うちは私が日本語母語話者で、妻が韓国語母語話者です。そして二人の男の子がいます。
現在の状況を説明しますと、
・小6と小2
・日本人学校に通っている。
・それぞれ誕生から小3、年中組までは韓国で過ごした(ローカルの学校、保育園)。
・両親(私と妻)は緩やかな「一人一言語」を最初から実践している。
という感じなんですが、私のざっくりした能力の印象では、
・二人とも口頭のコミュニケーションは均衡バイリンガル的
・長男は読み書きも両言語年齢相当(漢字の書き取りは少しレベルが下がる)
・次男は韓国語の「書き」能力と「語彙力」が劣る
という感じです。
背景についてもっと詳しく知りたい方は以下のリンクを。
■間違いだらけのバイリンガル教育①
■間違いだらけのバイリンガル教育②
■バイリンガル子育ては気楽に
やはり、学習言語(学校でメインで使う言語)が強くなりますね。次男の場合は韓国で学校教育を受けずに日本人学校に入っていますので、口頭コミュニケーションでは韓国語ネイティブですが、「書き」は1年ほど他の子に比べると遅れているのではないかという印象です。
その状況を放っておいてもいいんですけど、習い事もそんなにやっていませんし、時間があるので、ちょっくら均衡バイリンガルを目指していくつかの学習を課すようにしています。その実践の一部をご紹介します。
※現在は日本人学校に通っていますので、基本的には韓国語の方を伸ばすことを考えています。
3行日記
2人とも読むのは普通にできるんですよね。韓国語はハングルだけですから、読むだけならスラスラと読むことができます。まあ読書が嫌いなので、読ませるのも一苦労ですが、それなりに時間を作って韓国語の本を読むように仕向けています。
で、今回私が提案するのは本読みではなくて、3行日記です。
かんたんなことです。
両言語で同じ内容の日記を毎日書く
それだけです。3行というのはキャッチフレーズであって、2行でも4行でもかまいません。とにかく短くていいから毎日何か書きなさい、ということを実践しています。
実際に息子らが書いたものをいくつかをご紹介します。
長男のもの




次男のもの




感想①
両言語で日記を書くわけですが、私は「どちらの言語で書き始めてもよろしい」と言っています。で、結果として、
長男はほぼすべての日記を韓国語から書き始めている
次男は最初に書く言語が半々になっている
ということがわかります。
この事実からはいろいろなことが言えるとは思いますが、普通、先に書き始めるのは楽な言語、強い言語の方でしょう。
もし私が外国語の勉強をするとして、日本語と例えば英語で毎日日記を書くとしたら、おそらくかなりの確率で日本語から書き始めると思います。そしてそれを英語に翻訳する形になるでしょう。
私はそれで良いと思っています。
というのは、
強い言語が伸びて、それを弱い言語の方でどう言うのかを毎日考えていたら、必然的に弱い言語も伸びるのではないか。
と考えたからです。
また、例えば次男の例ですが、「楽しみだ」という日本語は、韓国語にするとすると「期待される(기대된다)」という表現になることが一般的です。で、うちの次男はどちらの言葉も口頭では使いこなしていましたが、「楽しみだ」を韓国語に直してみよ、というと「わからない」んですよね。つまり、次男の中に「これは韓国語(日本語)で言うとどういう表現になるだろうか」という思考そのものがなかったのです。
でも、この活動を続けるにあたって、そういう視点が芽生えつつあるようなんですよね。それはいいことなんじゃないかなと思っています。
感想②
しかし、問題もあります。小6と小2ですけど、上の例を見ると「書いている内容は小6も小2もあまり変わらないんじゃない?」という印象を受けないでしょうか。私はいつもそう思っています(笑)。
だから小6の長男には「もっと小6らしいこととか書いたら?別に日記じゃなくても考えたことを書くのでもいいんだから」と言っているのですが、なかなかそれが難しいようなのです。それは日本語や韓国語のレベルというよりは、「文を書く習慣」に依るものみたいです。どうしても小学生で文を書く習慣がなければ「今日は●●をしました。そして●●をしました。おもしろかったです」になってしまいますよね。
でもそれだと、語彙力や言い回し力の発展にはつながらないような気がするんですよね。
そこで、小6の長男には「日記」というのではなく、テーマを与えて書かせようかと思っています。これは今朝伝えたんですが、
その日学校で習ったことを書く
ということに路線変更しました。
私のイメージでは、
今日は算数の時間に円の面積を求める方法を習った。半径×半径×円周率。どうしてそれで面積が求められるかも教えてもらったが、忘れてしまった。
程度のことを想定しています。
そういう「今日習ったこと」というような具体的なテーマを与えた方が書きやすいのは間違いないと思います。そしてこのテーマは劣勢言語での学習用語の言い回しを考えるのにもとても良いのではないかと思います。だって普通に生活していたら学校以外で「円周率」とか「半径」とか小6で話さないですからね。実際息子に「半径って韓国語でなんていうの?」と聞かれました。
まとめ
というわけで、私が最近おこなっているなんちゃってバイリンガル教育の活動の一端である「3行日記」についてご紹介しました。
・短いので毎日続けられる。
・書くことによって気づきが与えられる(読めるけど書けないということに気づく)。
・強い言語が弱い言語を引っ張っていくことが期待できる。
・文を書くという習慣を身につけることができる(バイリンガル教育とは関係なく)。
という利点があると思います。
ただ、上でも述べましたが、小6・中学生くらいになると「●●しました。楽しかったです」式の日記は両言語で書いてもあまり意味がない(レベルによっては意味がある)と思います。ですから言語と知性のレベルに応じたテーマを与える必要があると考えている、ということです。
また続けてみて、どういう感じになったかご紹介したいと思います。
バイリンガル教育関連の過去の記事はこちら
■バイリンガル子育ては気楽に
■レビュー『バイリンガルの世界へようこそ』上
■レビュー『バイリンガルの世界へようこそ』下
■【レビュー】『バイリンガル教育の方法』
■間違いだらけのバイリンガル教育①
■間違いだらけのバイリンガル教育②
■レビュー『親と子をつなぐ継承語教育』
■日本語教師と子育て
■バイリンガル教育のケーススタディ~Hapa 英会話のJUN先生の場合~