香港のセミナーに参加してきたよ

投稿者: | 2023年4月6日

仕事の一環で、2023年3月25日と26日に香港で開かれたセミナーに参加してきました。

両日午後だけの日程で、初日は講義、二日目はワークショップという形式でした。講師は国際教養大学の伊東祐郎氏と武蔵野大学の神吉宇一氏。どちらも日本語教育界では超有名な方々ですね。

この記事ではその二日間のセミナーで得たことを、少しだけ皆さんと共有しようかと思います。ほんとご紹介したいことは山ほどあるんですけど、紙面の都合上大きく2点だけに絞ってお伝えしようと思います。

伊東氏の講義ワークショップで得たこと、神吉氏の講義ワークショップで得たことをそれぞれ一つだけご紹介します。

まとめることの重要性

伊東氏の方に関して初日の講義の内容から少し話をしたいと思います。

タイトルは「グローバル化・デジタル化の進展する日本語教育と日本語教師の役割」でした。

大まかにいうと、

新型コロナの影響で行わざるを得なかったオンライン授業のまとめをしながら、その上でこれから私たちはどのような方向に進んでいくべきなのかを考えるといったようなことでした。

私がこの講義で感じたことは、

「まとめ」の重要性

です。

伊東氏は講義の多くの時間を「コロナ禍でおこなわれたオンライン授業のまとめ(総括)」に使っていました。

オンライン授業とは何か
オンライン授業の実態はどうか
指導形態はどのように変化したか
学生はどう感じ取ったか
教師はどのように対応したか

最初は、こういった話を聞きながら「みんな知ってることだよな」と思っていました。普通セミナーとかに参加すると「新しいこと」を学びたいと思うじゃないですか。でも、前半話されたことはほとんどが既知のことなのです。

ただ、ですね、聞いているうちに、さまざまなな過去の経験が思い起こされていくんですね。

「オンライン授業にはオンデマンド型とライブ配信型があって・・・」「学習者が最も困ったことはネット環境の問題で・・・」「カメラオフによる心理的な距離感を感じる教師が多く・・・」

ああ、あったあったそういうこと。あれはこうやって乗り切ったんだよな。確かに、あれは困ったな。そういう悩みを持っている人もいたな・・・

そして話を聞きつつ過去を回想しつつ、私なりの一つの結論に辿り着きました。ほんとすみませんけど、

私はコロナの時期をうまく乗り切った

それをちょっと引いた目線で認識することができたんです。かっこいい言葉で言うとメタ認知的に。

いや、ここで言いたいのは私がコロナの時期をうまく乗り切ってすごいでしょ、ということではなくて、

「既知のことばかりじゃないか」と思っていたセミナーの内容が、実はすごい教育的効果のある内容だったのだなということですね。だって先生は一つのことしか話してなかったのに、それぞれの参加者がそれぞれの立場で過去を振り返り、メタ認知することができたということなんですから。

(そのメタ認知の後に私の未来につながる大事な発見をしたんですが、それを話すと長くなるのでここでは割愛します。)

とにかくある程度大きな出来事(例えば今回で言えば「コロナ禍でのオンライン転換」)があった時にはそれをまとめることって重要なんだなと思いました。

このセミナーが対面でかつ(日本から見れば)海外で行われたということは、それはつまり

コロナは終わった。

ということを示唆しているわけです。そしてそのタイミングでコロナ禍におけるオンライン授業を成仏させるための「まとめ」をおこない、参加者がそれぞれに「コロナ(禍でのオンライン授業)を見送った」ということで非常にエポックメイキングな講義でした

ちなみに講義はその後、このアフターコロナ後における教師の役割はどのように変わるか、我々はわちゃわちゃしたオンライン授業からどのように発展的に成長していくべきなのかが述べられました。

「土の人」と「風の人」

さて、もうお一人のゲスト神吉氏の方については、二日目のワークショップの内容からご紹介したいと思います。

ワークショップのタイトルは「日本語教育者の専門性を考える〜日本国内と海外、香港〜」でした。

ワークショプは参加者が4、5名一組くらいになって、いくつかのお題についてお互いに話し合いながら進めていく感じでした(グループは4つか5つくらいできました)。だいたい3つか4つくらい話し合うポイントがありました。

そして最後にこういう指示が出たんですね。

・今いるグループで、「土の人」を1名決めてください。「土の人」はその場に残ります。
・それ以外の人は「風の人」として別れて別のグループに行きます。
・「土の人」は話し手です。自分たちのグループでどんな話をしたか、やってきた「風の人」に」説明してください。
・「風の人」は基本的には聞き手ですが、わからないことがあったら質問してもいいです。
・5分共有の時間をとります。時間になったらもとのグループに戻ります。
・戻ってきたら、今度は「風の人」が話し手になって、他グループの話を共有してください。

(以上、氏の発表資料より引用)

つまり早い話が、グループに残る人を一人決め、あとのメンバーはそれぞれ別れて他の人の話を聞きに行き、それを聞いたらその話を元のグループに帰って共有するってことなんです。

・・・ん、それが??いや、普通じゃん、と思ったあなた、いやそう、普通なんですよ。特に目新しいことはありません。例えば我々はジグソーリーディングなんかで似たような活動をしたりしますよね。

私がこの活動で得たのは

「土の人」「風の人」

というワーディングなんです。なんかね、「一人残って、後の人は・・・」とか決めるより、わくわくするわけですよ。ただ残る人を決めるという言い方より。

私は結局「風の人」になったんですが、風のように他の場所に行って飛んでいって、話を聞いて、また土(土着)の場所に戻ってきました。なんかね、ただ単に役割を「土の人」「風の人」と呼ぶだけなのに、この活動に対するモチベーションがすごく高くなったんです。

私は「風の人」としての使命を果たさねばならない!とまでは言いませんが、とにかくイメージが直感的に感じられました。シェアする、共有するということの意味が瞬間的に前景化されたんですよね。

・・・ん?いや君何言ってんの?と思った人、あなたも間違っていません。心に響く言葉というのは人によって違うから。

で、私が言いたいことは「ワークショップの時は土の人、風の人という言葉を使いましょう」ということではなく、いやそれもいいんですけど、それよりも何気ない言葉やラベルの貼り方にも魂を込めるやり方があるということなんです。

そういえば昔グループワークの時に「まずグループの名前をつけてください。知っている日本語で」というようなことをやっていたことがあります。結局面倒になってそれはやめたんですが、ただ「Aグループ」と呼ぶより楽しい感じがするんですよね。

もちろんグループの命名は今私が思いついた例(あんまり良くない例)ですけど、つまりは授業のヒントはちょっとしたワーディングにも隠れているのかもしれない、ということです。

ワークショップの本質に迫れなくて、申し訳ありませんが、とにかく私がこの限られた紙面でシェアできるのはそれくらいです(ほんとは限られてないけど)。

ちなみに質問コーナーの時「この言葉に元ネタはあるんですか?」と聞いてみたら、特に「元ネタ」と呼ばれるくらいのものはないとのことでした。ネットで調べても、この言葉はヒットするもののワークショプとかで使われるような言葉ではないようです。

まとめ

以上、香港で参加したセミナーについてゲストの先生方の講義ワークショップの内容から一つずつだけ取り上げて紹介させていただきました。

どちらの先生の講義もワークショップもとても有意義で学びが多かったことは言うまでもありません。

久しぶりの対面でのセミナーでしたが、オンラインとはまた違うなと思いました。どちらが良いということではなく、やはり得られるものが少しずつ違うということです。

また、私に声をかけてくださった香港の皆様、ありがとうございました。非常に嬉しかったです。

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