レビュー『日本語教師のための シャドーイング指導』

投稿者: | 2020年3月5日

迫田久美子・古本裕美編著(2019)『日本語教師のための シャドーイング指導』くろしお出版

シャドーイングについて知らない人はいないでしょう。しかし、なかなか授業で効果的に実践できている人もあまりいないのではないでしょうか。はい、私もその一人です。だから手にとってみました。結論から言いますと、

この本を読めばシャドーイングについて大体わかる!

といっても過言ではないかと思います。必要最低限のシャドーイングに関する理論から始まり、実際の授業での導入例、評価の仕方など詳細に書かれています。

この本の構成

第一部 導入編
第二部 実践編
第三部 座談会

となっており、第一部ではシャドーイングの効果やメカニズムなどについての理論的説明がなされており、第二部では実際の授業や活動への取り入れ方などが書かれています。第三部は広島の日本語学校で組織的にシャドーイングについて取り入れた際のあれこれについてです。

分量としては第二部が8割以上占めていますが、理論的な部分も抑えるところは抑えていますし、第三部の座談会もこれから実際に組織としてシャドーイングを取り入れたいと考えている人にとってはなかなか興味深い内容ではないかと思います。

いろいろ書くと長くなるので、私が特に興味を惹かれた2点についてご紹介します。

ビジュアルと音声を組み合わせたシャドーイング

これは初めて聞きましたが、良い練習になるのではないかと思いました。「VA(Visual-Auditory)シャドーイング法」と呼ぶそうです。

かんたんにいうと、画面に映し出される文字をすぐに声に出して読み上げる「ビジュアルシャドーイング」と通常のシャドーイングを交互に繰り返すというものです。

ビジュアルシャドーイングとは私も初めて聞きましたが、以下のようなものらしいです。

パソコン画面にモデル音声が発音される時間と同じ時間だけ、モデル音声のスクリプトが現れます。学習者はそれをできるだけ早く声に出して読み上げます。画面に出てきたスクリプトが次々と消え、新しいスクリプトが現れるので、学習者は即座にそれがどのような発音かを考え、声に出す必要があります。(p84)

これと、通常の音声シャドーイングを交互におこなうんですね。これをおこなうことによって、

「ビジュアル・シャドーイング」で自分で読むことができなかった文字の読み方を耳から聞こえてくる音声で確認することができます。(p84)

なるほど。

日本語の文字とその音の結びつきの強化につながり、最終的に聴解力の向上につながります。「読めるが、書けない」、すなわち「目標言語での読解は得意だけども、聴解は苦手だ」という学習者に効果的な方法として、現在このVAシャドーイング法の開発研究が進められています。(p84)

これはやってみたい!と思いましたが、なかなかすぐには始められませんよね。動画みたいなものでこれを作るのは簡単ですが、これを授業に取り入れようと思うとなかなか大変かもしれません。

ただ、これってあれですよね。例えば日本の映画をDVDなんかで見ると、日本語字幕をつけたりできます。最初は音声を消して、字幕だけを見て発声してみて、その後に音をつけて通常のシャドーイングをすればVAシャドーイングになるわけですよね。と、考えたら、実は知らず知らずのうちに学習者たちはやっていることなのかもしれません。

ただ、やはり初級となるとできることは限られますから、それ専用の教材的なものが出てくる必要がありますよね。

がんばってシャドーイング

しかし、これから紹介するアプリであればすぐにでも導入できます。私も知りませんでした。「がんばってシャドーイング」というスマホアプリです。

がんばってシャドーイング(アンドロイド)
がんばってシャドーイング(iOS)

これはもともと国際大学のプロジェクトとして作られたものみたいなんですが、シャドーイングをするための非常にすぐれたアプリだと思いました。大学の学生や教員はログインしてLMSとして使えるのですが、私のような一般人でもシャドーイングをするだけなら十分に使用可能です(もちろん一般の人は学習管理システムとしては使えないですが)。

このアプリの特徴としては、
レベル別にシャドーイングができる(初級48、中級14、上級8の教材がある)。
●スクリプトをつけたり消したりができる。
●自分の音声を録音して、モデル音声と比較して聴くことができる。
●音声はダウンロードするのでオフライン環境でも使うことができる。
●音声の波形が出るので、自分の発声の高低を目で確認することができる。

などでしょうか。とにかく無料で手に入れることができますので、みなさんもお試しください。なお、本の中には、このアプリを使ってどのように授業をおこなったかなどが書いていますので、これも役に立つと思います。

※最初の立ち上げのときに思った以上に時間がかかりエラーなのかな?と思いましたが、待っていたら正常に立ち上がりました。

まとめ

以上、簡単ではありますが、『日本語教師のためのシャドーイング指導』の一部をご紹介しました。

最近は、一冊読めばいろいろ幅広く概略がつかめる良質の本がたくさん出ていますね、前にご紹介した以下なんかも、読めば読解の授業の概略はつかめると豪語しておきました。

レビュー『日本語教師のための実践・読解指導』

こうやって先達が実践中心にまとめてくれるのは助かりますね。またおもしろい本を読んだらご紹介したいと思います!

あ、そういえば随分昔に私もシャドーイング関連の実践を報告したことがあります。内容忘れちゃいましたが、いい機会ですからリンクを貼っておきます。

シャドーイングを取り入れた自律学習授業の実践報告

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です