コミュニケーション言語決定理論は、私が過去の経験から2024年に導き出した社会言語学理論です。以前それについての記事も出しているんですが、ここでもう少しこの理論を簡潔にまとめておきたいと思い、書き直しています。↓は以前書いた記事です。
◾️二者間での使用言語の決められ方〜コミュニケーション言語決定理論について〜
定義
母語または主たる使用言語が異なる可能性がある初見の二者が接触する場面において、双方が使用可能であると相互に推定される共通言語の集合の中から、相互に推定された言語運用能力に基づき、二者間の最小能力値が最大となる言語がコミュニケーション言語として選択される。
解説
しかしこの定義だけではなんのこっちゃよくわからないと思うので、細かく分けて解説していきます。
①母語または主たる使用言語が異なる可能性がある初見の二者が接触する場面において、
まずこの理論の射程として明らかに同じ母語や使用言語が同じだと考えられる二者の接触は最初から排除しています。
それを排除した上で、二人の人が初めて接触し、会話を交わす場面のことです。つまり母語が異なるであろう人との接触場面ですね。互いの言語能力や使用傾向について、明確な知識や事前情報がないため、外見、国籍、使用言語、最初の発話などの限られた手がかりをもとに、相手の言語能力をその場で推定しながらコミュニケーションが開始される状況です。
②双方が使用可能であると相互に推定される共通言語の集合の中から、
これは、二者のどちらか一方のみが使用可能な言語を除外し、双方が「この言語なら相手も使えるだろう」と認識している言語のみを選択の対象とすることを意味します。
ここで重要なのは、実際の言語能力そのものではなく、あくまで相互に推定された使用可能性です。たとえば、一方が高度な能力を有していても、相手にその能力が伝わっていない場合、その言語は共通言語の集合には含まれません。
③ 相互に推定された言語運用能力に基づき
これは、言語選択が客観的な試験結果や自己申告によってではなく、発話の流暢さ、語彙の幅、応答速度、非言語的反応などからその場で形成される主観的・相互的な評価に基づいて行われることを示します。
したがって、本理論が扱う「言語運用能力」は、実能力ではなく、相互に推定された運用能力です。だって、会話するたびに「君はどの言語どのくらい話せるの?」みたいなことは聞けないですから笑
④ 二者間の最小能力値が最大となる言語が
これは、各共通言語について、二者それぞれの推定能力のうち低い方の値(最小能力値)に注目し、
その値が最も高くなる言語が選ばれることを意味します。
言い換えると、「最も上手な人に合わせる」のではなく、「より能力の低い側にとって、最も負担が少ない言語」が優先されるという原理ですね。
⑤ コミュニケーション言語として選択される
これは、明示的な合意や宣言によってではなく、最初の発話、言語の切り替え、応答の円滑さなどを通じて、相互作用の中で自然に確定していく言語を指します。
この選択は固定的なものではなく、相互理解の進展や能力推定の更新によって、途中で変更される可能性も含んでいます。
具体例
以下は他のセミナーで使った資料の使い回しですが、私の経験から、この理論を実際にあてはめてみたものです。
私とあるカンボジア人が初めて接触したという状況です。
私は自分の言語能力については当然既知です。以下のように評価しているとしましょう。当然「あるカンボジア人」の言語能力はわかりませんが、一言二言話せば大体推定できます。

そして推定された能力値が↓のようだったとします。

↑日本語はできない、英語は上手い。カンボジア人なので母語であるクメール語は当然流暢でしょう。
で、それぞれの能力値の最小値(下位値)を見ていくと以下のようになります。

↑クメール語も英語も、私は「あるカンボジア人」に劣ります。それぞれの下位値は3、5です。そうすると、この理論によりますと、「二者間の最小能力値が最大となる言語がコミュニケーション言語として選択される」わけですから、それは5である、英語が選択されるということになります。
おわりに
え?それだけ?当たり前じゃない?とお思いになった方もいるとは思いますが、はい、その通り当たり前のことです。
ただし、こういう理論というのは当たり前のことを汎用的に適用できる形でまとめておくことが大事なのです。世の中の社会理論や言語理論もそうだと思います。例えばグレイスの関連性理論とかも、超有名な理論ですが、実生活に当てはめてみると当然のことを言っているだけですからね。な〜んて。
