成功⁉する方法 レビュー『成功は“ランダム”にやってくる』

投稿者: | 2021年5月5日

今日も一冊の本をご紹介したいと思います。読み物としてもとても面白かったですし、非常に勉強になりました。これです↓

フランス・ヨハンソン(2013)『成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方』CCCメディアハウス

海外系の日本語教育関係者の方は、この本に見覚えがあるかもしれません。私もこの投稿↓によってこの本を知りました。

成功は“ランダム”にやってくる!(むらログより)

私も毎日 Amazon の日替わりセールはチェックしているんですけれども、この本には食指が動かなかったんですよね。でも↑の投稿を見た後に、「あー買っておけばよかった」と軽く後悔していました。しかし、AmazonのKindle本のセールって同じ本が何度も日替わりセールに入ったり、月替わりセールに入ったりするんですよね。

今回は逃しませんでしたよ。

結構分量もある本なんですけども、私が気になったところだけ3点にまとめてお伝えします。

・1万時間の練習
・成功はランダムに訪れる
・そのランダムをつかむために

1万時間の練習

成功と言ってもいろいろな種類の成功があります。オリンピックで優勝した人も成功者でしょうし、大きな会社を作り上げた人も成功者です。またそれぞれにはグラデーションがあって、どこからが成功でどこからが成功じゃないかはなかなか決めにくいですが、その辺りの定義をしていたら日が暮れてしまいますのでなんとなくの理解で話を進めさせていただきます。

まずざっくりと二つのカテゴリーを設定します。

1)ルールがあまり変わらない場所での成功者
2)ルールがめまぐるしく変わる、もしくはルールがない場所での成功者

1)は例えば、本書では「テニス」や「チェス」の世界大会優勝者とかがあげられています。テニスにしてもチェスにしても、国際的なルールは少しずつ変わっているそうですが、基本的なルールは変わっていません。

こういうルールがあまり変わらない場所で成功するために必要なのは、

1万時間の練習

であると言っています。もちろん1万時間練習すれば全員が全員世界大会で優勝できるかといえばそういうことではありませんが、こういったルールで動く場所では、とにかく練習時間が多ければ多いほど技術は上がるし、そのルールの中で勝つための力がついてくるというのは言うまでもありません。

私は今ピアノの練習をしているんですが、これよくわかるんですよ。初めて挑戦した曲で「この指使い可能か?」と絶望していたものでも、必ず少しずつ出来るようになっていくんです。まあ私は素人に毛も生えていないレベルの素人なんで、それを超一流の人々と比較するのもあれですけど、でも練習量が必要になるのは誰も否定しないでしょう。

外国語学習とピアノ練習~文型積み上げと行動中心アプローチ~

1万時間って結構凄いですよね。毎日休みなく1時間ずつ練習したとして、一年で365時間。1万時間に到達するまでには27年かかります。並大抵の時間数ではありません。それだけ練習時間を確保できるということは、ある程度成果が上がっているということでもあります。

余談ですが、「外国語の勉強」も「あまりルールが変わらない場所での戦い」ですよね。今あなたが、外国語がうまく話せないとか扱えないと悩んでいるとすれば、それは単に学習時間数が少ないのかもしれません。うん、きっとそうですよ。

私のクメール語学習について考えてみても、おそらくこれまでの総学習時間は300時間くらいかなと思います。もちろん1対1の授業と自習時間を含めてです。勉強方法があまりよろしくないというのもあるかもしれませんが、1000時間ぐらいやればある程度ものになりそうだなというのはなんとなくわかります(最近少しずつ兆しが見えてきましたので)。そういえば昔は日本語能力試験の一級合格の学習時間数の基準が900時間と公表されていましたよね。

あと私が今までやった日本語の授業の時間を考えてみましたけど、1万時間を超えているのは確かですね。そういう意味ではそこそこ経験があるといえるのかな、と思います。まあ同じ時間数でも同じ教案の授業を10こなすのと、まったく別の授業を10こなすのでは意味合いが変わってきますけど、何かの基準にはなるかもしれません。

ただし、授業をめぐる環境は日々変わっていきますので、そこが「ルールがあまり変わらない場所での戦い」とは言いにくいかもしれませんね。

話が脱線しましたが、まとめますと、あなたが「ルールがあまり変わらない場所」でそれなりの成功を手にしたいと思うのであれば、まず、

練習時間を増やすこと

を考えるのがよいかもしれません。

ルールがあまり変わらず、かつ競争相手のパフォーマンスが直接的に自分のパフォーマンスに影響を与えないような種類の活動は、とにかく練習量がものを言うと考えられます。例えば、 「ボーリング」「アーチェリー」「射撃」 などのようなスポーツ、「フィギュアスケート」や「新体操」「飛び込み」のような多くのアーティスティックスポーツでしょうか。これらは自分が満点をとれば絶対負けない競技です。また、私が例示した「楽器」などもそれに入るのではないでしょうか。

