最近、ある同業者の方(仮にAさんとしましょう)とメールでやりとりをしていました。私は「もし、よろしければそちらを訪問して意見交換などできないものでしょうか?」という内容のメールをAさんにおくりました。Aさんとは何回か会ったことがあり、仕事上での付き合いですけど、わりとフランクに話ができます。
それに対して返ってきたAさんの答えは、「今私は日本にいます。もし必要であればZOOMなどで対応は可能です」というものでした。
私はAさんがてっきり国内にいるものだと思っていたので、「そうですか、ならばわざわざオンラインでお呼び立てするまでのこともないので、こちらに帰ってきたら改めてお会いしたい」と答えてメールのやり取りが終わりました。
私はその最後のメールをやり取りをしながら、自分がとんでもなく頓珍漢な人間なのではないか、と思いました。
会うこととオンラインの違い
一応、頓珍漢に感じた経緯を整理してまとめておくと
・会いたいと言ったのは私の方である。
・特にオフラインで会う必要性はない。
・Aさんは「オンラインでも対応可能」と言っている。
・なのに私は「そのうちオフラインで会いましょう」と言った。
という点です。
私とAさんは会っても机を挟んで座り、日本語教育談義を行うだけです。もしも「Aさんと会う時はいつも腕相撲の勝負をしている」とかそういうことでしたらオフラインで会わないと意味がないですけど、そんなことはありません。
また、Aさんに会う時はだいたい私がAさんの職場へ行きます。ですのでAさんとしては、オフラインで会うことと、オンラインで会うことに実質的なコストの差はありません。
しかもAさんの「オンラインも可能です」という提案に対し、私は「オンラインでわざわざお呼びだてするのは申し訳ない」とまで言ったのです。仮にオンラインで会ったとしても、オフラインで会ったとしても、Aさんの貴重な時間を奪うことには変わりはありません。
ですから、上のことを総括すると、私は
特に話すこともないくせにオフラインで会いたがる面倒な人間
である、ということなんです。
もっと要点を絞って言いますと、私はですね、雑談がしたかったのです。そして「雑談のために会いに行く」のは許される気がしたけど、「雑談のためにオンラインに呼び出す」のは気が引けたのです。
みなさんはこのような考えについてどうお考えでしょうか。
オンラインと雑談
そんなこんなで自分の行動について考えていた時に、先日行われたセミナー?の情報が舞い込んできました。断片的なメモのようなものを見ただけですので、講演者の意図とは違うかもしれません。
教師のタイプには2つあって、それは「内容伝達型」「感情型」というものです。内容伝達型の方は、簡単に言うと、教案通りにかちっと授業を進めるタイプで、感情型は脱線上等、その時々の様子を見つつ授業をフレキシブルに進めるタイプ、という感じでしょうか。
対面授業では「感情型」の方が好まれる傾向があるが、オンライン授業だと「内容伝達型」の方が好まれるとのことでした。で、なぜ授業の形態により好まれるタイプが変わるのかというと、
オンラインでは事実伝達は可能でも経験談や雑談は困難なため
という一文がありました。うーんこれは興味深い。
確かにオンラインでは雑談は難しいんですよね。例えば、一昨日のことですけど、同僚的な人と対面ミーティングをしました(3人で)。そのあと一緒に昼ごはんを食べに行きました。そのあとコーヒーを飲みに行きました。結局一緒にいた時間は2時間半でした。
その間仕事の話をしたのはたった30分です。残りの2時間は他愛のない話をしていました。つまり雑談です。
じゃあ、その仕事の話がオンラインだったらどうなったか?と考えたら、30分で終わっていたんじゃないかと思うんですよね。最後に多少雑談はしたかもしれませんが、2時間以上もダラダラと会話をオンラインで続けることはまずないでしょう。
オフラインならよくあることがオンラインでは起こらないということです。
雑談は可能
しかし、例えば「ZOOM飲み会」とかは雑談ですよね。また私が時々参加している「ZOOMでハナキン」には「雑談部屋」がありますし、会が終わったあとに夜を徹して雑談を続けている人たちもいるそうです。
ということは、オンラインでは雑談ができない、というわけではないということです。おそらく、
ここは雑談をする場なんですよ〜
という共通理解が作られたときにはオンライン雑談が可能になるのではないかと思います。だからそういった意味で、私がAさんに雑談をオンラインでオファーできなかったのは、二人の関係性を考えたときに
さあ、雑談しましょう!
