読書感想文『音読で外国語が話せるようになる科学』

投稿者: | 2021年10月13日

意識高い系の皆様、今日も横文字使ってのマウンティングに余念はないでしょうか?

さて、久しぶりに「#日本語教師ブッククラブ」に参加してきました。2021年10月の課題図書はこれ。門田修平(2020)『音読で外国語が話せるようになる科学』SBクリエイティブ

音読って、外国語学習においては伝統的な活動ですよね。しかし、しっかりと考えてきた人ってあんまりいないのではないでしょうか。

この本を読めば「音読」とは何か、どのようにすべきか、どのようにすれば効果があがるのかがよくわかります。この記事では、私が立てた以下の三つの質問の答えを本書からの引用・参照で答える形で記事を書いていきます。

1)音読って意味あるの?
2)音読ってどういう効果があるの?

3)音読ってどうやってやればいいの?

本書を読みますと、理論的なこととかについての詳しい説明がありますけど、ここではそれは省略します。この記事では、表層的な部分のみ書いていきます。

1)音読って意味あるの?

中学校や高校の英語の授業では音読をさせられたことと思います。

例えば、
・席順に英文を一文ずつ音読して、その部分を和訳する。
・先生が一文読んだら、その後をクラスみんなで音読する。
・クラスを半分に分けて会話文を役割ごとに音読する。

みたいなの。絶対やらされましたよね?こういうときの音読は批判が多いそうです。意味ないんじゃない?っていう。そして、「こういう音読が音読である」という印象があるので、

「音読=無意味」だという風潮が生まれ、音読の必要性を認めない教師や教育関係者がいる(p36)

とのことです。確かに音読っていう言葉を聞くと地味で旧時代的な感じがしますよね。

例えば「どうやって英語勉強してるの?」と質問して返ってきた答えが

「カフェでレッスン受けてるよ!」(キラッ)
「シャドーイングやってる」(シャキーン)

おお、なんかやってる感じするな~と思いますけど、

「ひたすら音読しとるよ」

だったら、「この人の英語力、推して知るべし」と思われてしまうかもしれません。

でも本書によりますと、近年では、

外国語、特に英語の学習において、音読の効果が再評価されつつあります。(p37)

とのことです。

もったいつけずに結論から先に申し上げますと、

ちゃんとしたやり方で音読をすれば外国語学習に効果がある。

ということですね。まあ当たり前と言えば当たり前で、シャドーイングにせよ、カフェでのレッスンにせよ、多読にせよ、何でも正しい方法でおこなえば意味があるものです。

2)音読ってどういう効果があるの?

音読というのは、文字を見てそれを声に出すという活動ですよね。もちろんその活動は脳で「音声の多重処理」を行っているからできることです。その脳の処理している項目を上げると、以下のようになるそうです(p39)。

①音声符号化
②文法・意味処理
➂発音
④聴覚フィードバック

つまり、そうとう複雑だということです。

そしてそのような過程をうまく実行するためにはそれなりの能力が必要とされますので、続けていれば、当然その実行のために必要な能力が涵養されることになります。

例えばそれは「腕立て伏せ」をやると「腕立て伏せ」をやるのに必要な筋肉が強化されるというのと同じですね(本書にその例はありませんが)。

で、「正しい」音読訓練の結果としてどのような「筋肉」がつくかといいますと…

・黙読時の読みの速度を引き上げる効果
・リスニング力向上効果
・語彙構文等の定着効果
・英語力全般に対する効果
・勉学開始前のレディネス形成効果(ここまでp82)
・スピーキング力の向上効果(p112)
・メタ認知効果(p125)

というような効果があるようです。かなりざっくり言いましたが。

でもですね、このような効果があるとはしても、やはり漫然とやっていてもだめなんですよね。

「筋トレ」の指南書でも、私は良く知りませんけど、「動いている筋肉を意識してください」みたいなことを言うじゃないですか。あれとおんなじで、正しいフォームで筋トレをするということと同時に、どこに意識を集中して音読をするか、って重要なんじゃないかと思います。特に教室活動で学習者にやってもらうときにはそういうことを言ってもいいかもしれませんね。

メタ認知効果の部分には以下のような記述があります。

どのプロセスに意識的に集中するかが重要なメタ認知的な活動になり、それによって学習者自身が体感できる効果がまったく変わってくる(p125)

本書の例では、例えば「発音」を意識して音読をすると、当然意識は自分の読み上げた音を聞くことに意識がいきます。そうするとそこで自分なりのモニター機能が働いて、発音の向上に効果が得られるかもしれない、ということが書かれています。

3)音読ってどうやってやればいいの?

