あなたにとって日本語教師は適職??

投稿者: | 2021年1月8日

以前、こんな記事を書きました。

日本語教師、向き不向き?

ここでは「日本語教師にはどんな人が向いているか」というテーマで話をしていて、

特に向き不向きなどない。

という結論を出しました。やりたいと思えばやりゃあいいのよ、という感じですかね。私自身、向いてないな~と思うこともしばしばですし、またこの記事を出したあとの日本語教師の方々の反応もそのような感じでした。中には「日本語教師が天職だ!」と思ってらっしゃる人もいるみたいでしたが、一方では「向いてないな」と思いつつ長年やっている人もたくさんいました。

さて、今回おもしろい本を読みましたので、皆様と共有していきたいと思います。

鈴木祐(2019)『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシング

この本の内容を一言でいうと、「仕事ってどうやって選ぶべきなの?に対する回答」です。私は今、この業界を離れようと思う気持ちは一ミリもありませんが、業界は変わらなくても職場は変わります。今後職場を選ぶ上で、非常に役立つことが満載ですので、一度読んでおいて損はない本だと思いました。

仕事で陥りがちな「幻想」

本書ではまずこれが書かれています。一般に仕事を選ぶ時の基準というのがそもそも間違っていると言うんですね。それは「幻想」であり、その幻想に沿って仕事を選ぶと、不幸にどハマりすることもあるため本書では

「仕事選びにおける7つの大罪」

として紹介されています。

1.好きを仕事にする
2.給料の多さで選ぶ
3.業界や職種で選ぶ
4.仕事の楽さで選ぶ
5.性格テストで選ぶ
6.直感で選ぶ
7.適性に合った仕事を求める

これが全部良くないことだと言っているんですね。その理路を全部は紹介できませんが少しだけ抜粋します。

まず最も目を引くのが「1.好きを仕事にする」ですよね。「好きなことを仕事にしたらいい」ということはよく言われますもんね。

好きなことを仕事にしていた人ほど、「本当はこの仕事が好きではないのかもしれない…」や「本当はこの仕事に向いていないのかもしれない…」との疑念にとりつかれ、モチベーションが大きく上下するようになります。

一見すれば情熱をもって仕事に取り組む方が良さそうに思えますが、実際には「仕事は仕事」と割り切った方が作業の上達が速く、すぐに仕事を辞めない傾向があった

私もこの仕事に向いていないと思ったことは一度や二度ではありませんが、すごく好きで始めた仕事ではないので「向いてないからやめる」というような考えを持ったことはありませんでした。「向いてねーなー」と思うだけですね。まあ嫌いなことは仕事にしない方がいいとは思いますが。

で、本書では「なんとなくやってたら楽しくなってきた」というのがいい流れなのではないかと言います。

このような情熱のあり方を、心理学では「グロウス・パッション」と呼びます。「本当の情熱とは、何かをやっているうちに生まれてくるものだ」という考え方のことです。

これはよく分かりますね。まさしく私がそうだと思います。どんな仕事でも突き詰めていくと面白い部分が見えてきますよね。実はこれ、私が「食べ物の好き嫌い」を解消した時も同じような考えだったんです。

私は今では大抵のものは好き嫌いなく何でも食べますが、若い頃は嫌いなものが結構ありました。でもある時からその嫌いという感情をかっこに入れておいて、できるだけ感情なしでその食べ物たちと付き合うようにしたんですね。そうしたら嫌いだった食べ物の良さというものが見えてくるんですね。おそらく人間が食べるものというのは長い歴史の中でかなり淘汰されてきたはずです。今淘汰されていないということは、そこに何らかの美味しさが含まれているからなんだと思うんですよ。

仕事もそれと同じ。というのは飛躍しすぎですけど、言いたいことは、

何事にも面白い面があるはず

ということです。

次は給料のことですけど、収入は幸せに直結しないということを言っています。

がんばって世間でもトップクラスの年収を稼ぎだしたとしても、良いパートナーと巡り合う喜びや、健康の改善による幸福度の上昇レベルにははるかに及びません。お金を稼いで幸福を目指すなら、まずは人間関係や健康の改善にリソースを注ぐ方が効果は大きいわけです。

また本書では、収入を上げる努力は「費用対効果が低い」と言うんですね。それはつまり例えば年収が100万円上がっても幸福度はそんなに上がらないということなんです。年収を100万円あげようと思うとかなりの努力が必要ですよね。だから収入を基準に仕事を選んではいけないということです。

あと目から鱗が「仕事の楽さで選ぶ」のが間違いだという部分です。私は仕事が楽かどうかは結構重要だと思っていますから。

組織内で地位のランクが最も低い人は、ランクが高くより重大な仕事を行う人に比べて死亡率が2倍も高かった

「船荷のない船は不安定でまっすぐ進まない。一定量の心配や苦痛は、いつも、誰にでも必要である」

適度のストレスは必要というわけです。

反発しようと思いましたが、分からなくもないなと思いました。私の場合職業生活においての一番のストレスはたぶん雇用が安定していないということだと思います。40過ぎて契約ですからね。でも逆に言うと、このストレスがあるからこそ努力をするのだと思っています。もし65歳定年が決まってるなんてことだったら、私なんて全く仕事しないですよ(笑)。

そこそこストレスを感じながら仕事をしているからこそ、自分も成長していける部分があるのかなあと思いました。まあ上司のパワハラとかそんなストレスはないほうがいいと思いますけどね。

仕事の幸福度を決める「7つの徳目」

ここまでは簡単に、間違った仕事選びの基準について書きましたが、それで終わっては意味がないですよね。では次にどんな観点から仕事を決めるかということです。本書では「7つの徳目」というものをあげています。

①自由:その仕事に裁量権はあるか?
②達成:前に進んでいる感覚は得られるか?
③焦点:自分のモチベーションタイプに合っているか?
④明確:なすべきことやビジョン、評価軸ははっきりしているか?
⑤多様:作業の内容にバリエーションはあるか?
⑥仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか?
⑦貢献:どれだけ世の中の役に立つか?

