対話型読み聞かせの勧め〜バイリンガル育児の文脈において

投稿者: | 2022年12月22日

先日バイリンガル教育に関するセミナーの動画を視聴しました。残念ながらその動画はもう非公開になってしまったので見ていただくことはできないのですが、「ダグラス昌子先生がバイリンガル教育のいろいろについて教えてくれる」ものでした。

内容はいろいろありましたが、印象的だったのは「対話型読み聞かせ」のデモンストレーションでした。実際に(仕込んでおいた?)参加者のお子さんを相手に、先生が「対話型読み聞かせ」とはどういうものかを見せてくれました。大変勉強になりました。

対話型読み聞かせとは?

「対話型読み聞かせ」とは「対話をしながら本の読み聞かせをおこなう」ものです・・・って全然説明になっていませんが、内容を読みながら要所要所で、

・どうしてそうしたと思う?
・これからどうなると思う?
・この気持ちわかる?
・これってどんなものか知ってる?

みたいな投げかけを子供達にしていくということみたいです。なんかこうやって字面で書くと「別に普通じゃない?」と思うかもしれませんが、実際自分でやってみて今まで自分がやっていた読み聞かせとは違うと気づきました。

もちろんこれまでもところどころ会話をしながら読んでいたとは思うんですが、「積極的に対話をしよう」という気持ちはなかった気がします。だから子供が話をしても「今読んでるからちょっと待って」みたいに言うこともあったような気がするんですね。

あと、バイリンガル教育の文脈での読み聞かせとなると、言語の形式面に注目させる場合も多々あることかと思います。例えば私の場合ですと、

「これ韓国語に直してみて」
「この漢字読める?」

と投げかけることもしばしばあったような気がします。いや、もちろんそれもアリだとは思うんですが、ダグラス先生もおっしゃっているように、

まずは内容中心

ということですね。これは多読とかでも言われますね。形式に注目させることは悪くはないが、それよりも優先されるのは内容であり「本の内容を理解し楽しむこと」でしょう。

読解ストラテジーの強化

セミナーの内容は詳しく覚えていないのですが、

「成人が外国語を習う場合は、すでに母語習得の過程で習得した読解ストラテジーを用いるが、子供の場合はそれが身についていない。読み聞かせを通して読解ストラテジーを身につけさせると言うのも対話型読み聞かせのポイントである」

ということを述べられていたと思います(間違っていたらすまん)。

例えばこういうことです。

「これからどうなると思う?」

このような投げかけは「予測ストラテジー」の発動につながります。またもう少し高度になってくると、「ところが」で話を切って、「さて、この後はどうなるでしょう?」みたいなのもありかもしれません。物語だと「その時です」みたいな子供も大きなポイントになりますよね。

別に予想が外れても構わないんですよ。とにかくそういう「どうなると思う?」的な投げかけをすることによって「予測しながら読む」というのが身についていくでしょう。

「どこまで話したっけ?」「なんでそうなったんだっけ?」

このような投げかけは「要約力」につながるかもしれません。後述しますが、私の場合小3の次男を相手に対話型読み聞かせをしているんですが、比較的長い読みものを読んでいるのでいつも途中からになるんですね。で、読み聞かせを始める前にこういう質問をするんですが、「情報を整理しながら読む」というストラテジーにつながるかもしれません。

日本語教師にとっては簡単

とにかく、ストラテジーという難しい言葉を使わなくても「投げかけ」をすることによって子供からのアウトプットも増えますし、何かしら考えながら読むようになるということは明らかでしょう。

ここまで読んで「私も対話型読み聞かせをやってみよう!」と思った方は結構いると思いますが、一体どんな投げかけをしたらいいのでしょうか?

・・・あんまり深くかんがえる必要はないと思います。普段我々が授業でやっているようにやればいいだけです!

そうそう、我々日本語教師の仕事って「いかに学習者の口を割らせるか」みたいなところがあるじゃないですか。それを対話的読み聞かせでもやればいいだけです。もちろん「ボランティアで人様のお子様に読み聞かせをする」みたいな場合は前もってその本を予習しておいて、どういう質問をするかを仕込んでおくのも必要かと思いますが、自分の子供への読み聞かせは長期戦です。そんな予習とかしてたら身が持ちません。

本を開いて読み進めながら、物語のスピード感を損なわない程度にテキトーな投げかけをしていけばよいのですよ。その中で、子供が生き生きと反応してくれるような質問があれば、脳裏に書き留めておくと。それで構わないでしょう(多分)。

