西村博之(2020)『なまけもの時間術 管理社会を生き抜く無敵のセオリー23』学研プラス
2020年5月の「日本語教師ブッククラブ」の指定図書です。
実はこの本は私が推薦しました。と言っても読んだことがなかったので提案というのが正しいですかね。どこかのウェブサイトにこの本の宣伝記事として一部抜粋がされていて、結構おもしろそうだな~と思って提案してみました。
他の人はわかりませんが、私としては自分の働き方を見直す良いきっかけになったと思います。
嫌いなことからできるだけ逃げる
とりあえずイヤなことから逃げ続ければ、自動的にプラスが増えていくんじゃないかと思うのです。(KindleLocation1468)
本書の内容を一言で表現するならば上の引用部分だと思います。私としては100%この発言に賛成です。そして私もそのように考えて今までやってきました。
とは言え、著者の西村氏ほどに私が徹底できているかどうかといえばそれはどうでしょうか。私は基本的に勤め人ですから、やらなきゃいけない仕事の中にはやりたくない仕事もありますし、会わなければならない人の中には会いたくない人もいます。
できる範囲内で嫌なことを避けてきたということですかね。だから私にはあまり仕事上のストレスというのはありません(ただやはり授業のストレスはありますけどね)。
そもそもの価値観が異なる人と組むことになって、いろいろとエネルギーを使ってすり合わせるのは、お互いにかなり非効率ですよね。(KindleLocations303-304)
↑これも同じですね。勤め人にとっては価値観が似てる人とだけ仕事するというのは不可能だと思いますが、「嫌いな人とも仲良くしなければならない」というような伝統的な観念を破っておくだけでも、人付き合いの仕方は変わってくると思います。
会社の飲み会なども根っこは同じで、「このメンツだとあまり楽しくない」と、すでにわかっている場合は、自分の時間を確保するという大義名分で堂々と断ればいいと思いますよ。(KindleLocations1015-1017).
↑これもそうですけど、でも若い人には難しいですよね。私なんてガンガン断っちゃいますけどね。何回も断っているとそのうち誘われなくなります(笑)
そして、本書ではストレスをできるだけなくすという方法がいろいろ語られています。方法と言うか考え方ですね。そして結局↓の境地に立つわけですね。これが私の理想でもありますね。
忙しいことは忙しいのですが、基本的に好きなことばかりなので、ラクに楽しく暮らしているというのが今の僕です。 (KindleLocations222-223)
伝統的な価値観を否定してみる
最近の日本って、「努力は必ず報われる」とかいうパワーワードに縛られて、努力ではどうにもならん世界で、努力を強いられて苦しい思いをしている人が多い気がします。(KindleLocations766-768)
↑これは本当にそう思いますね。「努力」「耐える」「犠牲」みたいなことが美徳という伝統的な価値観です。著者も相当「努力」をして来ているはずなのですが、たぶんそれは西村氏にとっては一般に言う「努力」ではないんですね。何かを成し遂げるためのプロセスとでも言いましょうか。
ただ単に苦しい思いをしてひたすら耐えて時間を過ごすことに、意味はないですよね。(KindleLocations835-836)
ただ難しいのは見極めですよね。やりたいことをやるためには、やりたくないことを少しやらなければならないこともあります。綺麗なトイレで用を足すためにはトイレ掃除をしなければならない。
でも見返りが大きければそのための努力って努力じゃなくてプロセスになるんですよね。ただ意味なく苦しいことに耐えることに意義があるということはやらないほうがいいでしょう(老婆心のようなものから、特に若い人に対し言いたい)。
普通「努力」という言葉が出る時点で、「それはやりたくない」という意味が含まれています。努力というのはやりたくないことを必死でやるときに使う言葉です。それに象徴されるのが仕事や勉強にかける時間でしょう。
「仕事にかける時間は、あればあるほどいい」というのは、要するに、時間を確保するほどに成果が上がるということです。でも、しょせん時間には限りがあるわけだから、その中で得られる成果には限界があります。(KindleLocations662-664)
中学生になって初めての試験の時に、ある友達が「徹夜で勉強してきた」というのを聞いてびっくりしました。私なんて9時には寝てましたから。それで他の友達と私の点数には圧倒的な差がつくだろうと思ったらそうでもなかったですね。その時点で私は理解しました。勉強は時間じゃないと。仕事も同じでしょう。
四当五落 (4時間睡眠なら合格、5時間睡眠なら落ちる)という言葉がありますが、これは大嘘です。落ちる人は3時間睡眠でも落ちますし、受かる人は8時間寝ても受かります。
ただ単純な労働の中には時間を必要とするものもあります。それはしょうがないですがその間に色々考えてやればいいんですよね。
人間の脳は、頭を使わない単純作業をしているときのほうが、思考しやすいようにできています。 (KindleLocations208-209)
私は以前は論文を書いたりしていましたが、経験則としてうんうん唸っている時にはアイデアなどは出てきません。前提条件を頭に入れた後、考えたいことはジョギングする時などに考えてました。あと、誰だったかがプールに入って水の中で息を止めている時に考えるといいアイデアが出るということも言ってました。
その他
本書では遅刻に関して多くのページが書かれています。検索してみたら37回出てきました。「そもそも「遅刻は悪」なのか?」というタイトルの節もあります。その中で、
待ち合わせ場所を決める時点で、「遅刻しても罪悪感がない場所」「遅刻されても苦にならない場所」に設定しておけば、遅刻問題のほとんどは解決するんじゃないでしょうか。
という部分がありましたが、うーん、でもやっぱり遅刻は嫌だなあと思いました。ここは唯一賛同できなかった部分ですね。
意外に思われそうですが、僕は、メールなどの返信は早いほうなのです。なぜなら、即レスのほうがひと言ですむから。人間心理として、たとえば「はい、わかりました」のひと言でも、即レスだったら「すぐ返信してくれた」「ちゃんと読んでくれてる」なんて感じるものです。(KindleLocations580-583)
↑これは納得。無駄に返信が遅い人もいますよね。イエスかノーかだけ言ってくれればいいのにとかね。
自分しか知らない情報が世の中の役に立つとき、その人の価値は上がります。といっても、本当に「自分ひとりしか知らないこと」なんてないのですが、「自分だけが知っている風」を醸し出すことならできますよ。(KindleLocations444-446)
西村さんもそうなんだと思いました。私も時々やりますから(笑)。例えば「これからは◯◯の時代だというのは明らかなことですけど」とか、「最近は◯◯が来ています」とか適当なことを言っていると、その場がその発言を前提に動いたりするということです。
デフォルトは「謙虚」がいいとは思いますが、いざという時には「揺さぶる」というのも必要かな、と思いました。
まとめ
以上愚にもつかない感想を書いてきました。
もっと過激な人なのかなと思ったら、かなりの部分で共感できる部分がありました。有名な人ですが、あまりよく知らないので調べてみたら、1976年生まれなんですね。
私はそれよりちょっと下なんですけど、まあ同世代と言っていいでしょう。70年代後半生まれというのは、そこそこ大人になった時には不景気だったという年代です。就職氷河期とかそういう世代です。
バブル世代とゆとり世代・さとり世代の間の世代でしょうか。もちろん世代的なものだけではないと思いますが、この世代の人は割と西村氏の考えに賛同できる下地はあるのではないかと思います。