コピーイングって知ってる?

投稿者: | 2020年10月6日

みなさん、コピーイングって知っていますでしょうか?私は知っていますよ(笑)

どうやら日本の英語教育、英語学習の文脈では少し使われている言葉のようですが、日本語教育的にはあんまり馴染みがないですよね。実際、「コピーイング」で検索してみても、ひっかかるのは全部英語学習関連のものです。

まあ、読んで字のごとく、音声を「そっくりそのままコピーする」という勉強方法なんですけど、日本語教育でも応用可能ですし、またこの言葉は使いませんけど実際実践している人もいると思います。ちょっと一緒に見ていきましょう〜

2つの方法

検索してみた結果、コピーイングの作法には2種類あるようです。

一番目はこれ。Dr .D先生という英語教育の先生が紹介しているものです。

見てもらったら早いですけど、見ない人が大変だと思うのでかんたんに言いますと、「モデル音声を一文で止めて、それを繰り返す。最初は音のかたまりごとにわけて丁寧に発音し、それができるようになったら、自然な感じにつないでみる。それができたらストレスをおいてなめらかに発音してみる」というような方法だそうです。

これは私たちがリピーティングと言っているものでしょうか。ただ、もう少し音をコピーすることにウェイトをおくんでしょうね。

もう一つの方法は↓です。これも英語教育の天満嗣雄先生の押しているやり方です。セミナーなんかも積極的に開いているようです。

↑の動画では段階の踏み方については触れられていませんが、肝は「とにかく真似ること」です。この動画とは別に60分くらいの詳しい説明の音声ファイル(それが置いてあるページに飛びます)を聞いたのですが、メソッドとかなんとかについてはあまり語られず、「ただ音を同じに発する」ということを言っていました。

字幕やスクリプトを見てもいいが、最終的にはなにも見ずに映画やドラマの映像に合わせて、俳優と同じように話せるようになるのが目標である、と言っていました。息遣いや声のトーンなども含めるそうです。

お二人のやり方は、どちらも洗練されていて素晴らしいのですが、細かいこと言わずに「とにかく真似ることが目標である」という天満先生の方法に潔さを感じました。以下、この文章では天満先生の言うものを「コピーイング」とすることにします。

コピーイングの要諦

天満先生がおっしゃっていたのは、この練習は「アウトプットを意識したインプット練習」になるいうことです。真似るためには音をよく聞かねばならないということでしょうね。

また、「ストックフレーズ」を増やすということもおっしゃっていました。特に私もどきっとしたのですが、「英語で話す時に文の組み立てを考えて話すような人」には効果がある、とのことでした。まさに私がこれですね。

例えば、私がもっともナチュラルに言える英語は

Have you ever been to Japan?

とか

How long does it take?

とかですけど、そういうのを増やそうということですね。だいたい人間が言うことってそんなに変わらないですから。

あとは、「息遣いまでもを含めて真似る」ということで、これはその時の感情なんかも込みで覚えてしまおうということみたいです。どんな感情下でその言葉を発するか、ということも大事だということですね。

コンテンツとしては、もちろんドラマや映画みたいなものがいいとは思うんですが、その人のレベルに応じて何でも良いみたいです。天満先生は中学生のときからラジオ英会話でやっていたそうです。しかし、当たり前ですが生の教材はやはり初心者にはきついですね。まずは教材的なものでやると良さそうです。

シャドーイングとの違い

ここまで聞いて、

シャドーイングとどう違うの?

と思ったあなた、良い質問です。まあシャドーイングは聞こえてきた音を遅れて発するという点、コピーイングは俳優なり発話者と同じタイミングで発するという点で違うわけですけど、本質的な違いはどこにあるのでしょうか。

上で上げたお二人ともに共通することですけど、「シャドーイングは、かなりの上級者でないと難しい」と言っています。それはそうですね、初見、というか初聴で、スクリプトを見ずにシャドーイングをすることは、まあ音声の内容にもよりますけど相当難しいでしょう。

でも、実際シャドーイングを行う場合、例えば同時通訳者とかでもない限り、練習では段階を踏みますよね?まずはスクリプトを見て音声を聞かずに言ってみるとか、それができたら、音声に合わせてスクリプトを見ながらやってみるとか。

そういう段階をふむことを考えたらコピーイングもシャドーイングも変わらないんじゃないかな、と思うわけです。だってコピーイングってのは絶対初聴ではできないわけですよね?ドラマや映画などの俳優と声を合わせて、息遣いまで合わせてやるのであれば、絶対に練習が必要です。

ですから、段階を踏むことを前提としたシャドーイングとコピーイングの本質的な差を考えると、前者は「正しい音を一字一句再現すること」であり、後者は「話者に乗り移ること」だと考えられます。

シャドーイングでは「おはようございます」を正しい発音で、正しいイントネーションで言えればOKなわけですが、コピーイングではその元音声の言い方にどれだけ近接できるかが焦点となるわけです。

アニメのアフレコ練習

ただ、一字一句言えればOKというよりゲーム性が増す、という点がこのコピーイングの魅力ではないでしょうか。

たとえば、日本語の授業では「二人一組でこのダイヤログを覚えて前で発表してください」みたいな伝統的なやり方がありますよね。これは普通「音がちゃんと出せればOK」なんですよね。でも「この模範音声にできるだけ近づけてください」とすれば、難易度は上がりますし、もっと音をよく聴くようになるのではないでしょうか。

そして、例えば「どの組が一番元音声に近かったか」というようなコンテストもおこなうことができます。

で、思い出しました。おそらくコピーイングは日本語教育の現場では「アニメのアフレコ」みたいな枠組みで結構伝統的に行われていましたよね?アニメの1シーンを見せて、登場人物の声を消してそこに学習者がアフレコ的に声を当てるというやつです。

これはコピーイングの概念にとても近い。というかこれこそコピーイングですよね。ただ「アフレコ」はお遊びの要素が先に立った上で「コピーイング」をしています。それを反対にして、「コピーイング」をするという上で「遊びの要素を入れる」ようにしたら汎用的に日本語教育現場でも使えると思います。

コピーイングをやってみた

と、まあ口でいうだけでは簡単ですよね。実際に効果あるだろうか?と思い、自分でもやってみました。母語話者の私が日本語でやってもあんまり意味はないと思いますので、現在勉強中のクメール語でやってみました。

↓の動画はその練習過程を録画したものです。

やってみて思ったことは、

すごく練習になる!

ということです。コピーイングの要諦は「モデル音声と同じように話す」ということです。それが非常に難しい。だから何回も何回も練習せざるを得ないんです。

段階を踏むシャドーイングは、コピーイングよりだいぶ難易度が下がります。遅れてもいいわけですから、それほど速く発声しなくてもいいんですね。でもコピーイングは「同じ息遣いで同じリズムで」話すことが求められますので、かなり速く話さないといけないんですね。

つまり、コピーイングはシャドーイングより要求されるレベルが高いんですね。

だから効果があるのは当たり前なんですけど、後は要求されるレベルが高いものをどうやって日常的な授業や学習に組み込んでいくか、というあたりだと思います。

そのへんまではあんまり考えてないので、また後日。とりあえず、クメール語の練習にコピーイングを取り入れようと思っています。

※英語とかのメジャー言語でしたら、↓のようなものを使えば簡単にコピーイングの練習ができるかもしれませんね。


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