そういうことで言えば、大学入試を始めとした各種試験、資格試験なども練習量が物を言うタイプの活動に入ると思われます。とにかく練習です。

成功はランダムに訪れる

では次に

2)ルールがめまぐるしく変わる、もしくはルールがない場所での成功者

についてです。例えば、今世界的な大企業と言えば、GAFAなどと言われますが、そういうメガ企業の創業者は名前も広く知られる成功者中の成功者です。でもそういった企業活動には明確なルールはないんですよね。いやもちろん税金のルールとか、会社法とか、そういうのはありますけど、それはルールと言うか最低限の倫理や前提ですよね。スポーツのように「ゴールにボールをたくさん入れた方が勝ち」のような明確なルールは存在しないということです。

もしルールが明確に存在するのであれば、緻密な計画を立ててそれを実行すれば誰でも成功者になれるはずです。だったら、だれでも(少なくとも能力があれば)アマゾンやGoogleのような企業の創業者になれるじゃないですか。でも実際そうはいかない。

成功を予測できる可能性は非常に低い。どんなに綿密に計画を練り、戦略を立てても、その通りに行くことは絶対にない。成功は、偶然の出会い、思いがけず生まれた洞察、幸運な賭けから生まれるのである。

本書ではそういう「偶然の出会い、思いがけず生まれた洞察、幸運な賭け 」についてのエピソードが「これでもか!」というくらい出てきます。それはそれで非常におもしろいので、気になる人はぜひ読んでみてください。

「スターバックスが世界的な企業になったのは、役員がイタリアに出張したときにたまたま訪れた喫茶店がきっかけ」とか、「ある歌が世界的なヒットをしたのは、ある無名の人がその歌をYOUTUBEに投稿したのがきっかけ」とか。つまり

計画になかったことが引き金となっている

ということなんですよね。

これってよく言われることでもあるんですけど、「成功はランダムであるということは、人は信じたがらない」ということも言及されています。

私もちょっとわかります。例えば、何かひどい殺人事件とか起こりますよね。その時人々は動機を知りたがるじゃないですか。で、その動機が「痴情のもつれ」とか、「金銭トラブル」とかだと、ふと安心したりしませんか。もちろんそういう事件が起こったことは悲しいことですけど、そういう「動機」から「結果」までの一本線が見えると安心するんですよね、「おれは金貸してないし」とか思って。

でも、それが「無差別殺人事件」とかだと、ぞっとします。自分が被害者にならなかったのは

単にその場に居合わせなかったから

被害者になるかどうかはランダムであり、運でしかないんです。不条理だけど、そうなんですよね。で、この本に書いてあることは「成功」についてですから「殺人」とは正反対の話ではありますけど、構造的には全く同じです。私たちは成功者を見て「やっぱ頭の作りが違うから」とか「計画の立て方が素晴らしかった」などと

思いたい

んです。それが「成功はランダムなんですよ」となると、立つ瀬がなくなる。でも、ルールが明確でない場所での戦いは、やっぱり運に左右されるんですね。

また余談ですが、「子供を東大に入れた親の本」とかあるじゃないですか。私はこういう教育をしました、みたいな。ああいうのは、ケーススタディとしては意義があると思うんですけど、自分の子が東大に入ったことによって自分の教育が正しかった、みたいな論調になるんですよね。結果から遡っていけば、全部その過程が肯定されるのは当然なんですよね。だからなんか「もやっ」とするのかもしれません。

そのランダムをつかむために

でもですね、成功が運に左右されるとしても、朝起きたら電話がかかってきて「あなたは今日からGoogleの社長です」と言われることはそのランダム性には入っていません(笑)当然ですね。

Googleがここまで大きくなったのにはランダム的要因があったにせよ、ランダムを引き寄せるための下地があったのは間違いありません。そのランダム的要素をものにするためにはやはり基本的実力が必要になることは言うまでもないでしょう。Googleのランダム性の話だって「優れた検索システムを開発できていた」という時点から話が始まるんです。

ですから、やはり基本的下地や計画は必要なものなのです。

結局、偶然とは、組み立てた計画があって初めて生まれるものだ。しかし、私が言いたいのは、ランダム性それ自体が計画になるべきだということだ。つまり、生活のなかのランダム性の割合を増やすだけでなく、すばらしいことが起きたときにそれを捉えることができて初めて、このアプローチはうまくいく。