というわけで、音読の効果も意識の持ち方次第でいろいろ変わってくるということを述べました。

ただ、その意識の持ち方も「正しいやり方」が前提になっています。筋トレだって「この筋肉を鍛えよう」と意識しても、まったく関係のない部分を動かしていれば鍛えられるわけがありません。

私の理解を述べますと、音読するべき文章は

自分事であること

が必須なのだ、と思います。例えば、中学校の英語の時間に

Tom can play the guitar.

とかそういう文が出てきますけど、「は?トムって誰?」「それで何?」ですよね。まあ主語があってcan という助動詞が出てきて、その後ろには動詞の原形が来て…みたいなのはこの文で習うことができますけど、それだと最初に紹介した和訳部分の指定や、コーラスリーディングでの「形式的な音読」になってしまうんですよね。

そこで提唱されているのが「なりきり音読」です。

さっきの「Tom」を「I」にしたとして、そしたら発話は自分のことになってきますよね。自分はギターが弾けないかもしれませんけど、その弾ける人物を想定して、劇中人物になったと仮定すれば、ある種のリアリティを以て、

I can play the guitar.

が出てくるし、それが意味をもってくるということです。で、その延長として、例えば寸劇とかミュージカルとかを利用する、ということも本書では述べられています。

そういう劇とかを利用すれば、その発話をする文脈や状況がはっきりしていますし、劇中の人物になりきることはできなくても、「こういうときはこういう言い方をするものなのだ」ということを身を以て感じることができますよね。

そして、もちろん本書ではそういう説明をもっと詳しくしています。外国語の習得には「インターアクション」が必要になるということや「転移適切処理」という考えを持ち出して説明をしています。

文脈のない Tom can paly the guitar. を音読していてもあまり意味はないということで、もう少し踏み込むと、

言いそうなこと、遭遇しそうな状況場面での音読が意味を持ってくる

ということですね。

そして最後に、音読の技術的な進め方についての言及もあるんですが、メモ程度に要点を抜き出してそ書いておきます(p111、p150 などから)。

・少しやさしめのレベルが良い
・モデル音声を利用する方法では、2秒以内の句や節単位で区切ってリピートをする
・リード&ルックをする(黙読→顔を上げて覚えたその句や節を言う)
・自動化のために何度も繰り返す
・録音によるフィードバックをする

まとめ

というわけで、門田修平(2020)『音読で外国語が話せるようになる科学』SBクリエイティブ について少しだけ内容をまとめてみました。

自分事の音読、文脈を意識した音読が必要ということですね。

本書では上記した「なりきり音読」が推奨されています。これは今だったら簡単にできますよね。たとえば私なんかはNetflixで英国のドラマをよく見ますけど、時々英語音声、英語字幕で見ることがあります。これをLanguage Reactor(以下リンク参照のこと)などの機能を使って視聴すれば、一文一文自動でセリフを止めることもできますし、何度でも音読の練習をすることができます。

Language Learning with Youtube BETAを教えてもらいました(使用方法のビデオ有)

あと思ったのは、外国語を勉強するということは何らかのインターアクション(リアルな会話に限らない)をすることを前提としているということですよね。

だから練習でもそれ(インターアクション)を想定したことをやらないと意味がないということ。

音読と言うと、そういったインターアクションとは縁遠い場所にありそうなものですけど、活動自体にインターアクションはなくとも、その延長線上にインターアクションが想定されていないといけない、ということです。

あ、筋トレの話が出たついでに余談ですが、私は以前、結構がんばってジョギングをしていました。マラソン完走したこともあります。で、その時読んだ本の中で覚えているのが、

走る筋肉は走ることでしか身につかない

ということでした。もちろん「走ること」と「外国語学習」を同列に扱うわけにはいきませんけど、ちょっとヒントになりそうな言葉ですね。

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