レビュー『人生を変える 80対20の法則』②

投稿者: | 2020年8月26日

リチャード・ コッチ(2018)『人生を変える 80対20の法則』CCCメディアハウス

前回は「意味のあることに時間を使え」という本書のメッセージをとりあげ、それは日本語教師的にはどういうことか?について考えました。今回はもう少し高い視点からこのメッセージを考えます。

選択と集中

「意味のあることに時間を使え」というのはつまり、

選択と集中

ということですね。どこか1点を選び取り、ここだと決めたらそこに自分のリソースをすべて投入する。ちなみに英語ではselection and concentrationと言うそうです。

これは日々のミクロな業務にも適用できますが、もう少し高い次元で、つまりミクロな業務に移る前の段階でも考えておかなければなりません。

例えば、ミクロな業務としては私達は毎日授業準備をしているわけですが、そもそもなぜ授業準備をしているかと言ったら、今の勤務先を選んだという過去があり、その前には日本語教師になると決断した過去があるからです。

今どこそこに勤務している、今日本語教育に従事しているという事実は変えられませんが、これからの選択と集中によって未来を変えることは可能です(当たり前の話でスマン)。問題はどのようなものを選択&集中するかです。

やっぱり専門分野を持つ

以前『仕事は楽しいかね?』を読んだ時に、私は以下のようなことを書きました。

・やはり身につけなければならないのはオリジナリティ
・このひとを雇いたい、キープしておきたいっていう強みが必要

本書でも言っていることは同じです。

物事を広く浅く知っているより、狭く深く知っているほうがいい。どの分野でも人並みのことができるよりも、これだけは誰にも負けないという分野をもっていたほうがいい。(Kindleの位置No.3276-3278)

そしてどの分野を選択するかと言えば

情熱を傾けられない分野では、第一人者になれる見込みはない。(Kindleの位置No.3316)

ということで、情熱を傾けられ、かつ自分の強みが出る専門的な分野を開拓すべしということが書かれてあります。まあ、それはこの本以外でも一般論としてしばしば語られることであります。もし「選択と集中」に集中して考えたいのであれば、グレッグ・マキューン(2014)『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』かんき出版が役に立つかもしれません。

ただし「私は何を実現したいのか」が何よりも優先されるという事実はいつも考えておかないとな、と思います。日本語教師の場合は、経済的な安定が保たれてかつ知的な研究環境、ゆとりのある実践環境が確保されればそれでOKという人が多いと思います。私もそうです。どうしてもこういう話になると経済的な利益の話になりがちですが、それも含めて自分の数年後、数十年後がどのような姿であれば嬉しいかをまずは自分なりに考えておかなければなりませんね。

あと私も忘れがちなんですが、我々の仕事はそもそも専門職なんですよね。付き合うのが日本語教師ばっかりなんで自分の強みがよくわからないんですが、どこと比べるかによって自分のトンガリ具合が違ってきますよね。おそらくそういうのは他業界から参入してきた人の方がよく分かっていると思います。そのへんも力にできたらいいですね。

潜在意識の活用

その「私は何を実現したいのか」をじっくり考える上で非常に興味深いと思ったのは潜在意識を活用する、という部分でした。

意識には「顕在意識」と「潜在意識」があります。文字通り前者は「顕在化している意識」で、私たちが「考える」と言っている部分ですよね。潜在意識は普段顕在化されない意識で、フロイトが無意識と言ったものと同じものでしょう。

まあこの辺は長くなるので割愛しますが、「潜在意識を活用するってどういうこと?」という質問に対してわかりやすい記述があります。

こんな経験はないだろうか。朝七時に目覚まし時計をセットしておくと、翌朝、目覚ましが鳴りだす一分前に目が覚めるのだ。これは脳のどの部分がはたらいたのだろうか。目覚める直前は深く眠っているのだから、顕在意識のはずがない。これこそ潜在意識のなせるわざだ。(Kindleの位置No.4127-4130)

なるほど。わかりやすいですよね。そして著者は、「お前らは顕在意識を使いすぎ。潜在意識を鍛える方向でいけ」と言っているんですね。

人間は無理に努力しようとすると、潜在意識を締め出すことになる──努力が少ないほど成果が大きく、努力し過ぎると成果が得られない。(Kindleの位置No.4045-4047)

この辺の事例と理屈は本書を読んでもらったらよく分かるのですが、「ニュートンがりんごの実が落ちるのを見て万有引力の法則を見つけた」とか、「ポストイットは研究の失敗から生まれた」みたいな逸話もすべて潜在意識から出たものですよね。

