形態的類型論と言語間の距離?

投稿者: | 2022年6月14日

なんの本だったか忘れたんですけど膠着語、屈折語、独立語っていう言葉がでてきました。日本語教師の方ならなんとなく聞いたことある用語だと思いますが、自分の知識の整理のためにももう一度まとめてみたいと思います。そしてその後で、整理するだけじゃなくて、日本語教育の文脈でいろいろ考察したいと思います。

言語の分け方

言語の分け方にはいろいろありまして、代表的なのは今日話す「形態的」な分け方とか「統語的」な分け方ですね。

そういえば「統語的」っていう表現も一般的にはあまり使う表現ではないですよね。まあ誤解を恐れず、超簡単に言えば

文法

ってことですね。まあ定義的にはもっと複雑ですけど、言語を「統語的にわける」というのを「文法で分ける」としてもまあいいと思います(文法という用語が何を指すかという議論になると困りますけど、まあここはなんとなくで)。

で統語的に分けるのは文法で分けるということですから、みなさん大好きなあれですよ。

SVO
SOV

みたいな。まあこれについては深く触れませんが、昔よくあった「日本語は世界でも特殊な言語だ」という意見に対する反論としてよく使われますね。「世界では日本語と同じSOV型が45%を占めるんで、別に特殊じゃないっす」みたいなあれです。

まあそれはともかく、統語的な分け方というのはこういうやつですね。

そういえば、昔大学院で「日本語のシンタクスと意味」という寺村秀夫先生の名著を読んだことがありまして、まずは「シンタクスって何それ?」とタイトル見ただけで圧倒されてしまった覚えがあります。「シンタクス」と調べると、「統語」と出てきて、「「統語」も「シンタクス」も意味わかんないし」と思ったりしましたね(笑)

形態的な分け方

で、本題に入りますけど、「形態的」という言葉はわかりやすいですよね。「形」ですから。一般に形態的には3つに分けられるといわれています。

・屈折語
・膠着語
・孤立語

なんか調べると、4つにわけるやり方もあるみたいなんですけど、とりあえずここは3つにしておきます。

屈折語

Wikipediaによりますと、「文法的機能を表す形態素が、語の内部に分割できない形で埋め込まれる言語のことをいう」と出ています。なるほど。

例えば英語の場合、主語の人称によって動詞にsがついたりしますよね。過去形に「ed」がついたり。そういうことでしょう。

ロシア語、ドイツ語、ギリシア語、ラテン語

などはこのタイプだそうです。私はこのタイプの言語をあまり勉強したことがないのでよくわかりませんが。

膠着語

これは日本語のような言語ですね。単語にある語を付着させることによって、その単語の文中での役割を示すような言葉です。

まあ日本語の助詞を考えるとわかりやすいですね。ある単語に「に」をつけると方向性を表し、「が」をつけると行動の主体をを表すみたいなことです。

韓国語、モンゴル語、トルコ語、フィンランド語、ハンガリー語

などはこのグループだと言われています。

孤立語

これは最もわかりやすい。単語が活用せず、単語の並び順だけで意味を表していくような言語です。

中国語、クメール語、タイ語、チベット語

なんかはこのグループだそうです。

ずっと前、台湾出身の学生が「中国語には文法がありません!」と言っていました。「いやいや文法がないことはないだろう」と思ったんですが、この学生の言いたいことは「日本語のような語尾変化などがない」ということだったんだと思います。

英語は?

まず私が思うのは、英語はどこに属するんだろうか、ということですね。「いや、ヨーロッパの言語ですから、屈折語ちゃいますの?それにあんた、屈折語の説明のところで英語を上げてましたやん」と言われそうですけど、現代の英語に関しては限りなく孤立語に近いような気がするんですよね〜

そりゃ、主語の人称によってsがついたり、動詞の過去形は日本語の語幹と活用語尾みたいに分けられませんしね。そういう意味では屈折語なんですけど、ロシア語とかに比べるとだいぶそういう変化も簡単じゃないかと思うんですよね。知らんけど。

あと、個人的には英語の動詞の活用、例えば動詞GO WENT GONEの変化とか、I MY ME MINEとか超不規則なんですけど、中学校、高校とみっちりやってきたからか、そんなに苦じゃないんですよね。てかそういう単語として理解しているんですよね。また主語が三人称単数の時のsなんて、私完全に無視してますから(てか過去形とかも無視したりして(笑))だから、個人的には英語は単語をポツポツと並べていく孤立語に近いなあという印象を持っています。

