先日、上海で開かれた日本語スピーチ大会に参加してきました。参加と言いましても、私は審査員としての参加です。
その運営方式がなかなかおもしろかったので、自分へのメモの意味もこめて、その内容などを記録しておこうかと思います。
大会概要
・大学生40名が参加(1次予選通過者のみ)
・第一部と第二部に分かれている
・第一部はテーマスピーチ(あらかじめ決められた2つのお題から一つを選んで3分で話す)
・第二部は即席スピーチ(その場で決定されたテーマについて2分10秒以内で話す)
・出場者は第一部、第二部どちらにも参加し、総合得点が高い人が勝ち
ハイブリッド開催
今回はCovid-19の影響もあり、ハイブリッド開催となりました。ハイブリッド開催と言ってもいろいろあると思います。少し説明します。
・出場者・見学者は、オフライン会場には来ない(それぞれの場所から参加)。
・審査員、主催者はオフライン会場から参加。
まあ、ここまではありがちですね。私もカンボジアにいる時にハイブリッドのスピーチ大会に関わりましたが、その時は「審査員もオンライン参加」で、主催者(司会者および配信主体)のみオフライン会場に集まりました。
おもしろかったのは、この次です。第一部は午前、第二部は午後におこなわれたんですが、
・第一部はあらかじめ撮って、提出していたビデオを配信する。
・第二部はビデオ会議システムで、リアルタイムのスピーチを配信する。
ということです。
考えられた二部構成
スピーチ大会は1日がかりでしたが、出場者は拘束時間が短いというのが良い点だと思いました。出場者にしてみると、もし仮に上記の二つのスピーチを午前午後にリアルタイムでおこなうとなると、そのストレスは尋常なものではないと思います。
それに加えまして、二部構成にすることによって出場者のいろいろな面を見ることができるとも思いました。
第一部はあらかじめビデオを提出する方式です。そうなりますと、出場者側としては周到な準備ができます。あまり自分の日本語力に自信のない人でも、ある程度努力、練習でカバーすることが可能です。ビデオでしたら、何度でも撮り直しができますしね。努力がそれなりに形となって現れるという点では、教育的によろしいのではないでしょうか(知らんけど)。
反面、第二部は一発勝負です。しかも、テーマは話す10秒前に決まります。テーマはどんなものがあったかというと「日本語を習い始めたきっかけ」「日本語を使ってやりたいこと」「20年後の自分」「日本語の難しいところ」みたいな、どちらかというと話しやすいことばかりでしたが、それでも外国語で2分の話をその場で考えておこなうというのはなかなか大変な作業です(私もできません)。
というわけで、第一部は「努力」が見られ、第二部は「機転」「集中力」「日頃の考え」などが見られるということで、出場者のいろいろな側面が発見できるようになっているんですね。ただそのベースとなっているのは「日本語を操る能力」であることは変わりません。日本語が上手な人が有利であるのは当然です。
型を作っておく参加者
第二部は即席スピーチですので、しどろもどろになる参加者も少なくありませんでした。途中で言葉が出なくなって、「すみません・・・」という参加者を見るのは少し忍びない気もしました。
しかし、同じ条件でもやはりうまいことスピーチをする人もいました。考えてみますと、上手にやり遂げた参加者には一つ共通するやり方があったような気がします。それはあらかじめ型を作っておくということです。
何人かの参加者は出だしが以下のようでした。
「質問ありがとうございます。これから◯◯というテーマについて話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。」
おそらく↑の出だしは最初から決めていたのでしょう。そしてそうやって話を始めながら、何を話すかを考えるということですね。ある程度日本語力に自信のある人にとっては良い方法だと思います。そうやって話し始めたら口が自然に動いてくれるかもしれませんからね。
あと、「うまい!」と思ったのはおそらく「どんなテーマがあってもこの話と結びつけよう」という態度で話をした参加者でした。ちょっと話の内容は忘れてしまいましたが、とてもペラペラと話をしていました。そして私はそれを聞きながら「どうやってテーマに着地するんだろうか」とハラハラしていたんですが、うまいことそれらしい話になったんですね。
この辺は「話術」と「こじつけ」と「度胸」だと思いましたが、それができるのも高い日本語力という裏付けがあってのことでしょう。
テーマは話し始める10秒前に決まるのですから、内容を考えておくことはできません。「この中から出します」という枠があったわけでもありませんから、とにかく準備のしようがないのです。でもその「準備ができない」中でできる限りの準備をした参加者の方の能力や努力にはなかなか素晴らしいものがあるな、と思いました。
まとめ
というわけで、先日参加したスピーチ大会について書きました。
参加した私としてはいろいろな可能性やチャレンジの仕方を勉強するいい機会となりました。
即席スピーチというのは私は初めて見ましたが、可能性が秘められていると思います。また伝統的なスピーチ方式と組み合わせるというのもなかなか良いものだなと思いました。