読み聞かせは何歳でも

上で「小3の次男に読み聞かせをしている」と言いましたが、「え?小3に?」と思った方もいることでしょう。実はちょっと前の私、ていうかこのセミナーを聞く前の私もそうでした。

もう面倒くさくてしょうがないんですよね。子供が幼稚園くらいの時はよく読んでやりましたが、小3くらいになると自分で本が読めますので「本読め〜」と放置していたわけです。しかし、当然ながら子供は活字だけの本など読みません(笑)

セミナーでは「小学生でも、中学生でも読み聞かせは有用であるという意見を持つ人がいる」というのが紹介され、かつダグラス昌子先生もその考えを支持されているということでしたので、私もそれに倣うことにしました。

就寝前の時間に一緒にベッドに入って対話型読み聞かせをします。5日ほどかかって「十五少年漂流記」を読み終えました。子供も喜んでおり、その時間を楽しみにしているようでした。また、読み聞かせをしていると中学生の長男もやってきたのですが、中学生くらいになるとまた違う視点からの疑問などが出てきて、読み聞かせが活性化されたような気がします。

今回読んだ「十五少年漂流記」は子供向けに編集されたもので、挿絵も結構あってそれも良かったと思います。小3くらいだと、絵本でなくても良いと思いますが、要所要所で視覚的な刺激があると対話も進んで良いと思いました。

バイリンガル教育の文脈では

で、問題は「当該言語がよくわからない子供」の場合ですよね。

私の場合は長男でした。長男は私の読み聞かせやテキトー創作話が大好きで、幼少の頃は毎日のように催促されました。私はずっと日本語で話していましたが、やっぱ時々わからない言葉とかが出てくるわけですよね。

記憶に残っているのは「エルマーとりゅう」です。

確か幼稚園か小1くらいの時に読んでやったんですが、だいぶわからない言葉が出てくるんですよ。でもですね、内容がとってもおもしろいので「わかんないや」よりも「もっと内容をよく理解したい!」というのが先に立つんですね。それで「どういうこと?」「説明して」ということをよく言われました。

これは言語習得にとって非常によいことなのではないでしょうか。もうスポンジのように吸収していくわけですから。優勢な言語(うちの場合は韓国語)でなんと言うのかを教えたりしましたし、優勢な言語でも知らない単語などは日本語で説明したり例をあげたりしたことを覚えています。

あと、この本は韓国語版も買いました。両言語で読むことによって内容理解、言語学習はさらに進みますね。成人の言語学習でも「まずは字幕付きでみて内容理解に努める。その後もう一回見て言語の理解に努める」という方法はあり得ますからね。成人の場合は「一度見たものをもう一度見るのもなあ」ということもありますが、子供の場合は気に入ったものは「何度でも読んでくれ」と言いますし、ちょうど良いのではないのでしょうか。

まとめ

というわけで「対話型読み聞かせ」について少しだけ書かせてもらいました。私見が少なからず混じっていますので、必ずしも正統な意見であるとは言えないと思いますが、そんなに間違ったことも言っていないと思います。

さて、読み聞かせに関して一つ失敗例を挙げておきます。数ヶ月前のことですが、その時は中学生と小学生の二人の息子に対して「ヒルベルという子がいた」を読み聞かせました。

なぜ読み聞かせたかというと、この時は中国入国時の隔離期間で、放っておくと何もせずテレビやスマホばかり見ているからです。それでほぼ強制的に読み聞かせをしたんですが、おそらく私の「義務でやっている、しかたなくやっている」という気持ちが伝染したのでしょう、子供たちはこの本にまったく興味を示しませんでした。私もとにかく読み進めることだけが頭にありました。私も子供も「この時間が早く終わって欲しい」と思っていたんでしょうね。

ちなみにこの本は名作です。読み聞かせが失敗したのはこの本のせいではなく、私のアプローチのせいです。

やはり、読み聞かせのポイントは

楽しい・楽しむ

ということに尽きますね。

育児は長期戦なんで、必ずしも毎日気分良く読む聞かせができるかどうかはわかりませんが、「楽しくやらないと意味がない」と考えて臨むのと、「しかたなくやってる」と考えて臨むのでは、接し方が変わってきますよね。

まだ私も対話型読み聞かせを始めたばかりですので、頑張りたいと思います。

ちなみに今読んでいるのはこれ↓私は読んだことがありませんが、長男によると「名作」だそうです。

↓こんな記事もあります。

バイリンガル教育のための提案「3行日記」

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