レビュー『学びを結果に変える アウトプット大全』

投稿者: | 2019年12月13日

樺沢紫苑(2018)『学びを結果に変える アウトプット大全』サンクチュアリ出版

結構売れているということなので、読んでみました。なかなか面白い本でしたので、例のごとく私が印をつけたところを中心にご紹介します。

アウトプットの基本法則

インプットすると、脳の中の情報や知識が増えます。しかし、インプットだけでは、現実的な変化は何ひとつ起きません。(p18)

多くの人は、「インプット過剰/アウトプット不足」に陥っており、それこそが「勉強しているの成長しない」最大の原因ともいえます。インプットとアウトプットの黄金比は、3対7。インプット時間の2倍近くをアウトプットに費やすように意識しましょう。(p29)

この最初の最初の部分を読んで思ったのは、なかなか成長しない私のクメール語のことです。カンボジアに来て9カ月ほどたちますが、日常生活で使えるまでのレベルに達していません。

周りはクメール人だらけなんですが、日本語が上手な人も多いですし、職場の人は英語が上手な人が多いのでなかなかクメール語を使う機会がありません。割とクメール語の単語などは知っているので、足りないのはアウトプットであると確信しました。

外国語教育の世界では「大量のインプット、少しのアウトプット」が常識と化しています。↑でいう「インプットとアウトプットの黄金比は、3対7」というのは別に外国語教育のことを指しているわけではないので必ずしも矛盾しているとは思いません。

ただ、外国語教育を実施する上では、どうしてもインプットの方が楽に実践できます(私のクメール語学習もほぼインプットオンリーに偏っています)。そういった点で「少しでもいい」アウトプットがその「少し」にも達しないのではないかと思いました。 もしかしたら私たちは日本語の授業をする上では「アウトプットをもう少し増やす方向」で考えていくとインプット対アウトプットの比率がちょうどよくなるのではないか?と思いました。

科学に裏付けられた、伝わる話し方

仕事での成功や、良好な人間関係を維持するためには、ポジティブな言葉がネガティブな言葉の3倍以上必要であるということ。(p43)

このことについて最近考えるんですけど、もうネガティブな言葉って必要ないんじゃないかと思います。というのも、誰でも、どこでも探せば必ずネガティブな部分があります。それを一つ一つ指摘しても仕方がないような気がするんですよね。

現場でのことで言うと、授業見学後のネガティブなフィードバックとかでしょうか。「悪い部分を指摘してくれて良かった」とかいう言説がたぶん、世の中では支配的ですけど、できるだけポジティブなことで埋め尽くす必要があると思います。

例えば↓なんかは構造的に「ネガティブな言説を避ける」ための授業見学の提案です。

「自分のため」に焦点を置いた授業見学

あと、私が一つ大きなルールとして掲げているのはSNSではネガティブな内容を発信しないということです。世の中には「うるさ方」みたいな人が必要かもしれませんが、「その役割を自分が担わなくてもいいかな」と思っています。

Twitterなんかを見ていて「それは違うだろ」とか「おかしい話だ」と思うことは多々ありますが、いつも書きかけてやめます。そのやり方は自分には合っていると思っています。

アイコンタクトをすることで、お互いの細やかな感情の機微が伝わりやすくなり、コミュニケーションが深まります。(p48)

これ、当然のことですけど、忘れてました。授業ではアイコンタクトをするようにしたいです。

柔らかく的確に伝える「クッション話法」

【ダメな話法】NoBut話法
遅刻が多いな。せっかく業績がいいのに。

【クッション話法】1 YesBut話法
業績アップしてるね。ただ遅刻に注意。

【クッション話法】2 YesAnd話法 
業績アップしてるね。遅刻がないとベター。

【クッション話法】3 YesHow話法
業績アップしてるね。どうすればもっと良くなる? (p52~p55)

まず、肯定の話をする。なんか世の中では「いい話と悪い話どっちから聞きたい?」みたいな場合は「悪い話」を先にするのが良いという人が多いですが、悪い話を先にしてしまうと萎縮してしまいますよね。うまくできるかどうかはわかりませんが、まずは良い話をしたいと思います(あ、もちろん悪い話はしないに限りますが)。

