昨日も本を読んでいたんですが、私たち日本語教師がときどき実施する授業見学について、何かとヒントになりそうなことが書いてあったのでここに記したいと思います。
読んだ本は、細谷功(2020)『問題発見力を鍛える』講談社 です。「考え方の本」ですので日本語教育とは直接的な関わりはないわけですが、私たちも考えることは毎日しますから、やっぱ関係ありますよね。
ネガティブをポジティブに
本書の筋ははっきりしています。「これからは問題解決力よりも問題発見力が必要になる」ということです。これまでの時代は「与えられた課題をどのようにこなすか」ということに重点が置かれていましたが、課題がはっきりしているならそれはあとは解決するだけ。それはAIにもできる。これから必要になるのは「問題を見つける力だ」ということなんですね。
で、その問題を見つける方法がいろいろかかれているんですが、そのうちヒントになる一つが、
ネガティブな場面
だと言っています。まあ考えなくてもわかりますが、私たちはネガティブなことの発見能力に長けていますよね。会社やサービス、製品にケチをつけるのはとっても簡単です。人の悪口は簡単に言えますしね。
しかし、そのネガティブをポジティブに昇華してきたのが一昔前の日本企業だと著者は言います。
ネガティブな顧客のクレームや要求を見事にポジティブな「改善」へと変えてKAIZENとして世界に広めたのは、日本が誇るべき成功と言えます。
そういうことです。
これは個人にとっても言えることです。ネット上でも
他の人からのフィードバックは宝の山
という話はよく聞きます。自分のパフォーマンスに対する意見を真摯に受け止め、それをKAIZENしていくことは個人の成長につながりますし、職業人として正しい態度だと言えるでしょう。実際、第一線で活躍するような人はそういう繰り返しをしてきていると思います。
しかしね、世の中の人はすべて一流でもありませんし、メンタルが強いわけでもありません。著者も、
他人からあからさまに自らの欠点を指摘されて(たとえそれが「本人のために言っている」という名目であったとしても)、それを簡単にポジティブな改善に変えられる人は極めて少数派で、大抵の人はネガティブで終わってしまうことでしょう。
ということをはっきりと言っています。私もそれに同意します。もちろん私だってネガティブなフィードバックを今までたくさん受けてきましたし、それで成長してきた部分もあるとは思いますが、
他の人からのフィードバックは宝の山
と、胸を張って言えるほどメンタルは強くないです。時として「ほっといてくれ」と思うときもあります(だって人間だもの)。
他人から自分へ
では、そういうメンタルの弱い人はどうすればよいかといいますと、
「ついつい向けたくなる」他人の問題への矛先をすべて自分に向けてみるのが、簡単な「解決できる問題の発見」につながっていきます。
うむ、これは…そうです、そうなんです。最初に前提として言いましたが、私たちは
人のあらさがしは得意中の得意!
なんですよね。それを生かさない手はありません。
「人のふり見て我がふり直せ」とはよく言ったもので、他人に見つけた問題を自分の問題として改善につなげていけば、ネガティブな問題がポジティブな改善へと変わっていくというわけです。
要は、何か他人の「あら」が見つかったら、その「あら」をすぐに自身に向けてみる習慣をつければいいんです!
おお素晴らしい!一人芝居ですね。
クレーム元自分、クレーム先自分
ですから、これが実行できればそんなにメンタルをやられずに自身の成長につなげられるということです。
人のふり見て我がふりなおせ授業見学
では、そろそろ「授業見学」の提案に入りましょう。
あなたは日本語学校とか日本語コースの割と責任者です(割と責任者ってなんですかね)。授業の質のKAIZENをおこなう立場にあり、いろいろな試みをおこなってきました。そして次は授業見学の番です。あなたは講師や先生たちにこう言います。
明日から授業見学をお互いにしましょう。やり方はこうです。
・見学者は授業者に授業のフィードバックをする必要はありません。
・もし改善すべき点を発見したらそれをノートにメモしておいてください。
・所定の回数授業見学が終わったらノートを見返して、「改善すべき点」は自分はどうなのか、ということを考えてみてください。
・●月●日にミーティングを開きますので、その時に自己に足りない部分、改善すべき点はどこかを発表してください。
これ、良くないですか?ある程度経験がある先生たちとかだったら、下手に見学者がフィードバックするよりもいいと思うんですよね。あと、構造的に、「言わなきゃわかんない人って言ってもわからない」ということが多いですよね。だったら言うだけ無駄だし、それだったら自己内省することを重視した方がいいと思うんですよね。
まあ、すべての場合でそれが有効かどうかはわかりません。例えば新人研修とかだったら、直接的に言った方が早いでしょうし、本人もそれを望んでいることも多いです。組織としても付け焼刃だったとしても、抑えるところは抑えてもらいたいですし。ただやはりそれでも全てのフィードバックは、
ここをこうしたらもっと良くなる
という基本パターンをとるべきですね。つまり前向きな指摘ということです。
まとめ
以上、最近読んだ本から授業見学のやり方を考えてみました。
そういえば以前↓のような記事を書いたことがあります。
まあ基本的には今日の提案と同じなんですけど、これにプラスして今日は 「人のあら捜しがうまいという人間の性を利用する」ということを追加してみました。 これは授業見学だけにとどまりませんね。私もあら捜しの天才ですからいろいろな場面に取り入れて内省すべきだなと思いました。
と、こんなことを考えていたら、Twitterでタイムリーな発言を見つけました。
将来自分の学校を建てるために勉強になったこと:
— 🇯🇵Ken : 日本語 / 英語教師 @フィリピン (日本一時帰国中)🇵🇭 (@kh678k) July 6, 2021
・無資格者は雇うな
・やる気ないやつと向上心ないやつは雇うな
・給料はそれなりにあげろ(上げろ)
・シンプルな評価(給与)システムにしろ、そしてそれをしっかり明示しろ
・従業員に対して下手に出すぎるな
ネガティヴも学びに変えます
自分が経験したネガティブなできごとを自分への反省へ生かそうということですね。はっきりと最後に
「ネガティヴも学びに変えます」
と宣言されていますね。この一言が今日のまとめそのものです。