なので正確かどうかはわかりませんが、最近の日本語教育能力検定の合格者のうち60代と50代の人が全体の4割を占めるそうです。実際私の周りにも「若い頃は違う仕事をしていたが、50代60代になって日本語教育分野に参入してきた」という人が少なくありません。
私は2004年からこの業界にいて、時々日本語教師の募集業務に関わることがあります。漠然としたイメージとしても、シニア層からの応募は年々増えているような気がします。
今日は、募集業務をする側から見たシニア層の日本語教師について正直なところを書いていきたいと思います。もちろん私の経験した中での印象ですのでそれがすべてではありません。また私は日本で日本語教育に従事したことがありませんので、国内の状況はまた変わるとは思います。
※ここで言うシニア層とは50代や60代で新しく日本語教育業界に参入してくる人のことを指します。若い時からこの業界にいて、50代・60代になったという人は含んでいません。
大前提
当然のことですが、募集を行う機関によって求める人物像は異なります。女性の採用を念頭においているというところもあるし、条件を満たす中で若ければ若いほどいいというところもありました。ただ、積極的にシニア層を採用したいという機関はあまりないのではないでしょうか。
大体のところは「そこそこ若くて、そこそこ経験のある人」が応募してきてくれたらいいと思っているでしょう。
ですので、それがいいかどうかは別として、まずは大前提としてシニア層を理想の人物像として求めているところはあまりないということを認識しておくことが大事です。
なぜシニア層が求められないか
ではそもそもなぜシニア層が求められないかと言いますと、いろいろな理由が挙げられると思います。その中で大きいのは2点あると思います。
まず一点目は、学習者と歳が離れているということです。世界には色々な学習機関がありますが日本語学習者の多くを占めるのは若年層です。10代・20代が多いでしょう。50代・60代だと親世代、一歩間違えると祖父母世代になります。
難しいことは抜きにして、日本語教育機関に限らずどんな教育機関でもそこそこ若い先生が人気があったりしませんか。もちろん年配でも人気のある先生というのはいますが、若い人の方が人気を得る可能性が高いのではないでしょうか。すると採用する側が若い方に傾くというのも理解できます。学生から人気があった方がいいですからね。
そして2点目ですが、これが1番大きいと思っています。それは、年配者だと使うほうが使いにくいということです。
確認しておきますが私はそれがいいとか悪いとか言っているわけではありません。そういうもんだということを言っているだけです。
一般論として「年下の上司と年上の上司」だったらどちらが付き合いやすそうですか。逆も然りです。「年下の部下と年上の部下」どちらがうまくやっていけそうですか。もちろん模範解答は、
人による
なんですけどね。一般論として、やはり年上の人に指示を出したりするのは日本の文化としてなかなか難しいということがあります。
というわけで私が思う、シニア層が求められない理由を2点挙げました。
①学習者と歳が離れている
②年上の人を使うのが難しい
もちろん他にも色々な理由はあるでしょう。ただその他の理由というのは、あまり年齢に左右されないかなという気もします。シニア層はPC スキルが低いということを挙げる人もいますが、若い人でも PC スキルの低い人はいくらでもいます。日本語教育の経験で言ってもシニア層と若年層はあまり変わらないですし、それは決定的な要因にはならないと思います。
対策
①の「学習者と歳が離れている」ということは動かしがたい事実です。どうにもなりません。だとしたらシニア層の求職者が努力すべき点は、「年上だから使いにくそう」という印象を少しでも少なくするということではないでしょうか。年上というのはもう致し方ありませんからね。
年を取ってくるとやはり頑固になりがちですし、自分のやり方を信じてしまいがちです。もちろん自分の意見を持ったりすることは大事かもしれませんが、若い人が意見するというのと年配の人が意見するというのではその重みが違ってくるということもあります。「その重みがめんどくさい」と感じることはよくあります。
まあそう言ってもちょっと話が抽象的すぎますので、もうちょっと具体的な話にしましょう。つまり求職時の振る舞いでどのような点に配慮すべきかですね。
①指示に従う
応募するという事は手元に募集要項があるはずです。それを熟読して、その募集要項に書かれている通りに応募をしなければなりません。これは以前も書きましたが、「履歴書をPDFファイルにして提出」と言われたらそれは PDF で出さなければいけませんし、「問い合わせはメールのみ」と言われたら電話したらいけないんですよね。
②前職の事をアピールしすぎない
例えば他の人が誰もが知っているような一流企業で働いていたとしても、その経験が日本語教育に生きるかどうかは分かりません。いや、総体的には生きるでしょうけど、そこでのやり方がそのまま通じることはまずないでしょう。大きい仕事をしていたからといって日本語教育機関に評価されることはありません。
もちろん履歴書には過去の仕事のことを書くとは思いますが、あまり過去の栄光については深く言及しない方がいいと思います。なぜ日本語教育に興味を持ったかというあたりがうまく説明できればいいのではないでしょうか。
③話を簡潔にする
これは年とは関係ないかもしれませんが、一般的に年を取ると話が長くなりがちです(ソースは私)。面接というのは、聞かれたことに答える場です。質問に答えてそれにプラスアルファの一言を付け足す程度で発言は終わるのがいいと思います。
アピールをしたいと思うと話が長くなりがちですが、特にシニア層では気をつけないと「面倒くさそうな人だなあ」という印象を持たれてしまいます。
まとめ
というわけで色々と書いてきましたが、まあこれは若い層の人でも同じですね。ただ現実問題として、若い人なら許されるということは世の中にはたくさんあります。それがいいかどうかという話ではなくてそういうものだということです。
やはりシニア層はスタートラインに立つ前に、若干後方から入場することになりますので、いかにそのディスアドバンテージを克服するかということを考えておくのは悪くないと思います。
誤解なきよう申し上げておきますが、後発シニア層の日本語教師の中でも素晴らしい仕事をしている人はたくさんいます。私が今回言っているのは、「一般的な認識というのはそういうものだ」ということにすぎません。ある教育機関でどうしても仕事を得たいと思った場合には、やはり自分より年下の人との競争になるんだということです。
シニア層はシニア層なりのポテンシャルがあるでしょう。でもそれを発揮するためにはまずはスタートラインに立たなければなりません。その上での話です。
しかしですね、書いてて思ったんですが、これはまさに私にも当てはまることなんですよね。高みから話していることではなく、自分に向けて話してることなんですよね。シニア世代に突入する自分に対し自戒の念を込めて。話も長くなりがちで、自分のやり方を通しがちという…