選択問題の錯乱肢について(研修での質問に対する回答)

投稿者: | 2024年11月22日

以下、私が研修時に受けて、狼狽した(笑)質問についての回答を掲載します。

11月20日の授業での質問について

選択問題の正答にならない選択肢のことを「錯乱肢(さくらんし/distractor)」と言います(研修の時はこの言葉が思い出せませんでした)。ご質問は「読解問題の錯乱肢を作るのが難しい、どう作ればいいか」という話だったと思います。

その後私もいろいろ調べてみましたが、「こうすれば良い錯乱肢が作れる」という具体的な方法はなかなかないようです。

いくつかの論文や本を参考にした結果、

・本文の内容と関連づける
・もっともらしさを持たせる
・生徒の誤解を誘導する
・選択肢の長さを揃える
・似た言葉や表現を利用する
・選択肢の文法と構造を統一する
・非選択肢を明確にする

というのが共通としてあるみたいですが、まあ、これは当然と言えば当然のことかと思います。特に有意義なアドバイスにはなりませんね。

ただ、ある読解の本(西隈俊哉(2020)『2分で読解力ドリル』GAKKEN)を見直してみて良いなと思ったのが、「正しいものを全て選べ」という選択肢の作り方です(さきほどグループに投稿した問題のことです)。

▪️レビュー『2分で読解力ドリル』

試験などでは4つ選択肢があるのが普通です。それは3つだと「まぐれ当り」が頻発する、5つ以上になると錯乱肢を作る手間が増えるということに起因すると思っています。なので、選択肢を3つくらい用意して、「正しいものを全て選べ」という問題を出すのは問題を出す人にとってなかなか効率の良い方法なのではないかと思います(正解の可能性としてはA、B、C、AB、AC、BC、ABC、該当なしの8つあることになります)。

日々の練習(授業)で負荷を上げておくと、本番(試験)の時は楽になります(答えは一つしかないから)。それはドラゴンボールでトレーニングの時重りをつけていた孫悟空が、試合の時に重りを脱ぎ捨て体が軽くなったと実感するのと同じですね。

また、さきほどグループで投稿した問題については、以下のような結果が得られています。

特に赤で囲んだところを見てください。正解した人が全体の70%、残りはAやBといった誤答を選んでいます(実は私も間違えました笑)。でも同じ誤答でもBを選んだ人は5%しかいません。ということはBはAに比べて錯乱肢としてあまり機能しなかったとも言えます(しかしパーセンテージが高ければ必ずしも良いかというのもまた別の議論になります)。

つまり、こういうのを見れば、どの選択肢が錯乱肢として機能したか、機能していないかが一目でわかります。こういうデータをとりながら少しずつ錯乱肢の精度を高めていく(来年使う時は別の錯乱肢を考えるなど)というのが現実的で良い方法なのではないかと思います。

あまり答えにはなっていませんが、以上です。

選択問題の錯乱肢について(研修での質問に対する回答)」への2件のフィードバック

  1. コマザワ チヅル

    「選択肢を3つくらい用意して、『正しいものを全て選べ』という問題を出すのは問題を出す人にとってなかなか効率の良い方法なのではないか」は目からうろこでした。この情報、ありがとうございます。

    私は会話、作文を担当することが多く、会話でも作文でも遅刻を防ぐため、毎回の授業の最初の5分~10分くらいで復習試験を実施しています。会話では日本語能力試験のリスニング試験の中の即時応答と同じ形式で、三択問題を5問、学生数が多いため、採点と打ち込みの手間を省くため、「問卷星」というネット試験システムを利用し、選択問題にして試験を実施しています。会話と作文なので、読解問題というのはないんですが、読解問題でなくてもやはり「錯乱肢」をつくるのに時間がとられます。

    即時応答のほうでは、妙な「錯乱肢」を作ると、ボケとツッコミのような形になってしまい、吹き出す学習者がいて、それが「錯乱肢」であることがばれてしまうことがあります。それが楽しいと言ってくれる学習者もいたんですが(苦笑)、そんなことで苦労します。

    たとえば、以下のような問題の場合、B1の音声が流れた時点で、お笑いのボケ、つまり「脱文脈反応」のように感じるようで笑いがこぼれたりします。なので、B1を「錯乱肢」にする時はそんな点にも注意しています。

    例:A :あのう、急いでください。間に合いませんよ。
      B1:遅刻して申し訳ありません。
      B2:大丈夫ですよ。慌てないでください。
      B3:どういたしまして。

    「選択肢を3つくらい用意して、「正しいものを全て選べ」、こちらは、早速、作文のほうの試験でやってみます。

    返信
    1. shirogb250 投稿作成者

      いつもコメントありがとうございます!

      錯乱肢を作るのは本当に大変ですよね。
      1つ2つならなんとかそれらしいものを作れたりもしますが。
      しかも「吹き出す学習者がいて、それが「錯乱肢」であることがばれてしまうことがあります。」
      というなら更に大変ですね。
      ぜひ、「選択肢を3つくらい用意して、「正しいものを全て選べ」を試してみてください。
      最後まで気が抜けないテストになるはずです。

      錯乱肢に関する小話を一つ。
      ちょっと前に、公開されているJLPTの読解問題をやってみました。
      ただ、読解文は一切見ないという制限をつけて。
      つまり、問題そのものと選択肢のみを見て正解を当てるという試みです。

      その結果、なんと正答率は8割以上になりました。
      つまり私は問題を見て、その選択肢を吟味するだけで問題の答えが大体わかったということです。
      これは素晴らしい発見をした、と思って、
      研修で「選択肢をよく吟味すれば問題は解ける」という邪道な内容の講義をしようと思いました。

      しかし結果としてその講義は実現しませんでした。
      なぜかというと、JLPTの問題の後に高考の問題も同じようにやってみたんですが、
      その時は正答率が著しく下がってしまったのです。
      それで上記のような講義を中国の先生相手にやることは不可能と思い断念したというわけです。

      しかし、面白い結果だと思いませんか。
      おそらく、JLPTの問題は日本語母語話者が作っていると思いますが、
      私はその問題作成者の意図を割と深いレベルで読み取れた。
      一方でおそらく中国の大学の先生が作った問題では、
      その意図をうまく読み取ることができなかった。

      もちろん一度試験をやってみただけですから、
      それが普遍性があるとは言えませんが、
      ともかく試みとしては面白かったと思います。
      しかし、上の考察が正しければ、中国の人は中国の先生が作った問題意図や錯乱肢の意図を読み取れるかもしれませんね。

      ただ、あまり語学教育としては邪道な内容なので、
      あまり深追いするのもどうかなと思っています。

      返信

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