本書では、「これらの要素がそろった仕事であれば、どんなに世間的には評価が低い仕事でも幸せに暮らすことができる」と言っています。

これを一覧で俯瞰して思うんですが、割と日本語教師はこの徳目に合っていますよね。もちろん日本語教師と言っても色々な仕事や働き方があるので一口でまとめるわけにはいきませんが、少なくとも今の私の職場、今までの職場を考えた場合に大事なところは抑えられているような気がします。

授業活動を考える「自由」。自分で目標設定してそれに向かって歩んでいくときの「達成」感。社会や人に対する「貢献」の意識を持つこともできます。

そして特に最近では「多様:作業の内容にバリエーションはあるか?」という部分でも、科学技術や社会の動きが早く、常に新しいものをキャッチアップしておかないといけないため、いつもルーティンワークで終わるということはなくなってきている(できなくなってきている)と思います。

私は以前一番この仕事で物足りないなーと思ったのが「仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか」という部分なんですが、これも働き方によって解消できることが多いなぁと最近は思います。基本的に日本語教師は授業に入れば孤独です。同じ方向を向いている人は自分しかいません。でも、それ以外の部分で授業の資料を共有したり、教授法について話し合うような環境を作れば、仲間意識というものも割と簡単に醸成できるのではないかということに気がつきました。

また最近は教師と学習者の関係性も変化しています。「伴走者的なポジション」を作ることに成功すれば、教室のすべての学習者が同じ方向を向くということになりますしね(理屈としては)。

またオンラインのコミュニティもどんどん発展していきますしね。組織内に助けてくれる人がいなくても、業界内に助けてくれる人がいればそれは救いになります。

その他

そして当然本書にはさらに積極的な職選びの方法についての言及があり、それはそれで非常に面白いんですが、ここでは触れません。その代わり、断片的に面白い記述を引用してみます。

「職場におけるストレスは受動喫煙よりも体に悪い」と結論づけています。受動喫煙が肺がんや心疾患のリスクを増大させるのは周知の事実ですが、ネガティブな職場がもたらす心身のダメージは、それを40%も上回ると言うから実に恐ろしい話です

ストレスのありすぎるところは早く辞めた方がいいということでしょう。

シカゴ大学が行った「最も満足度の高い仕事」のトップ5は、

①聖職者
②理学療法士
③消防員
④教育関係者
⑤画家彫刻家

だそうです。我々教育関係者が第4位に入っています!!この満足度が高い仕事に共通するのは、

他人を気遣い、他人に新たな知見を伝え、他人の人生を守る要素を持っている

ことだそうです。

長時間の通勤がもたらすストレスの高さは年収が40%アップしないと割に合わない

そうか最近私が幸せなのは、テレワークが多かったからですね(笑)

通勤時間が長い人ほど肥満が多い上に離婚率まで高いとの傾向も出ています

↑そこまでなんですね。

あとライフワークバランスなんかについての言及もあります。↓の言葉は凄いですよ。

プライベートで仕事のことを「考えただけ」でも私たちの幸福度が激減してしまう

休みの日に仕事のことで連絡するなんてあってはいけないということですね。とはいえ上司がそういう人だとどうしようもないですけどね。「土日はできるだけ仕事はしない」というのは間違いではないですね。

それと面白かったのが下の言葉です。

現代的な問題を解決するには、「強いつながり」に頼るのがベストです。

以前「弱いつながり」がいろいろと言われていた時期がありますよね。弱いつながりを持つことによってビジネスで成功を収められるとかそんな事だと思うんですけども、この研究自体1970年代のものらしいんですね。でその時からすると今の状況というのは大分変わっています。で新たに調べてみると

いやいや、やはり強いつながりの方が大事ですよ

ということなんですね。ま、強くても弱くても、繋がりがたくさんあることに越したことはありませんね。それがストレスを誘発しない程度のものであるのならば。↓こういう本を思い出しました。「強いつながり」が必要なのも真、「弱いつながり」が必要なのも真だと思います。

レビュー『広く弱くつながって生きる』

さいごに

というわけで、鈴木祐(2019)『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシングの内容について簡単に紹介しました。気になる人は是非読んでみてください。非常に勉強になります。

上でも述べましたが、日本語教師は割といい仕事なんじゃないかなあという気がします。おそらく一番のネックになるのが収入という所だと思うんですけれども、収入は幸せに直結しないということを考えれば、まあまあ許容できるのではないでしょうか。

授業をしていて人の生き死にに関わることもあまりありませんし、何億という損失を会社や組織にもたらすということもあまりないでしょう。時々感じるストレスは「良い授業ができなかった」そんなところですよね。

皆さんにとって「日本語教師」が適職かどうかはわかりませんが、少なくとも私は悪くない選択をして日本語教師をやっているなあということを確認できました

もちろん「私はそんな悠長なこと言ってられない、もっと過酷な職場で働いている」という人もいるでしょうが、そこまで考えますと何も物を言えなくなりますので、私の主観ということでお許しいただきたいと思います。

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