卑近な例でいいますと、私は以前論文を書いていました。文法研究なんですが、文法研究ってひらめきみたいなものが必要になるんですね。難題にぶち当たるたびに私がやっていたことがあります。それは、

当該事項の事実関係を全部頭に入れた後でジョギングに行く

というものでした。そうして考えるでもなくジョギングをしているとふと「真理」にぶち当たることがあるのです。ふと、ひらめくんですよ。で帰ってすぐに走り書きをします(ジョギングだけに)。それで論文の主要な理路が固まるということが一度や二度ではありませんでした。

人によっては「プールに潜って息を止める」という人もいますし、「夢で見る」という人もいます。別に論文じゃなくても授業準備でも同じです。PCに数時間向かっても思い浮かばなかった適切な活動が、バスに揺られている最中にふと頭にうかび、「授業準備終了」と思ったことはよくあります。

目標を達成するための潜在意識

ですから私もうすうす潜在意識の効用については気づいていたのですが、本書ではちゃんと言葉をつくして「どうすれば潜在意識をフル活用できるのか」について詳しく説明してくれています。ここでは詳しく書きませんが、示唆深いのが以下。

映画には過去も未来も存在するが、九〇分に凝縮されている。どの瞬間も映画の登場人物にとっては人生の途中を見ているのだが、自分にとってはつねに「いま」である。自分の人生の九〇分間が関わっているという事実を無視して、一度にすべてを眺めていると想像すること。──それが、潜在意識のはたらきだ。(Kindleの位置No.4159-4162)

著者は「自分のありたい姿を具体的にイメージしておく必要性」を説きます。

未来に目標を達成するには、いま叶っているかのように想像し、感じていなければならない。(Kindleの位置No.4166-4167)

おお、これはどこかで聞いたことがあります。

例えば「白馬にのった王子様」を夢見る乙女がいたとします。その場合、「どのような王子様かを具体的にイメージしておくと良い」というんですね。具体的とは、

身長が175センチ、体重80キロくらいのぽっちゃり体型。家業をついで、若旦那として小さい店を3店舗ほど切り盛りしている。好物は魚介類で、肉は食べるが自分から進んでは食べない。お笑い好きで、過去10年分のM1グランプリのビデオを保存している。ダウンタウンの大ファン

こういう具体的なイメージを毎日している乙女が合コンに参加するとします。そこでもし、すべての条件を満たさないものの「背は170センチ、小太り。お笑い好きで、まっちゃんが大好き。」くらいの条件の人に出会ったとしたら、その人は確実に

運命の人に出会った!

と思うのではないでしょうか。つまり、具体的にイメージをしているとそのチャンスを見過ごしにくくなるということでしょうね。

私事で言いますと、カンボジアに来る前私は韓国にいたのですが、カンボジアの仕事が決まる前から韓国でお世話になった人々へどのようなメッセージを送るかを具体的に真剣に考えていました

あと、珍しいタイプだとは思いますが、次の職場が決まる前から同僚には「来年この学校をやめるかもしれない」と言っていました。なーんにも決まってない時点で「来年自分がいないこと」を前提にその一年は仕事をしたのです。

今考えるととんでもない考えをしていたな、と思うのですが、一方では潜在意識をフル活用した結果、ページが思い通りに開かれたのかなとも思います。少なくとも結果的にはそうなっていますから。

この本を読んでから、潜在意識をもっと活用する方向で進んでいきたいと思いました。

思えば叶う

ようなことは昔から言われていましたが、この本ではそれが理屈で?ちゃんと説明されているのです。

まとめ

というわけで、2回に渡って『80対20の法則』の面白かった部分を自分の体験や考えと合わせてつらつらと書いて来ました。

実はこの2回の記事を書くために、引用しようと思ってGoogleドキュメントにコピペしていた部分のほとんどは使いませんでした。80対20の法則について書きながら、私自身まんまとその法則に縛られていたのです。反省ですね。

書かなかった部分としては「管理者として部下に成果を上げてもらう方法」なんかも非常に興味深かったです。気になる人はぜひ、読んでみてください。

あ、あとちなみに途中紹介した「エッセンシャル思考」の本なんですけど、実は私はこれを読んでいません。最近よく聞く「サラタメさん」の音声で内容を知りました。この人の本質解釈の力、話芸も素晴らしいなと聞くたびに思っています。


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