ランダム性を含んだ計画を立てる

↑これです。つまり何か計画外の事態が起きたときに、それを「計画外である」としてはねのけるのではなく、ある程度流れに乗っていこうということです。ポストイットの開発秘話とかも有名ですよね。もしその人が「計画外だから」ということで失敗した実験に見向きもしなかったら、そこですべて終わっていたわけです。

計画にはないけど、何かが起きたら、それは「計画外のことにも対応するという計画」に従って行動すべきなんですね(わかりにくくてすまない)。「メンドーなことが起きたらチャンスと思え」くらいでいいかもしれません。

あとですね、やっぱ大事なことは、「賭ける回数を増やす」ということですね。

革新的な論文(他の研究者からの引用が多い論文)を書く見込みは、書いた論文の数と相関関係がある。多くの論文を発表した科学者は、優れた論文を書く確率が高い。

例えば世界的な研究者がいるとして、その研究のすべてをフォローしている人ってごく一部ですよね。「キュリー夫人はなんとかを発見した」それだけじゃないですか、我々が覚えていることは。そこに至るまでにキュリー夫人がどんなくだらない研究をしていたかなんて誰も知りません(全部素晴らしい研究だったかもしれませんけど)。なんとかを見つけたらそれでOKなんです。

実は私が愚につかないブログ記事を量産しているのは、これに依っているからなんです(笑)。半分冗談ですけど、半分本当。くだらない記事は誰にもリツイートされないので傷は深まらないのです。だから、余談ですが、私が心がけていることは「くだらないことを書かないようにする」ことではなくて、「人をできるだけ傷つけないようにする」ことの方です。

1000万円あったら、その1000万円すべてを使って一発で人生をかけるんじゃなくて、できれば100万円の思考を10回やるべきなんですね(もちろん、すべてを賭けた背水の陣じゃないとうまくいかないという考え方もあり)。このことは過去に読んだ本でも学んでいます。

レビュー『仕事は楽しいかね?』

これビジネスの話っぽいですけど、私たちの授業でも同じだと思うんですよね。

私は若いころは「この授業計画で心中する」というような時期がありました。学期が始まる前に計画を練りに練るんですね。で、授業スタート。ほかにネタはないからそれで1学期やるしかない。それでうまくいくこともありましたし、いまいちのこともありました。

まあ、経験が浅いと手持ちのカードが少ないということもありますし、しょうがない面もありますけど、やはり一つのことに命を懸けるのは問題がありますよね。仮に大きな案としては1つでも、学生たちの反応をみつつ、マイナーチェンジを繰り返していくくらいの姿勢は必要でしょう。10年間同じ資料で同じ授業をしている、という強者もいましたけど。

目的ある賭けは、小規模であれば何度も行うことができるため、ランダムな出来事や予想外の出来事が起こる確率が最大化する。

いろいろやっていると、いろいろなことが起きるってことですね。

まとめますと、大事なことは、
・計画外のことに対応することを計画に含める
・試行を増やす

まとめ

というわけで、最近読んだ フランス・ヨハンソン(2013)『成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方』CCCメディアハウス についてご紹介いたしました。

・技術を高めたり、知識を増やすことについては練習量を増やすこと
・どうやったらいいのかわからないことについてはとにかくたくさんやってみること

ということですね。

しかしですね。「私は成功など望んでいない」という人もいるかもしれません。しかしこの成功ってのは、上の方でも言及した通り人それぞれです。

例えば、私はちょっと前からピアノの練習を始めましたけど、非常に楽しんでこの活動に取り組んでいます。でも、このピアノを始めたきっかけも偶然なんです。

もともとは子供たちがどうしてもピアノを弾いてみたいということで、購入しました。で、子供たちが遊ぶ合間を縫って私も触ってみたんですが、とてもおもしろいんですよね。YOUTUBEを見れば練習なんていくらでもできますし。それで、今では子供たちよりも私と妻の方が熱心に練習をしているくらいです。

ピアノを買って、さわり始めたのもまったくの偶然です。少なくとも私の人生プランにはなかったことです。そして、多少おおげさな言い方になりますけど、このピアノとの出会いも一つの成功と言えるのではないでしょうか

幸運をつかんだからと言って、誰もがGoogleやスターバックスの創業者になれるわけではありません。でも予定外のことをやってみる、それを楽しむことによって、私にとっての「ピアノとの出会い」くらいの成功は得られるかもしれません。これは一人の人間にとっては大きな成功です。

おもしろい本なんでぜひ読んでみてください。

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