・・・と一人考えていたら、「英語は孤立語化している」という記事をいくつか見ました。どうやら時代が経つにつれて、だんだん単純になってきたみたいですね。そう考えると、英語はこれからますます世界の共通語としてクレオール化が進み(合ってる?この用語?)、ますます単純になっていくかもしれませんね。そもそも私がクレオール化した英語使ってますから(汗)

母語と外国語学習の距離

ある外国語の難易度は、母語からの距離によって決まると言われています。ヨーロッパの人とかに会うと、英語が母語じゃなくても母語のように使いこなしている人がいたりして、まあ、それは言語間の距離だけじゃないですけど、やはりその距離も習得に影響を与えるのは確かでしょう。

で、言語の形態的な違いもその距離と関係してくるのは間違いないと思います。まあ簡単に言えば、日本語を学ぶとき、日本語と同じ「膠着語」グループに属する言語が母語の人の方が、習得においてアドバンテージがあると考えられます。

やっぱり、同じ膠着語を母語とする韓国人とかモンゴル人とかは日本語が上手な印象ですよね。サッカーをやってた人がフットサルをやると、野球出身の人よりうまいのは当然ですね(ちょっと強引か?)

しかし、外国語と母語の距離というのは何も形態的にだけで決まるわけではありません。例えば、中国の人とかも日本語上級者が多い印象ですが、中国語は膠着語ではなく、孤立語です。

おそらく、「漢字を共有している」というアドバンテージが大きいのでしょう。

そういうことを考えますと、中国語話者にとっては「語彙面」で日本語との距離が近いと言えますし、もしかしたら「カタカナ読みで通じる」と言われるスペイン語の母語話者にとっては「音声面」で日本語との距離が近いと言えるかもしれません(すんません、これはよくわかりませんテキトーです)。

つまり母語とターゲット言語の距離というのは、そう簡単に測定できない

複雑系

である、ということがわかると思います。

距離の近いところを探す

そこで外国語学習を行う際におこないたいのは、母語とターゲット言語の比較です。そして比較をした後に、どういった面で言語的な距離が近いのかを少しでも探し当てることが有用な気がします。

例えば、日本人が英語を学習しようと思ったら、「英語と日本語はどういう点で距離が近いだろうか」を考えるのですよ。「そんなもんあるかいな!」と怒られそうですが、いやいや、あります。

日本での生活では知らず知らずのうちに英語ルーツの単語を使っています。「デスク」「トラベル」「クリーナー」とか普通に日本でも使います。考えてみてください。「机」「旅行」「掃除機」。みなさんがこれを翻訳できる外国語は他にいくつあるでしょうか?

これ(日常的に英語ルーツの単語を使っている)は英語学習のアドバンテージです。「机」「旅行」「掃除機」から単語を覚えなければならない外国語に比べたら、英語ははるかに楽です。こういうのをいくつも上げていったら、外国語学習のモチベーションが高まりそうな気がしませんか?

もし、日本語を勉強する学習者を相手に授業をするなら、「こじつけ」でもいいので、日本語と距離が近い項目を挙げてもらうとおもしろいかもしれませんね。考えているうちに、「割と日本語かんたんかも」と思ってもらえるかもしれません。

まとめ

というわけで、言語の分け方から言語間の距離のこじつけまで、テキトーに話してきました。

私はつい最近まではクメール語を勉強していました。日本語とクメール語の距離はかなり遠いような気がしますし、ほとんど似通った部分がないので難儀しました。が、やっぱ探せばありました。

それは発音面のことです。発音を考えるうえで、私がそこそこしゃべれる韓国語の知識が役に立ちました。有気音と無気音の区別とか、韓国語でいうパッチムの知識ですね。

まあそうなってくると、「母語と目標言語の距離」とは言えなくなってしまいますが、「自分と目標言語の距離」を考えてみると、打開できるところがあるかもしれません。結局外国語学習というのは超個人的な営みですから、母語であれ自分だけのことであれ、目標言語に対して何らかの「とりつく島」を探し当てることは意義深いことだと思います。

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