といえる関係ではなかったということなんじゃないかな、と思いました。オフラインは「雑談しましょう!」が割と楽に言えるんですよね。「飯食いながら」とかもあるでしょうし、「久しぶりに」なんてのもいいエクスキューズになりますよね。
場をどう設定するか
で、話は解決した?わけですが、このブログの趣旨を鑑みた場合にはやはり日本語教育的文脈に着地しておく必要があります。
やっぱ思い出すのは(てか最近の話ですが)、冒険家の村上氏の講演ですね。
↑「授業が全部オンラインになって友達もできない」という不満が学生から出ているようですが、それは全部教師の授業設計のミスですよ、という話です。
そうなんですよね、放っておいては雑談はできないんですよね。上でみたようにオンラインでは
ここは雑談する場なんですよ〜
という設定をしないとだめなんですよね。
まあ、この「雑談する場を設定する」ってのはあくまでも比喩です。別に関係形成のためには雑談でなくてもいいですよね。でもとにかく非公式にフランクになにかやりとりのできる場を意図的に作る必要があるね、ということです。まあ、そのやり方は教育機関や置かれた環境によって変わると思いますけど。
雑談ができない授業は楽しいか?
何年前だったか、勉強会のようなものに呼ばれて少し話をしたことがあります。まだ今ほどZOOMとかが一般に浸透していなかった時に、「ZOOMの使い手」として話をしました(私は以前1年くらい毎週ZOOMを使ってイベントをおこなっていました)。
イベントだけじゃなく、大学の授業でもZOOMを使ったことがあったのでその時の経験をシェアしたんですね。今でもよく覚えているんですが、私はZOOM授業をやってみて短所だと思ったこととして、
学生同士の雑談がしにくい
という点を上げました。オフラインの授業では講義をきいていても隣の席の学生と小声で話をすることができますよね?「だりー」「終わったらどこいく?」というような完全な私語もあるでしょうし、「え?先生今なんて言った?」とかもあるでしょう。
でもオンラインだとちょっとむずかしいですよね。すくなくともZOOMを通じて「だりー」「終わったらどこ行く?」は音声では言えないでしょう。まあ考えてみればLINEなどの別ツールを使ったり、プライベートチャットを使えば雑談的なことはできなくもないですけど、とにかく私は「ZOOM授業の短所」として「学生同士の雑談がしにくい」ことを上げました。そうしたらですね、ギャラリーから
え?それって長所じゃないんですか?
という笑い声混じりの質問?意見?があったんですね。私は一瞬にして笑いものになってしまいました(泣)。完全アウェイだったというのもありますけど、とにかくその場では「学生同士が気軽に話をできない(私語ができない)のは良いことである」という空気がありました。
別に私はその人達とやり合うつもりはなかったので「そうですかね?えへへ」とか言ってその場を濁しましたけど、心のなかでは、
雑談できない授業が楽しいか?
と思っていました。適度に私語をするくらいが私は健全だと思いますけどね(あ、でも昔大学でやってる時に私語がうるさすぎて授業にならないということもありました。そういうのを想定した場合は利点になるかもしれませんね)。
ちなみに私がZOOMなどに実装してもらいたい機能は、プライベート音声会話機能です。今でもプライベートチャットはできますけど、プライベート音声会話はできませんよね。ある特定の人とだけ音声で声をかけられるようなシステムがあればいいなあと思っています。
まとめ
というわけで、オンラインと雑談についてつらつらと書いてみました。ただ、私は「オンラインは雑談が設定しにくい」ということを前提にしましたけど、それももしかしたら世代や育ち方、性格的なものかもしれませんね。
電話は要件が終わったら切る、みたいな。
ただ、例えばですね、オフィスで仕事をしている時は同僚にすぐに声をかけられますよね。「あ、すみません、今ちょっといいですか?」みたいな。でもオンラインだと、「じゃあ10時半に〇〇に接続してください、大丈夫ですか?」みたいにミーティング設定になりがちなんですよね。
相手にかける迷惑度を考えたら「アポ無しでLINEのビデオ通話」と「オフィスでちょっといいですか?」は価値としては同じだと思うんですが、やっぱ「アポ無しでLINEのビデオ通話」は気が引けます。てかできません。
これは国や文化、世代、育ち方、職場文化によって変わるものでしょうね。ほんとつらつら書いてスンマセン。特にオチはありません。