『日本語教育に役立つ心理学入門』を読んだ記録

投稿者: | 2025年4月24日

日本語教育に役立つ心理学入門』を読みました。

読んでみてわかったのですが、私が想像していたような本ではありませんでした。もっと学習者の心理や教師の心理に焦点を当てるものだと勝手に思っていたんですね。ただ、思ってたのとは違いますが、学びの多い本でしたので、ここで私の読書記録を残しておきたいと思います。

紹介文

日本語教育に心理学の視点から光を当てた一冊です。記憶や動機づけ、異文化適応など、第二言語習得に関わる心理学の理論をもとに、教育現場で役立つ知見がコンパクトにまとめられています。教師自身の気づきや授業改善のヒントが得られる実用的な内容です。幅広い話題を扱っており、大学の日本語教育系の授業でも教材として活用できる内容です。理論だけでなく実践へのつながりも示されているため、学びを深めるきっかけになる一冊です。

第1章 日本語教育と心理学の関わり

まさにタイトルの通り。オーディオリンガルアプローチは行動主義心理学から生まれているし、協働学習なんかは最近接発達領域(ZPD)などから派生しているということを説明しつつ、日本語教育と心理学が関わりの深い領域であることを述べている。

第2章 記憶

外国語使用の際は「ワーキングメモリの処理資源を効率よく配分するためには、低次の処理を自動化させることが鍵になる」(p30)

常に新しい学習事項があるのではなく、自動化のための授業とかを設定してもいいかもしれませんね。

自動化&流暢さを伸ばすための授業、私が受けたい。

第3章 単語の認知

必要なことがコンパクトに書かれている。
語彙の強化、語彙練習を授業に取り入れようとする人は理屈の整理になるだろう。
自分も「語彙を教える」という研修をやったけど、実はそこで伝えたことがちゃんと理屈にかなっていたとわかり、少しほっとしている笑
ちなみにその研修とはこれ。

▪️【スライドあり】「語彙を教える」

第4章 文章の理解

文章の理解には推論が不可欠。「橋渡し推論」と「精緻化推論」について述べられている。行間を読んだりしながら推論をおこなう読み方も練習したい。

書かれていない行間を読む読解練習みたいな本って出てるのかな?

そんな話をしていたら、ChatGPTのモデルの中に「O4-mini」【高度な推論】というのがあることに気づいた。このような活動ができるようです。なかなか興味深い。これ、読解の授業などでも使えそうですよね?

第5章 外国語習得に関係する認知能力

学習段階によって重要となる記憶の機能が異なる。

初期・・・情報を保持すること
中期以降・・・情報を処理しながら保持すること

が重要になるとのこと。(p80あたり)

第6章 言語適性と指導方法の適合

要は、学習者によって合う指導法は違うらしいという話。

個人的には「フォーカスオンフォーム」に基づく具体的な指導テクニックが表として一覧になっている部分が良かった(p91)。

第7章 ビリーフ

教師↔️学習者のビリーフが対立する場合、大きくは

①教師が学習者のビリーフに合わせる
②学習者のビリーフの変容を促す様なアクションをとる

しかない。結論はないがビリーフということを自覚すること、理解することが始めの一歩となる。

第8章 動機づけ

第二言語習得理論の文脈でよく言及される動機づけについての有名な研究が概観できる。

教師はできるだけ多くの動機づけのアイディアを持っておき、状況に応じて使い分けていく必要がある的なことが述べられている(p29)。

第9章 第二言語不安

Willingness to Communicate(WTC、話す意欲)という用語は恥ずかしながら知らなかった。

一般的には目標言語話者との接触機会が増えるほどに不安が少なくなり、WTCが高まる。そのため接触機会を増やす試みを教師はおこないたい。(p143あたり)

第10章 人の移動と異文化適応

異文化適応、文化相対主義、子供の第二言語習得など、幅広く触れられている。

第11章 文化的際と異文化コミュニケーション

プロクセミクス(近接学)という名前は知らなかった。異文化コミュニケーションで時々聞く話(距離の取り方)ではあるが。

「共話」という概念も面白いですね。確かに私も結構やっている。
A:昨日東京に・・・
B:行かれたんですね?
みたいな。

第12章 異文化摩擦を緩和する異文化トレーニング

相互理解のためのトレーニングDIE法が紹介されている。
ある出来事を二人の立場から記述(Description)・解釈(Interpretation)・評価(Evaluation)する方法。

個人でやるのは難しいとされているが、今なら生成AIなどとやってもよさそう。

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