先日第23回カンボジア日本語スピーチコンテストが開かれました。
毎年開かれているのですが、去年はCovid19の影響で中止になりました。そして1年置いた今年、史上初めてオンラインで開催されることになりました。私もこの運営に、ごく一部ですが、携わりました。備忘録の意味を含めて、また同種のイベントを開催する人への情報共有の意味も込めて、ここにその概要を記しておきたいと思います。
方式
開催方法を一言で言いますと、
あらかじめ集めておいたスピーチビデオをZOOMで流し、その様子を Facebook ライブで配信する
という方式です。ビデオを流すだけならズームを経由する必要はありませんが、スピーチビデオを流した後に質疑応答があります。それはリアルタイムでスピーチをした人たちに参加してもらうため、ZOOM→Faceookライブとなりました。また、審査員や来賓などにもZOOMに参加してもらいました。
最終的にはこのような方式に落ち着いたものの、オンライン開催を決めた後で、下の三つの開催方式を候補に挙げて様々な視点から検討を行いました。
①参加者と運営陣だけが会場に集まり、そこでスピーチをしている様子を配信する。
②ZOOM上でスピーチを行い、その様子を配信する(全編リアルタイム)。
③事前にスピーチ動画を送ってもらい、その動画を配信する。
結果として③の方式を採用したのですが、その理由は最悪を考えてということでした。
①は、集まらなければなりません。カンボジアでもCovid19の状況下ですし、いつ非常事態宣言のようなものが出るかわかりません。結果論ですが、スピーチコンテストをおこなった2021年5月23日時点では、一つの場所に参加者が全員集まるということは難しい状況でしたので、この方法を選ばなくてよかったです。
また、②は配信側だけではなく参加者側のインターネット環境にも配慮をしなければなりません。カンボジアはそれほどインターネット環境が良いとも言えず、この方式を選択した場合、参加者はそれぞれの自宅からスピーチをすることになります。そうすると、運営の成否は運営側のネット環境以外に、参加者側のネット環境にもかかってくることになります。それはリスク管理という点からも望ましくないと判断しました。
で、結局どのような形になっても確実に運営を行える③を選択しました。質疑応答では参加者もライブ参加をするわけですが、「その内容は審査に含めない」とすることにしました。ですから、仮に「参加者のネット環境が悪く何を言っているのかわからない」「そもそもZOOM上にいない」という最悪の状況になっても、会は進行をすることができるというわけです。結果的にそういう参加者はいませんでしたが、参加者のネット環境まで配慮する必要がない、というのはストレスが減ります。
ちなみに「ビデオ参加にすると、カンニングをするのではないか?」という憂慮もあろうことかと思います。しかし、
・原稿を読んでいるのかどうかはビデオでも判断できる。
・対面でやるときも原稿を見てはいけないという規則はない。
・原稿の棒読みで上位に食い込めるほど甘くはない。
・いずれにせよ条件は全員同じである。
ということで、ビデオでスピーチを出してもらいそれを当日審査するという方式になりました。
ビデオの問題点
当日はビデオを流すだけだから楽じゃないか?と思っていたのですが、コンテストの前にリハーサルをする中でいくつか問題点が現れました。
①ビデオがカクカクする
ZOOMでビデオを流すのですからある程度覚悟はしていました。でも思った以上にカクカクするんですよね。
最初はGoogleスライドでコンテストすべてのスライドを作っていました。そして、そこにスピーチ動画も埋め込んでいました。で、カクカクが激しいので、Googleスライドはやめて、パワーポイントに埋め込むことにしました。これである程度は解消されました。
Googleスライドからだとやはりリンクを拾ってきて再生する感じになるからでしょうね。パワーポイントだと、ハードディスクの動画をリンクしてそれを再生することができます。
あと、ZOOMで画面共有をする際には「全画面ビデオクリップ用に最適化」を忘れずに。
ただ、そういう努力をしてもカクカクが多少出るのは仕方ないですね。
②音が小さい
スピーチですから、動画の生命線は音です。カクカクして口と画面が合わないのは、ある程度目をつむることができますが、音が小さいというのはどうにもなりません。リハーサルをしたときに、全体的に参加者のビデオの音量が小さいことに気づきました(参加者にはビデオの見本を見せて、各自のデバイスでスピーチを録画してもらいました)。
最初はGoogleスライドで再生をするつもりだったので、それだったらクロームの拡張機能で音を大きくするようなものもあるんですが、パワーポイントを使うことにしたのでその方法は使えません。結局、動画ファイル自体の音量を大きくすることにしました。
この作業は私がやっていないのでよくわからないんですけど、↓のウェブサービスを使ったようです。これを使うと、ビデオの音声の音量を上げることができます。
私はiMovieでもやってみましたが、それでもできます。iMoiveでなくても編集用のソフトを使えばそんなに難しくない作業です。あと私の職場にはITに詳しい人もいます。その人の協力でノイズをカットしたり、そういったこともおこなったようです。
