使用言語による対人関係優位性の変化

投稿者: | 2022年12月26日

最近おもしろい体験をしました。まずは話として聞いてください。

私は現在中国にいるのですが、ある処理をしなければならず、ある場所へ赴きました。もちろんオール中国語でどうにかミッションを達成しないといけません。私の中国語はまだA1レベルですが、まあそんなに複雑なことじゃないので、筆談やジェスチャーなどを駆使すればどうにかなるだろうと思って行ってきました。

で、その場所に到着。いつものように?窓口をたらい回しにされて、やっと目的の窓口につきました。係員との会話が始まります。

中国語でまくしたてられます。よくわかりません。係員もジェスチャーなどを交えて私とコミュニケーションをとろうとしてきますが、やはりうんざりしたような様子です。こちらはそんなのは想定の範囲内ですので、ニコニコ笑顔を作りどうにか自分の成し遂げたいことの方向に進めます。係員は「やっかいな人に当たってしまったな」と思っていることでしょう。ただでさえ列に並んでいる人も多いのに。

で、そこでパスポートを要求されて、私は私の家族分のパスポートを提示しました。すると、相手がこう言いました。「もしかして韓国語できますか?(韓国語で)」。

私の妻は韓国のパスポートなので、それを見て一か八か私に聞いてきたのでしょう。私は渡哲也、じゃなくて渡りに船と思い、「はいはい、韓国語できます!」と答えました。相手が韓国語を話してくれるのであれば話は早い(私は普通にしゃべれますので)。

しかし、蓋を開けてみると、その人そんなに韓国語が流暢というわけでもないんですね。ただ、私の中国語よりは遥かにうまいので、必要なコミュニケーションをとることに問題はなし。思ったより楽にミッションコンプリートできました。

立場の逆転

私が言いたいのは「韓国語できる人でラッキーだった」という話ではありません。

おもしろいのは、同一人物と同一イシューで会話をしているのに言語をスイッチすることによって瞬時に二人の関係の優位性が逆転したということです。

最初、係員はかなり優位な立場にいます。「面倒な外国人に当たってしまったわ、くわばらくわばら」という態度です。私は「まあまあそう言わずに、処理してくださいな」とかなり下手に出ていました。そりゃそうです。どんなにうんざりされても目的を達成することが大事ですから。

しかし、二人の間の言語が韓国語になった瞬間、その優位性は逆転します。

相手はそれほど流暢ではないので、私も相手の韓国語を何度か聞き返したりしました。またこちらの言うことを理解してくれないので言い方を変えて言ったり、中国語も交えたりしました。相手は私に恐縮している感じでした。最後は「いや〜あんたが韓国語できて助かったわ〜サンクス!」みたいな明らかな上から目線でその場を後にしました(笑)。

教師は常に優位な立場にいる

そういうことから考えたのが、私たち日本語教師のあり方です。

媒介語を使わずに日本語で授業をし、かつ授業外のコミュニケーションも日本語で行う場合、明らかに優位性はネイティブ教師の側にあります。

大体のケースにおいて立場上教師は強いですし、その上言語能力による優位性もあるんですから鬼に金棒です(使い方違うか)。

ですからその場合はやっぱそれ(二重の優位性)を大分意識しないといけないなと思いました。

最近、大学の先生がゼミに入りたい学生に対して、その学生の性別を理由に断るという場面での録音ファイルが流出していましたが、明らかに先生側の話し方は優位者のそれでした。上から目線。相手の学生は留学生ではありませんが、それでもそのそれくらいの優位性はあるのです。

あと、ちょっと前に日本語学校の事務の人と何やら保険を申請したい外国人留学生の人との会話も流出?していましたが、それも日本語学校の事務の人の話し方は高圧的で聞いていて嫌になりました。留学生は割と日本語が上手でしたけど、それでも話す側(事務の人)にもうちょっと配慮があっても良いのではないかと思いました(その主張の妥当性はおいておきます)。

まとめ

やっぱね、優位にある人は高圧的になったらいけないんですよね。まあそんなの常識ですけど、我々は言語の優位性を保っている場合が多いので、特に気をつけておかないといけないなと思いました。

あと、授業では日本語で話すけど、それ以外ではその学習者の母語(や得意な言語)で話すというケースも多いと思います。その場合はうまくバランスがとれていいかもしれませんね。

カンボジアで働いていた頃、中級くらいの学生とは日本語で話しましたけど、初級くらいだと普通に英語で質問とかしてきます。それで私も冷や汗をかいて対応したりしていましたが、今考えるとそういうバランスの取り方(というか自然な取られ方)もあるんだなと思います。

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