『プロジェクト学習の基本と手法』PBL基礎を知る①

投稿者: | 2024年2月20日

PBL型の教師研修をやろうということになったんですが、PBLと言っても大体のイメージしかない。そこで手に取ったのがこの本。

鈴木敏恵(2013)『プロジェクト学習の基本と手法―課題解決力と論理的思考力が身につく』教育出版

10年以上前に出た本なのですが、わかりやすく非常にためになりましたので、その内容を少しご紹介したいと思います。内容を網羅するというよりは、私がPBLを研修をおこなうための予備的な勉強として、そのプロセスをメモしていく感じになると思います。

プロジェクト学習(PBL)とは?

本書のタイトルに入っている「プロジェクト学習」はつまり、「PBL(Project Based Learning)」のことです。ただ注意が必要なのは、同じPBLでも「Problem Based Learning (=問題基盤型学習)」というものもあるとのこと。

混同しないように日本語で書きますが、「プロジェクト学習」と「問題基盤型学習」は似ているようでちょっと違います。

⚫️問題基盤型学習
問題の解決に向かう学習。問題のない状態になればOK。

⚫️プロジェクト学習
問題を解決することが目的ではなく、創造的な成果をねらいとするもの。ビジョンを実現し「夢や希望のある未来」を目指すもの。

要はプロジェクト学習の方が一歩進んでいる感じです。日本語教育の現場での例を考えてみましょう。

例えば、「授業中に学生が寝て困る」という状況があるとします。

⚫️問題基盤学習
授業中に学生が寝ないような方策を編み出せばOK

⚫️プロジェクト学習
学習が目を輝かせて積極的に授業に参加するようになるような授業プランの提案ができたらOK

みたいな感じでしょうかね。

とにかく本書(及びこの記事)で扱うのはプロジェクト学習の方のPBLですね。

目標の設定

というわけで、PBLでは問題を解決するだけにとどまらず、さらに高邁なビジョンを実現するために活動していくことになるわけですが、そこで大事なのは目標の設定です。目標が正しく設定されていれば、それに向かって活動していくことができますが、そこがあやふやだと、あれ?何やってるんだっけ?ということにもなりかねません。

本書でもこのあたりは詳しく説明されているんですが、「目標」「目的」「題材」「テーマ」「課題」「ビジョン」「願い」などの似たような用語が出てきて、私もこんがらがってしまいました。「目標」と「目的」何が違うんだっけ?「題材」と「テーマ」の違いは?みたいな。

何度も読み返してみるとあらかた概念的なものはわかるんですが、用語集のようにまとめられているわけではありません。そこで、多分著者の方や有識者の方には怒られるかもしれませんけど、PBLの目標を決める際に必要となる、私が超簡略化した用語の定義を以下にしておきます。

⚫️題材
このPBLで取り扱う大まかな範囲のこと。

⚫️課題
決められた題材の中で解決すべきこと、解決していきたいこと。

⚫️目標
このPBLを通して実現したいこと。

具体化してみましょう。

⚫️題材
日本語教育

⚫️課題
作文の効果的な添削方法がわからない

⚫️目標
汎用性のある作文添削ガイドブックを作る!

そして「目標」=「汎用性のある作文添削ガイドブックを作る!」ための活動が始まっていくのです(ただの例ですよ)。

題材から目標までのイメージ

まず題材を学習者に提示します。題材で問題になりそうなのはその範囲です。「題材は日本語教育ですよ」と言っても上記した「作文の添削」のような授業活動に関わることもあれば、「同僚教員との連携」みたいなこともあるし、「今後の身の振り方」みたいな実際の教室活動とは関わりのないことも含まれます。ひいては「家事と仕事の両立」や「時間管理」までも「日本語教育」に含まれると言えば含まれる。

PBLを行う場合は、この「題材」の範囲をある程度決めておかないといけないでしょうね(もちろん研修のあり方によっては何でもありでもいいでしょう)。

次に「課題」ですが、その「題材」の範囲の中で「何が問題になっているのか」「何を解決したいと思っているのか」を考えていく形になるでしょう。

そして、その「課題」をどのように解決すべきかというのが「目標」につながっていきます。本書では「「課題」を「目標」に昇華させる(p42)」という表現が使われています。また「「課題発見」と「目標設定」でワンセット(p42)」と言われていますし、この「課題」と「目標」は裏表の関係ですね。

課題というのは、どんな分野でも比較的挙げやすいものです。各グループで、決まった「題材」の中での課題を列挙していく。あらかた課題が出尽くしたところで、教師は効果的なコーチングを行いながら目標設定をアシストしていくというのが基本の形になりそうです。

ちなみに、本書では他にも「テーマ」「願い」「目的」などという用語?も出てきますが、もしかしたら不用意にこのような単語は使わない方が良いかもと思いました。もちろん本書では適切に使われているのですが、私のようなにわかPBL学徒だと、ある程度用語を限定して使った方が混乱がないかなと。

まとめ

というわけでとりあえず目標設定まで。

どんな目標を設定するかによって、今後の学習のあり方が決まってきますので、最も大事な部分と言えますよね。題材の提示から課題を挙げてもらって、そこからうまく目標を設定できるようにこのへんの段取りはしっかりと決めておいた方がよさそうですね。

続きはこちら↓

🔳『プロジェクト学習の基本と手法』PBL基礎を知る②

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です