『学習者を支援する日本語指導法I 音声 語彙 読解 聴解』を読んだよ②

投稿者: | 2023年3月15日

『学習者を支援する日本語指導法I 音声 語彙 読解 聴解』を読んだよ①

↑からの続きです(内容はそんなに関連してないが)。

セマンティック・オーガナイザー

この本を読んでたら結構初めて聞く用語とかが結構出てくるんですが、このセマンティック・オーガナイザーもその一つでした。何かの必殺技なのか、それともロマンティックな何かなのか皆目検討もつきませんでしたが、まあ読んでみたら何のことかすぐにわかりました。セマンティック・オーガナイザーとは、

概念と文章構成を図にまとめて図式化するものです。(p188)

ということで、もうこれは実物を見てもらった方が早いと思います。以下のようなものが例として挙げられています(p189,190)。

なるほどこういうものをセマンティック・オーガナイザーというんですね。あまりロマンティックなものではありませんでした。

日本語でググってみますと、まあヒットするにはヒットするんですが、それほど一般的な語ではないような感じですね。英語だとたくさん出てきます。

で、問題はこのセマンティックなオーガナイザーがどういう文脈で本書に表れているかということなんですが、

読解の後作業

場面で用いよ、ということらしいです。

つまり何かを読み解いた後には意見や感想・批判を述べたりする後作業をするのが良いということで、そのための情報整理や確認をこのセマンティックが止まらないオーガナイザーを使ったらどうですかということなんですね。

そういえば、学校教育での国語の時間などではこのようなオーガナイザーに記入をしたり、先生がまとめたものを見せてくれたりしたような記憶があります。

「読解力が弱い」とか「読解パートで点を取れない」ということはよく教育現場で聞かれますが、もしかしたらこういう情報や構造を整理するものを用いると、立体的に文章が理解できてくるのではないかと思いました。

とにかく初めて聞く言葉でしたので、書いておきました。

意味交渉

最後に本書で「むむっ」ときた意味交渉について言及しておきます。

なぜ「むむっ」と来たかというと、最近聞いた講義でもこの言葉が出てきたからです。それは『第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと』の著者の小柳かおる氏の講義です。

「SLA(理論)にあった日本語授業を考える」教師研修会をやりました(スライド有)

確か、「意味交渉があると言語習得が進む」というようなことをおっしゃっていて、その時私は「意味交渉のある活動」のことを単に「インフォメーションギャップのある活動」みたいな感じで理解しちゃっていたんですけど、先輩に「それは違う」という指摘を受けていたからなんですよね。いやはや私の無知を自分で話すようでお恥ずかしい。

意味交渉とは本書では、

コミュニケーション上の問題を解決しようとする話し合い(p241)

のことを指すと言っています。具体的には、「繰り返しや言い換え、確認を求める」「単語の意味を聞く・確認する」「話の一部が聞き取れなかった時に、聞き返す」などをすることで意味交渉が始まるということですね。

つまり、

「あ、すみません、今何と言ったんですか?」
「◯◯ってどういう意味ですか?」
「え?どこへ行ったって?」

みたいな発話から始まるコミュニケーションのことですね。この「意味交渉」は非常に大事で、

意味交渉が多ければ多いほど、言語学習が進むことがわかっています。(p241)

ということです。

って考えてみると、確か『まるごと』の中級とかにこういう意味交渉を始めるための言い回しみたいのが結構でてくるんですよね。なるほど、よく考えられていますわ。

「まるごと」を一定期間使って思うこと

まあとにかく、本書では意味交渉は大事だから、意味交渉が始まるような言い回しを早い段階で学習者には教えておく(使えるような活動をしておく)のが良いですよ、ということが書かれています。

そういえば、今朝私英語のオンラインレッスン受けたんですけど、その時まさに意味交渉しましたね。先生が容赦無く話してくる人で、瞬間的に聞き取れず、25分のレッスンの間3回くらい「すみません、聞き取れませんでした」「質問のポイントは何ですか」みたいなのを言った記憶があります。

そうか、今日は意味交渉したのか〜

翻って中国語のレッスンでは、英語よりも更に意味不明なんですけど、それほど意味交渉してないんですよね。あまりにもわからないから。あと、そんなに先生が質問してこないので、言っている内容がわからなくても適当にニコニコしていたらレッスンが勝手に進んでいくんですよ。

・・・ということは、「意味交渉をする絶好の機会があるにも関わらず、それを活かせていない」ということになりますね。先生的にも学習者的にも。

おそらく学習者というのは私と同じ人が多数派で、ちょっとくらいわからないことがあってもテキトーにわかったような顔をしてる人が多いことでしょう。そんな中で意味交渉を増やすには、質問することが必要ということにならないでしょうか。なぜなら学習者は質問されたら答えないといけないわけですが、質問の内容がわからなかったら意味交渉をせざるを得ないわけですから。

・・・というわけでやっぱ授業では質問を投げかけていくのがもっとも簡単な意味交渉を作り出す装置ということになりますね。

あと確か小柳氏がおっしゃっていたのは教師学習者間では意味交渉が起こりにくい(学習者はテキトーにしのごうとするから)ので、気軽に意味交渉ができる学習者間でのペアワークやグループワークを行うのが良い、というようなことだったと思います(間違ってたらすまない)。

とにかく、学習者としても教師としても「意味交渉」が起こるようにやっていきたいものです。

まとめ

ということで、畑佐由紀子(2022)『学習者を支援する日本語指導法I 音声 語彙 読解 聴解』くろしお出版 を読んで思ったこと、初めて知ったことなどをつらつらと書いてきました。

このシーズンⅡ?はまた今年に出るということですので、続編が出るのを楽しみに待ちたいと思います!

『学習者を支援する日本語指導法I 音声 語彙 読解 聴解』を読んだよ①

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