レビュー『世界一シンプルな外国語勉強法』

投稿者: | 2021年3月18日

秋山燿平(2018)『世界一シンプルな外国語勉強法』ダイヤモンド社

著者の秋山氏はなんと10ヶ国語を話せるそうです。そのうちの4カ国語はビジネスレベルに到達しているといいます。東京大学の出身ですので、とても勉強がよくできるのは間違いないと思いますが、勉強ができることと外国語が話せるようになることとはまた別の話でしょう。何か秘訣があるはずです。

私も外国語学習者として、そして外国語教育従事者として、その秘密や勉強法を知りたいと思って読んでみました。小一時間ほどで読める量ですが色々と参考になりましたので、その内容をちょっと共有してみたいと思います。

シンプルな章立て

この本は大きく分けて下のように3章立てになっています。

1.日常会話は200単語、30表現から始めよう
2.最速で会話の基礎が身につく「アウトプット」3ステップ
3.中仏西独韓!言語別学習ポイント

パート3は、中国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、韓国語それぞれの言語の学習ポイントを簡単にまとめています。これらの言語を学習しようとしている人にとっては役に立つ内容かもしれませんが、やはりこの本のハイライトはパート1とパート2でしょう。

ここで紹介されているストラテジーは、どのような言語を学ぶ時でも有効です。ではパート1と パート 2の内容を見てみましょう

パート1

まずパート1ですけれども、内容を簡潔に表すと以下のようになります。

初級レベルで必ず使う200単語・30表現を覚える

この「200単語30表現」を、この本では

犬かきの単語・表現

と表しています。とにかく外国語の海で溺れずに息を吸い続けるために必要な最低限の単語ということでしょう。そしてそれにプラスして

自己紹介と自分の趣味の単語・表現

これらは人によって違うから覚えなさいということです。例えば、大学院という言葉は犬かきの単語には入らないかもしれませんが、自分が大学院生だったとしたら絶対に必要な単語ですよね。

この本の面白いところは、

初めのうちはこれ以外は絶対に覚えるな

と鉄則を作っているところです。外国語を学習する時には単語量は多ければ多いほどいいと思いがちですが、とにかくこの犬かきと自己紹介と自分が趣味の単語さえ知っていれば、日常会話レベルではどうにか対応ができるからということです。いたずらに難しい単語を覚えるよりは、必要最低限の単語でいかに自分の言いたいことを表現するかを考えた方が良いということです。なるほど。

ただし単語だけでは話はできません。ここで30の表現を覚える番になってきます。「~したい」「~でした」「もし~なら」「~できない」といったような表現をもう丸暗記してしまうということです。

しかし簡単にいうけど、その暗記が難しいわけじゃないですか。それに対する提案もあります。それは、

自作の単語帳を作ること

そしてその際に重要なのは、例文を書くことです。昔フラッシュカードみたいなもので、表に日本語の単語、裏に英語の単語になっているようなもので暗記をしませんでしたか。私は高校生の時にしましたけど、全然覚えられませんでした。この本では、

犬かきの単語・表現のみを使った実生活の中で使うであろう例文

を書き込むべし、と言います。

これがパート1の大まかな内容です。まとめましょう。

  • 基本的なやり取りに必要な、最低限の単語・表現を覚える
  • 自分が使いそうな表現を入れた自作の単語帳を作る

パート2

パート1では何を覚えるべきか、どうやって覚えるべきかということについての言及がありました。自分で作った単語帳を見つつ頭の中で練習をすれば単語や表現は覚えることができるでしょう。しかしそれだけでは実際に使えるようにはなりません。パート2で述べていることは、

犬かきの単語・表現を確実に使い、基礎を定着させると同時に必要に応じて語彙を増やしていく

ということで覚えたものを使う方法についての記述があります。著者が提案するのは、

言語交換アプリ

の使用です。皆さんも「ハロートーク」や「タンデム」というアプリを聞いたことはあるのではないでしょうか。私も以前こういったアプリを使おうとしたのですが、色々な人に聞いてみたところ「出会い系と化しているよ」などという感想を聞いたことがあります。おそらくそのような危惧を抱く人は少なくないのではないでしょうか。

ただ著者は、これらのアプリに関して「とってもかんたん、あんぜん」と述べています。私もそれには同意です。実際にあったり個人情報を教えたりしなければ、自分に危害が及ぶことはありません。ちょっと変だなと思ったらブロックすればいいだけです。

私が以前このようなアプリを使おうとして断念したのは、変な人がいるからではなくて、

日本語を教えるのが嫌だ

と思ったからです(笑)あと以前クメール語が母語の人を探してみたんですけど、あんまりいませんでした。次に他の言語を勉強する機会があったら是非ともこのような言語交換アプリを使おうと思っています。

で、こういったアプリを使ってどのように学習するかということなんですけれども面白い提案がなされています。「3ステップ」という考え方です。

①文章のやり取り
②音声メッセージ
③通話

なるほどこのステップはわかりやすいですね。①が最も負担が少なく、③さんが負担が多いわけですが、途中に「音声メッセージ」というステップを挟むんですね。

日本の人は SNS 上で音声メッセージを残すということはあまりしませんが、例えば私がいるカンボジアでは結構音声メッセージでやり取りをしています。中国の人もよく使っている印象があります。

リアルタイムの通話だと考える時間もあまりありませんし緊張してしまいますけれども、音声メッセージならばこの部分は大丈夫ですよね。また相手の音声メッセージが聞き取れない場合でも、「それを文字化してくれる?」とお願いすれば翻訳機にかけることができます

うーんナイスアイディアですね。

まとめ

今日は簡単に、秋山燿平(2018)『世界一シンプルな外国語勉強法』ダイヤモンド社で得た内容をまとめてみました。かなり省略したので、詳しいことを知りたい方はぜひ本書を読んでみてください。

以前何かの本で、3ヶ月の日本語の授業で15分の会話をできる程度に日本語力を伸ばすという授業やっているというのを読んだことがあります(多分白井先生の本だったかと)。その内容は詳しく知らないのですが、確かそこでも自分が使うべき単語や表現だけを覚えて、それをひたすら活用する練習をしていたというように覚えています。

外国語学習と言うと長い道のりという感じがしますし、それは確かにそうなんでしょうけれども、ある程度のコミュニケーションが早期に実現すれば、さらにその外国語に興味を覚えて学習が送信されることは間違いありません。本書でも、12ページに

必要最低限の単語・表現を覚える
→覚えた単語・表現だけを使って話す
→通じる、嬉しい
→もっと話したくなる

という基本的な考えが提示されています。

なんかこの本読んでたら、新しい外国語もすぐに話せるようになるんじゃないかという気がしてきました。そして、そういう授業をやってみたいな、と思いました。

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