西隈俊哉(2020)『2分で読解力ドリル』学研プラス
2020年12月3日に発売された新刊です。日本語教育ど真ん中の本ではありませんが、日本語教育方面にも応用が十分可能な本だと思いましたので、ここでご紹介させていただきます。
鬼門の読解
私はカンボジアで日本語教育に携わっているのですが、「読解対策はどうすればよいのか」という質問を一時期よく聞きました。それで、「読解」をテーマにワークショップを開いたこともありますし、ゲストを呼んで読解対策について話をしてもらったこともあります。
↑は私が「初級の読解」をテーマに話をしてもらいたいと言われてやったワークショップについてなんですけど、クイズを入れたり、読むときに時間を測ったり、要約をさせたり、多読を取り入れるなど、とにかく授業活動でおこなえそうなものをいろいろ紹介しました。確かに小ネタはいろいろ紹介できたし、間違ったことは言ってなかったと思います。
でもですね、この今日紹介している本を読んでわかりました。読解力を鍛えるには一つしかありません。それは、
量をこなす
ということです。クイズをするのも良し、時間を測って読むのもいいんですけど、読解力を高めるにはたくさん読むということが大事なんですね。著者のあとがきにも
「たくさんの問題を繰り返し解こう」
「面倒だと感じても地道にコツコツ進めていくことは大事なのです」
ということがしっかりと書かれています。
とにかくハードな読解
というわけで、この本には数多くの読解問題が書かれています。大きくは5つに分かれています。
基本読解
指示読解
図表読解
論理読解
接続読解
1ページに2問あり、その次のページに回答があります。「コツコツ進めることが大事」と言っているように、その量は非常に多いです。そして、
けっこうガッツリしています
例えば↓こんなの。
私は、まあこう見えても、一応日本語を生業としていますし、よく本も読む方ですから最初は舐めてかかっていたんですが、
結構難しいです。
本気で集中してやれば外すことはないですが、ちょっと気を抜くと間違ってしまいます。
ただ、良いところは、文章自体が短いことです。長文を読むのが苦手、嫌いな人も一日2問くらいならどうにか集中して取り組めると思います。
読解問題のノウハウを盗め
日本語教師目線で見るとこれは宝の山ですね。
というのは、この本自体が読解問題の作り方のお手本だからです。さすがにこの本はネイティブの私にとってもガッツリしているので日本語教育シーンで使おうと思うとかなり限定されると思いますが、この問題作成のノウハウを利用すればレベルに応じた練習問題を作ることができると思いますし、どのあたりがポイントになるかがわかると思います。
…とここまで書いて、もう一冊あることに気が付きました。それが↓「ちょっとやさしめ」のこちら。
こちらは購入していないので何とも言えませんが、おそらくそのまま練習問題にも使えそうなものがあるのではないでしょうか。とにかく、大事なのはここに書いてある問題がそのまま使えるかではなくて、読解問題のポイントを学ぶことにあるような気がします。
まとめ
というわけで、非常に簡単ではありますが、最近発売された『2分で読解力ドリル』をご紹介しました。以下の2点が本書の特徴でしょうか。
・豊富な種類、数の読解問題
・だが、一つ一つの文は短い
ここにある問題を授業で使うかどうかは別として、
読解はガンガン読んで鍛える
ということがよく理解できました。また機会があれば、「読解部分で点数が取れない」という悩みを持つ学習者や先生方にこの本を紹介しようと思います。
■こりゃ使えるわ!「JFS 読解活動集」
■レビュー『日本語教師のための実践・読解指導』