カルチャーマップから考える日本語教育 その5 決断

投稿者: | 2020年6月30日

カルチャーマップの項目は8つあります。というわけで今回から後半戦に突入です!今回のテーマは、

決断
合意志向〜トップダウン式

決断における合意志向というと、みんなでああでもないこうでもないと議論をして決めるということですね。反対にトップダウン式というのは強力なリーダーや上層部なんかが「じゃあ、これでいくからよろピコ!」とか言って専制的に決める方式ですね。

一見すると合意志向の方が民主的でいいような感じがします。しかし、個人的な話をしますと、私は完全にトップダウン式を好んでいます。だって合意式ってやたら決定までのプロセスに時間と労力がかかるのですから。自分が決めることもありますし、他人が決めることもありますが、とにかく私は善は急げがモットーですから、仕事はスピーディーにこなしたいと思います。それでトップダウン式を支持しています。ではカルチャーマップの方はどうなっているでしょうか。

階層主義だが合意志向の日本

いや~また出ました。日本は一番左に位置しています。ことごとく極端な国ですね私たちの故国。同じアジアでも中国は反対の右側に位置しています。ということは、この指標は地理的な面よりも社会体制に大きく影響されるということでしょうかね。

日本の合意主義は結構年季が入っていると思います。古くは聖徳太子が「和をもって尊しとなす」と言っましたしね。伝統的に天皇制をとっていたにも関わらず、実は天皇の取り巻きの連中が意思決定をおこなっていたりもしました。第二次世界大戦でも欧州には強烈なリーダーシップを持つ個人の存在がありましたけど、日本は「その場の空気で色々なことが決まっていった」そうです。階層主義に傾いているが、決断は合意主義というなんとも理解しにくい構造になっています。

本書の中ではアメリカとドイツが例に出されています。

アメリカ人はドイツの組織が階層主義的だと考えている一方で、ドイツ人は意思決定へのアプローチから見てアメリカの組織が階層主義的だと考えている。ドイツの文化は意思決定のプロセスの一環として合意形成に重きを置いているが、アメリカでは、意思決定は主に個人に委ねられている。(p.137)

簡単に解説しますと、アメリカがトップダウン式を望むのは、「決断のスピードと個人主義」を重視するからだと著者は言います。そして決断はいつでも修正可能、という考えを持つそうです。

一方のドイツはアメリカに比べれば合意志向です。権力はCEO一人だけに与えられるわけではなく監督役会というのもあるし、最終的には執行役会が決定を行うそうです。全体で決めるわけですね。だから決断には時間がかかるが、一度決まれば方向の修正もなく、まっすぐにことを進められるそうです。

まあ、わかりますね。アメリカの企業、特にIT企業ですけど、強力なリーダーシップを持った経営者が何人も思い浮かびますね。一方ドイツにも世界的な企業はいくつもありますが、その経営者やアイコン的人物の名前が言えるでしょうか?私は言えません。日本では最近はアイコン的社長?みたいな人が目立つようになってきました。合意主義だけに、そういう強力のリーダーシップへの憧憬があるのかもしれません。

ただ、やはり全体で見ると日本は総力戦で戦うような印象がありますよね。本書でも「稟議書」「根回し」が驚くべき合意文化として紹介されています

トップダウン式への対応

この指標を日本語教育シーンに適用して考えてみるのがこの一連の記事の目的です。ただ、「決定」ということで言いますと、あまり授業場面とは関係がなさそうです。その決定はクラスでの学習活動を決定する、というのとはちょっとカテゴリーが異なりますからね。

ですから、今この問題を考えなければならないのは概して、

海外の組織で働く人

でしょう。つまり同僚や部下、上司が日本人でない場合です。そして、その国や文化の決定方式が意に沿う場合には特に問題がおきません。問題はその決定方式が自分に合わない場合です。そこを考えていきます。

この表のどこに位置するかはわかりませんが、韓国の場合は日本よりも遥かにトップダウン式です。突然の変更など、下々の状況を鑑みずに来るわ来るわ。大学のような比較的大きな組織でも、「鶴の一声」みたいなものがあります。先をあまり見据えていない決定なども多いような気がします。

