『プロジェクト学習の基本と手法』PBL基礎を知る②

投稿者: | 2024年2月27日

『プロジェクト学習の基本と手法』PBL基礎を知る①

からの続きです。

前回は、目標の設定という一番最初の段階について見てきました。目標が設定されたらその達成に向けてプロジェクトを進めて行くわけですけど、学習者たちに「ゴールのあり方」を明確に決めておく(伝えておく)必要があります(ゲームの説明をする時とかでも「どういう状態を目指すのか」が普通最初に示されますよね)。

私は漠然と、プレゼンテーションの実施が「ゴールのあり方」になるのかなと思ったんですが、どうもそうではないようです。

再構築=凝縮ポートフォリオを作ること

が「ゴールのあり方」になるようです。

「再構築=凝縮ポートフォリオを作る」?

まず用語の整理ですが、「再構築」とはPBLの作業のフェーズを指す言葉です。その「再構築」というフェーズで作る実際の成果物を「凝縮ポートフォリオ」と言うようです。

そして「凝縮ポートフォリオ」とは本書を引用すると、

そこに表現されたものだけで、課題解決の方法を説明し、読んだ人に「なるほど、そうすればいいのか、私もやってみよう」というように、動機づけとともに 具体的なふるまいや手順 などをわかりやすく伝えることのできる知的な表現物(p46)

と説明されており、具体的にはA3サイズの紙を横に使ったものとされています(下図参照)。

ポスター発表などでは大きい紙を縦に使っているのをよく見ますが、この場合は「冊子」的な位置づけなので、横に長く使うみたいです。

しかしポスター発表などとは違って、口頭で説明はしません。テキストやイラストだけで、自分たちの課題解決のための方策や目標達成のための行動などを論理的に説明するものになります(つまり作成者の手を離れても(補足がなくても)内容を説明するものとして独立して機能するものということですね)。

この再構築のフェーズで「凝縮ポートフォリオ」を作成することがPBLの作業としての最終目標になるようです。

プレゼンテーションの位置づけ

では、私がてっきり最終目標だと思っていた「プレゼンテーション」とこの「凝縮ポートフォリオ」は何が違うのでしょうか?

p46を見ますと、どちらも「伝える力」を身につけるためのものとした上で、

⚫️プレゼンテーションのフェーズ
課題解決の方法をわかりやすく「言葉で説明することができる」

⚫️再構築のフェーズ
課題解決の方法をわかりやすく「文章と図などで描いて説明できる」

としています。つまりどちらも「伝える力」を高めるものだとしつつ、前者は「話す力の高まり」、後者は「書く力の高まり」に寄与するものだということですね。

流れとしては、他人を相手に口頭(&スライドやポスター)でプレゼンして、そこで出てきた(ギャラリーなどからの)疑問や指摘などを取り込んで最終的に凝縮ポートフォリオを作成するというイメージでしょうか。

今、書いていて思ったんですが、よく「行政関連の人が行うプレゼンテーションで使われるスライドが非常に細かすぎる」と指摘されることありますよね。あれって、凝縮ポートフォリオをそのままプレゼンのスライドに使っているからではないでしょうか。

分けておこなうことで、「口頭発表と文や図による発表では伝え方が違うのだ」という訓練になるかもしれませんね。

成長確認

プレゼンや凝縮ポートフォリオはグループでの活動の成果物ですが、最終的に出すものの一つとして「成長報告書」というものもあるそうです。

PBL授業では、プレゼンをしたり凝縮ポートフォリオを作ったりするわけですが、それはすべて「学習者が成長する」ためです(p46)。ですから、良い成果物ができても学習者本人が成長しているということが実感できなければ意味がありません。

そういうことで、最後のフェーズでは「成長報告書」を提出するそうです。成長報告は以下の3つの書類から成り立ちます。

⚫️講義俯瞰シート
毎回の講義の内容とその日に獲得したものを記入する。

⚫️成長エントリー(シート)
PBL授業の中で成長したこと、気付きや視点の変化、身に付けたもの、変容、変化。一つ一つ箇条書きに。

⚫️成長報告書
総合的な報告。「自分に価値ある成長3」を書いたり、もっとも狙いとしていた力がどの程度伸びたのか、この授業で得た力をどのように現実に活かすか。

うーん、ちょっと字面だけ見るとよくわかりませんが、本の中には例示が出ていますのでそれを見ればよくわかるかも。気になる方は購入して確認してみてください。とにかくこの3つの報告書をホチキスなどで止めて学習者個人の最終的な「成長報告書」として提出することを求めるようです。

要は「授業を振り返ってみて、自分の成長した部分などをメタ認知できるような内容になっていればよい」のだと思います。まあそうなると必然的にこういう形になるのだとは思いますが、この書類の体裁は各現場でそれぞれ異なるかな、と思います。

まとめ

というわけで、今日の記事ではPBL授業のゴールがどんな形になるのかを見てきました。

目標を決めて、最後にプレゼン→凝縮ポートフォリオという流れですね。提出するものとしては、その他に「成長報告書」がありますが、これは成果物とはちょっと違いますよね。ただ、成長報告書に入る「講義俯瞰シート」や「成長エントリー(シート)」などはその授業ごとにメモったり、気づきがあるたびに記録するのが望ましいので、最初から提示(言及)しておく必要がありますね。

今日はこの辺までにしておきます。このあとは目標設定から最終的な成長報告書の提出までの流れがどのようになるのか、概要を見ていきたいと思います↓。

🔳『プロジェクト学習の基本と手法』PBL基礎を知る③完

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