例により、以下の本をXリーディングしました。読みながらメモしたことをここでまとめておきます。
中村文子・ボブ・パイク(2017)『講師・インストラクターハンドブック 効果的な学びをつくる参加者主体の研修デザイン』日本能率協会マネジメントセンター
この本を読み始めました。少しずつ感想を書いていきます。https://t.co/YYiJjGUqIG
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) August 28, 2024
第1章 研修の効果を高める
「研修は、「説明する」「伝える」ことが目的ではない」(p27)
説明とか、伝えるだけなら本を読んでもらえばいい。それかビデオにして見てもらえればいいですね。
素晴らしい過去に受けた研修があるけど、講師の名前が思い出せないというエピソードの後に「講師が誰だったかは思い出せない、というのは講師にとっては褒め言葉」(p29)。
これはアナウンサー界隈でもそうらしいと聞いたことがある。「誰か忘れたけど良いニュースの読みだった」みたいな。
結局研修の目的は、説明することでも伝えることでも、講師の名前を覚えてもらうことでもなくて、学んだ内容を覚えてもらい、それぞれの場で成果につなげてもらうことなんですね。
p35に参加主体の研修の基盤となる「学習の法則」が5つ書かれていますが、その法則の一つに「習得はいかに楽しく学ぶかに比例している」とある。
これも激しく同意。ゲラゲラ笑うことはなくても楽しいという感覚を提供することは大事ですよね。
第2章 なぜ研修が必要なのか?
どうも「社内研修」みたいなものを想定して書かれている感じのところが多かったが、「研修目標の設定」や「KSAをデザインする」みたいなところはためになった。
研修目的のNG→「〜を知る/理解する」「〜を伝える/紹介する」
一方良いのは→「〜できるようになる」「〜を体験/検討する」らしい。この辺は納得。
伝えることは手段であり、目的にはならないということですかね。
KSAは英語の「知識、スキル、態度」の頭文字。知識とスキルというのはまあある程度理解していたけど、「態度」というのはあまり重視していなかった。「インパクトのある方法で人の感情に働きかける」(p70)というのが推奨されています。
第3章 研修を組み立てる
「90/20/8」の法則が紹介されている。
・人の集中力が持つのは90分
・20分ごとにペースや形式を変える
・8分ごとに参加者を参画させる
「参画」はディスカッションとかグループワークまでいかなくてもいい。参加者が主体的に取り組めるクイズや、ペアで話す、自分で何かを書くなんかで良いらしい。p98
90分についても、経験的に同意できる。
2時間のセミナーだとやはり私は休憩を入れる。
特に外国語を聞かないといけない場合は、90分でも連続はきつい(だろうな)と感じる。
理論から入る研修は、特別な場合を除き本書では推奨されていない。理論から入らないことのメリットは「知識レベルがバラバラの際に、底上げすることができる」「研修全体の時間短縮になる」とある。p128
ビジネスでの研修と語学教育の研修ではまた異なるかもしれないけど、確かにいろいろ体験したりした後で、実はこういう理論に収斂される、となった方がまとまり感は良いしかっこいいというのはある。
しかし体験の意義づけをするときに軽く理論に触れた方がやりやすいという側面もある。
脳を活性化させ学習効果を高める方法として、
①体を動かす
②脳を刺激する
③飲み物・食べ物の活用
④場所を変える
が挙げられている。
そういえば笈川先生の研修なんかでも歩き回って話したりしてたなあ、と思い出す。
第4章 講師・インストラクターの基本スキル
講師の7つ道具が紹介されている。
・リモートマウス
・ピンマイク
・スクリーンに表示できるタイマー
・音楽
・エナジーチャイム
・フリップチャート
・カラフルで太い水性ペン
エナジーチャイムは知らなかったけど、調べてみてちょっと使ってみたいなと思いました。
そんなに高いものでもないので単音のを一つ購入してみようかな。
「研修が終わるまでには参加者全員とアイコンタクトをするようにしましょう」p177
単純で基本的なことだけど私はあんまりできてないなと思った。意識してアイコンタクトを参加者と取るようにしたいですね。
「質問を理解し、答えを考え、発言としてまとめるまでのプロセスに、脳は「12秒間」を要します」p183
投げかけても反応がないとちょっと不安になってベラベラしゃべってしまいがちですが、そこは待たねば。
第5章 学習環境を作り出す
「静かで反応がない=つまらない」というわけではない(p251)
ほんとこれはそう思います。日本語の授業でも同じ。盛り上がるクラスをよく見ると、にぎやかな数人が雰囲気を作っているだけのことが多い。
しかし反応がないとうまく進められないことはある。その場合・・・
・講師がニュートラルであり続ける
・一人で考える時間を十分にとる
・簡単な方法で意思表示してもらう
などがあるとのこと。p252-253
第6章 研修を効率的に運営する
脳はマルチタスクができない、ということで研修成果を下げるような講師の振る舞い(や準備)についての言及がある。
脳のメカニズムを意識した研修運営のコツp262
・スライドはシンプルで最低限の情報だけ載せる
・読まなくてもいいものは見せない
・見る必要がない時はスライドをブラックアウトさせる
・ノートをとったり読んだり考えたりしている時は講師は沈黙を守る
「スライドはシンプルに」はいつも心がけるが、参加者が外国語で講義を受ける場合(私の場合はそれがほとんど)なんかは、仮に口頭で伝えるにしても文字情報があった方がいいのでは?と思ってしまい、結局中途半端な「シンプルさ」になっているような感じがする。
それに関連する話で言うと、参加者の母語じゃない言語で話す時は、スライドのどの部分を話しているのかはしっかりとわかるようにした方がいいと思う。
そういうことで、アニメーションを使ったり、落書きできるアプリなんかを使ったりしている。
質問への対応
・講師にチャレンジするような質問→不安や異なる見解を聞いてもらいたいだけの場合もある→無理に反論・説得しようとしない。
・「それは良い質問ですね」は言わない→良い質問をしなければならないとハードルを上げてしまう→どんな質問を受けても「ありがとうございます」から(p283)
第7章 社内講師を任されたら
第8章 研修の効果測定とPDCA
ここら辺は特に言及しません。
まとめ
全般的に「講師」として必要なことがコンパクトにまとめられている本でした。あっと驚くような話はありませんが、基本的な事項がうまくまとまっているような気がします。
最後に自分への覚え書きとして、次の研修で気をつけたいことを書いておきます。
・参加者全員とアイコンタクトをする
・反応がなくても待つ
以上です。
過去のXリーディングの記録
🔳『はじめてみませんか リレー作文』
🔳『Can-doで教える 課題遂行型の日本語教育』
🔳『言語はどのように学ばれるか』
🔳『協働が拓く多様な実践』
🔳『AI時代の冒険家メソッド』
🔳「教師のためのChatGPTガイド」
🔳『日本語教師の専門性を考える』
🔳『学習者を支援する日本語指導法I 音声 語彙 読解 聴解』
🔳『私たちはどう学んでいるのか』