最初は結構戸惑いましたね。「そんなの聞いてない」とか「当事者に聞かないで決めるか?」みたいなことがしょっちゅうありました。でもね、だんだんそれに抗っても仕方がないということに気づきました。もう身をまかせるしかないんですよ。テレサ・テンが時の流れに身をまかせたように。

組織の決定プロセスにごちゃごちゃ文句を言わず、変更や決定を粛々と受け入れる。これを続けているとある種の勘のようなものが涵養されます。なんかわかるようになるんですよ。「これはプランBも用意しておいたほうがいいな」とか、「これは変更がありそうだな」とかそういうことが。

逆に決定する立場になっても同じです。相手はそういうのに慣れているから、いちいちみんなで会議しよう、というよりぱっと「こうしましょう~」と言った方がついてくると思います。

合意志向への対応

一方今いるカンボジアの組織は、日本との関わりが強い組織なので非常に日本的、すなわち合意志向です。カンボジアについては他の組織を知らないので文化圏としてはどうなのかわかりません。でも、感じとしては、おそらく東南アジアは日本ほどではないとしても割と合意志向なのではないかと思います(違いますか?)。

そういう日本の合意志向的企業文化に慣れている人にとっては普通かもしれませんが、私はかなりやきもきします。早く決めて作業に取り掛かりたいからです。でも、それもトップダウン式もやきもきするのは同じですね。待つしかありません。

ただ合意志向の組織も意図的に決断を遅らせようとしているわけではありません。結果的に遅くなるだけですから、もし自分が決定を早めたいと思うのなら自分が動くしかありません。最近思うことは2点です。ちょっと細かいですが、

1.日取りを決める際はこちらから指定をする。
2.根回しは必ずおこなっておく。

まず、合意を形成する場のほとんどは「会議」です。で、会議をおこなうには幾人もの人の都合を合わせないといけません。もしあなたがその会議をコーディネートする立場にあるなら「いつにしますか?」と聞かずに、「●月●日の●時はいかがでしょうか」と最初の連絡を送るのが得策です(もちろん力関係などにもよる)。

下手をすると、会議をいつにするかの会議までやらないといけなくなります

あと、日本の美しき文化の一つである根回しは必ずおこなわなければなりません。これをしておかないと、決定のための会議を後日また開かなくてはならなくなり、決定のスピードがまた遅れます。会議は決定の合意おこなう場であり、議論する場であってはいけません(そんなことしたら日が暮れる)。

また、私が決定を下す立場にある場合には、まず結構細部まで決めたたたき台を作って、「これで行こうと思うのですがよろしいでしょうか」という会議をおこないます。あとは流れでいきますが、かなり決定のスピードは早くできると思います。「ええと、こういう問題があるんですけど、どうしましょうか?」という会議は愚の骨頂です。

どうしてもやってはいけないことは、一人で決定することです。合意志向の組織では、その決定に同意できたとしても、その決定がちゃんとしたプロセス(関係者による合意)を踏んでいない場合には、それだけの理由で却下されることがあります。ですから、スピーディーな決定を望む場合でも、プロセスを省略してはいけないのです。プロセスを省略せず、そのプロセス自体をスピーディーに回す必要があります

まとめ

で、まあそんなにいろいろな国を知っているわけではないのであれなんですけど、海外で働くときの基本として、もう手垢が付きまくりの格言を一ついっておきます。それは、

郷に入っては郷に従え

これですね。特に海外生活を初めて日が浅い人がぶつかることだと思いますが、決定の部分では確実にそこの国のやり方に身を委ねた方がいいです。一人の力では何も変わりませんし、空回りするだけです。

互いの文化が話し合えば話し合うほど、自然に調整できるようになっていく──そして一緒に働くのがどんどん楽しくなっていく。異文化間の連携に付随する他の多くの難題と同じように、衝突を取り除くには気づきとオープンなコミュニケーションが大いに役立つ。(p156)

これが全てではないかと思います。自分が信奉している決定システムも、長所もあれば短所もあります。コミュニケーションを重ねていくことでお互いのポイントがわかってきます。まあ、これは「決定」に限ったことではありませんが。

続きはこちら↓

カルチャーマップから考える日本語教育 その6 信頼

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