というわけで、ビデオにはビデオならではの問題点がありました。リハーサルをしっかりとやっておいてよかったです。当日ではどうにも対応できませんからね。
審査について
私が全面的に関わったのは審査です。審査をおこなったのではなく、審査の方式などを同僚とともに決め、そのとりまとめなどをおこないました。今回は以下のような条件です。
・参加者9名で1位から3位までを決めなければならない
・審査員は5名
・審査員による「審査点」と視聴者投票による「投票点」の合計で順位を決める
まず努力したのは審査員を様々な属性の人にすることです。「審査員すべてが同じような属性の人」という状況では変な偏りが出ることも考えられますので、できるだけ違った種類の人々を集めることにしました。結果として、5名のうち「カンボジア人男性」「カンボジア人女性」「日本人男性」「日本人女性2名」に審査をお願いできました。
審査員それぞれが審査をする方法は、ちょっと複雑ですけど言葉で説明します。
・9名の参加者のうち、上位4名を選出する
・その4名に持ち点10点を配分する
ということなんです。仮にA,B,C,D 4名を選出したとします。その順番で素晴らしいと思ったらそれぞれ4,3,2,1点をあげます。しかし明らかにAが突出している、と思った場合はAに7点をあげることができます。そうすると残りのB,C,Dには残り3点しかありませんから、それぞれ1点ずつを配分することになります。わかりますか?下の図を見てもらった方がわかりやすいかもしれません。
選出した4人に10点を配分する、かつ0.5点とか0点はなし。そうなると、10点を配分したときの組み合わせは、以下の8種類にしかなりません。
7,1,1,1
6,2,1,1
5,3,1,1
5,2,2,1
4,4,1,1
4,3,2,1
4,2,2,2
3,3,2,2
つまり4人を選出し、その4人のパフォーマンスを比較したうえで、どのくらいの点数差が妥当であるかを上の組み合わせに当てはめればよいということです。こうやって審査員一人一人が点数を出し、それを合計&さらに投票点と合計します。もちろん点数の多い人が勝ちです。
で、あとは審査の基準ですが、今回は
「良いスピーチを選ぶ」
という抽象的なものにしました。なぜそうしたかというと、
・スピーチは要素に細分化できるものではない
という考えからです。また、「そうすると審査基準がばらばらになるのでは?」ということに関してですが、
・そもそも一定の基準で選べるものであるのなら、審査員を立てる必要がない
という結論に達することになります。わざわざ5名の審査員をお呼びするということは、その審査員の主観で判断してもらいたいということでもあります。だからこそ、審査が偏らないようにいろいろな属性の人を審査員に立てることに奔走したということでもあります。
審査の方法については以前悩むだけ悩んだことがあります。もし詳しく知りたい方がいましたら、私の過去の一連の投稿を読んでいただきたいと思います。↓を読めば、なぜ私がこの方法を選択したのかもご理解いただけると思います(まあ、完璧な採点方法はない、というのは前提です)。
■日本語スピーチコンテストの審査方法について考える1
■日本語スピーチコンテストの審査方法について考える2
■日本語スピーチコンテストの審査方法について考える3
■日本語スピーチコンテストの審査方法について考える4
ちなみに審査点はGoogleフォームで審査員の方に送ってもらいました、そのフォームが反映されるスプレッドシートに予め計算式などを埋め込んでおいて、全員が回答すればちょっとした操作で順位がでるようにしておきました。一人リハーサルもおこなっていたので、特に問題は起きませんでした。ただ、審査結果が出ないことにはコンテストを締められないので、Google自体がダウンしてしまうなどの最悪の場合を想定してExcelで計算できるようにもしておきましたし、口頭の結果伝達もできるような「もしも」に備えた対策はいくつか準備しておきました。
また視聴者投票も同じくGoogleフォームです。URLをライブをおこなっているところで配布し、一般参加者に投票をしてもらいました。組織票を避けるため、一人一回だけ投票できる設定にしました。また時間も10分間のみとしました。
まとめ
というわけで、最近かかわったスピーチコンテストの概要について書きました。
トラブルらしいトラブルが一つありました。それは参加者のビデオが途中で終わってしまったんですね。私はよく聞いていなかったので一瞬何が起こったのかわからなかったんですが、他の関係者に連絡を取ったところ「ビデオが途中で終わったのは確かである」という結論に達しました。
で、運営陣とチャットで話し合い、結局、当該ビデオの終わりの部分だけ、もう一度再生することにしました。これはビデオを流す方式の利点ですね。もう一度流すことが簡単ですから。
生配信に携わる人たち(司会者やZOOMホストなど)は現場に集まっていたのですが、私やその他の運営陣はみんな遠隔で参加していました。ですので急なトラブルや変更の際にはチャットで話すことになるんですが、その意思疎通をとるのは結構大変でしたね。みんな現場にいればすぐに耳打ちしたりできるんですが。
小さなトラブルもいくつかはありましたが、私は成功したと思っています。やはり一番大事なのは段取りとリハーサルですね。頭の中で思い描いていることが、実際にやってみると違うことがあります。ですからぶっつけ本番はダメ、何度でも練習してみることが大事だと思いました。