能力を最大限に引き出す書き方

「ひらめいた」と思った時の脳の状態は、「ぼーっとしている」ときの脳の状態とほぼ同じだったのです。(p140)

「創造性の4 B」 というものがあります。アイデアが生まれやすい場所は、Bathroom(入浴中、トイレ)、Bus(バス、移動中)、Bed(寝ているとき、寝る前、起きたとき)、Bar(お酒を飲んでちょっとリラックスしているとき)の4つです。(p141)

おーこれは納得。PCの前で腕を組んでひたすら1時間2時間考えても何も出てこないときは出てきません。

問題解決の4つのプロセス

1準備 問題と格闘する。
2孵化(インキュベーション)問題を脇においておく
3ひらめき アハ!体験
4検証 ひらめきが正しいか検証する(p145)

そうそう、とりあえず、パパッとなんでもやってしまって、しばらくは寝かして置くというのが必要なんですね。これは私の授業準備の方法でもありますけど、まず、完成度が低くても「とりあえず何とか授業に臨めるだけのもの」を作ってしまいます。最悪それでも何とか授業時間にお茶を濁すことはできるだろうというレベルのものです。それはもう授業の2週間くらい前には作ってしまいます。

そして、寝かして置いたあと、授業の3日前とか、忙しい時は1日前とかに手直しをします。そういうやりかたをずっと続けてきましたが、割りとそれは理に適っていることがわかりました。↓も同じことを言っていますね。

「30点の完成品」を時間をかけて磨き上げる(p216)
第1稿は素早く仕上げて、直しの時間を確保しよう。(p217)

さすがに30点は低いかな?と思いますが、まあこれは「とりあえず完成させる」ことの比喩でしょうね(1冊の本を仕上げるということでいうなら30点もわかります)。

要約は、読解力のトレーニングにもなります。国語が苦手な人は、要約トレーニングをすると成績が上がります。読解力が高い人は、思考力が高い。(p167)

よく言いますよね。140字制限のあるTwitterが要約練習にぴったりというのは。今度「読解の指導について」みたいなセミナーをする予定なんで、要約力のことについても言及する予定です。

その他

インプットとアウトプットの黄金比は、3対7です。短時間で教科書を暗記し、その倍の時間を、問題を解くことに振り向ける。これが最も効果的な記憶法、勉強法と言えます。(p187)

この「黄金比」はどういった分野を想定しているのかによって変わるかもしれませんが、言おうとすることはわかります。例えばJLPTの勉強なんてそうかもしれませんね。なんだかんだ言って、ひたすら問題集を解くのが近道ですよね。

教えること「自己成長に最も効果のあるアウトプット(p196)

人に教えることを前提に勉強するだけで、記憶力がアップして学びの効果が上がるということです。(p197)

↑これもよく言われることですよね。だからこそ協働学習とかいうんでしょうね。授業の作り方としては、どうやって「学生同士で教え合うように持っていくか」ということでしょうかね。

まとめ

というわけで、読んだ本『学びを結果に変える アウトプット大全』についてつらつらと書いてみました。この本を読んで私が得た一番大きなことは、冒頭でも書きましたが、

授業にもう少しアウトプット的要素を入れていこう

ということです。今までも入れていないわけではないのですが、もう少し比率を高めていきたいと思いました。というのも、やはりアウトプットっていうのは教室活動ならではだからです。

私のクメール語のことでも言いましたけど、インプットは自分の努力で作るのがたやすいです。でもアウトプットの機会を作ろうと思ったら労力が必要なんですよね。今私の職場にはカンボジア人がたくさんいますけど、その人たちを捕まえてクメール語の練習をするのは理屈としては可能です。でも、それを実行するのってすごく難しいです(まあ性格にもよると思いますが)。

あと、アウトプット(話すことややりとり)って、楽しいですからね。授業への満足度にも直結しますしね。

そういったことをこの本から学びました。

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