やっと本が手に入り、読めました(電子書籍があればもっと早く読んでいたんですが)。
舘岡洋子編(2021)『日本語教師の専門性を考える』ココ出版
紙の本か電子書籍かって好みが分かれるところなんですが、基本的に私は電子書籍派です。まあ基本海外にいるからってのがいちばん大きいと思いますが、
ハイライト機能
これも大きいです。電子書籍だと気になったところに素早く線を引けますし、後から検索も容易ですからね。まあ好みは人それぞれなんで、みなさんがどちらを好きでもそれはどうでもいいんですけど、とにかく紙の本だとハイライトできない=内容を忘れてしまうと思いました。
それで編み出した?のが章ごとにメモ書きをTwitterに投稿しておく方法(まあ珍しくもないですけど)。
・投稿する前に一度内容を反芻しないといけない
・140字にどう収めるかを考えないといけない
・後から容易に見直せる
という利点から「章ごと投稿」をやってみました。「後から容易に見直せる」ように、ここで一連の投稿をまとめておきます。
かなり遅れて読み始めました。
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 10, 2023
専門性観には「一般的・静態的」「個別的・動態的」なものがあり、今の時代では後者の観点を持つ必要がある。
すなわち、「これができたらOK」じゃなくて常に「何をすべきか、どうあるべきか」を探求していく態度を持つこと。
先が楽しみ。https://t.co/eYHF5ARyNd
第2章。
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 12, 2023
日本語教師は第三者の要請に応じて生まれてきたものなので、自然と「ここで自分は何をすべきか、何が期待されているか」に意識が向いてしまい、「教師としてのアイディンティティ」に目を向けにくくなっている。
なるほど。確かに私もそうです。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第3章「日本語教師の役割をめぐる言説の変遷」
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 16, 2023
日本語教師の役割は70年代以降、
日本語を教える→学習を支援する→教室環境を設計する→社会的な観点から捉える
と新しい概念が出てきたが、新しい概念が古い概念に取って変わっているわけではなく、今でもそれぞれの概念が並立している状態。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第4章 学会誌『日本語教育』に見る日本語教師養成・研修に関する言説の変遷
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 17, 2023
70年代 知識獲得型教師の育成
80年代 学習者の多様化に対応できる今日の育成
90年代 自己研修型教師の育成
00年代 協働できる教師の育成
10年代 社会性のある教師の育成
90年代以降は「自己研修型教師」が主流に。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第5章 日本語教師の公的資格制度創設をめぐる近年の動向
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 18, 2023
今後創設される日本語教師の公的資格制度について概観。
新制度は日本語教育の質の向上、進展のためには意義がある。
ただ、この議論は外国人材の受け入れに関する施策と関連があり、要は経済的な要求に応える目的で進められてきたということ。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第6章 「専門性の三位一体モデル」の提案
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 18, 2023
・理念=どんな教育を実現したいのか
・フィールド=現場をどう把握評価するか
・方法=理念をフィールドで実現するための方法
この三者の動態的な関係性を問うことが日本語教師の専門性を実現する手立てとなる
わかりやすい。 https://t.co/eFoUkHKp1w
第7章 専門家としての日本語教師の省察
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 19, 2023
デューイ、ショーン、コルトハーヘン、佐藤、岡崎・岡崎、横溝という流れを紹介した上で、省察を繰り返し現場の改善を目指すことが日本語教師の専門性であるとしている(動態的な専門性観ですね)。
その省察の場やコミュニティの形成がこれからのキーとなる。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第8章 「三位一体ワークショップ」の提案
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 22, 2023
ワークショップを実施。理念の部分でいくつか重要な議論が。
①理論は普遍的なもの(時間によっては変わるが
、フィールドによって変わるものではない)
②理論は抽象的なもの
③理論は日本語教師としての生き方とつながる https://t.co/eFoUkHKWR4
↑「理論」じゃなくて「理念」ですね。
第9章 対立したまま理解すること
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 22, 2023
違う教育理念を持つ著者と森田先生(仮名)の対話を分析したもの。
「教師一人一人が持つ言語教育観を相手に理解してもらおうとことばを重ね、相手のことばに耳を傾けることで、自分自身と他者の差異が明らかになり、言語教育間が自覚されるのである」 https://t.co/eFoUkHKWR4
第10章 新人ノン・ネイティブ講師とのピアカンファレンス
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 23, 2023
マレーシアでの実践。教師研修ではベテランネイティブ講師が経験の浅いノンネイティブ講師に指導をおこなうような形が一般的だが、ピアで省察をおこなうことでネイティブ、ノンネイティブ、新人、ベテランという枠を超えた研修が可能になる。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第11章 大学の日本語教員の専門性についての考察
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 24, 2023
大学の一般教員の留学生指導における「省察」を考察したもの。
一般教員と共に大学のような所属機関全体の教育を考えていくことも日本語教員の持つべき専門性と言えるとのこと。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第12章 自己と日本語をつなぐ「キャリア日本語教育」の実践
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 26, 2023
キャリア日本語教育の一環としておこなったナラティブ対話から新たなスタディグループが立ち上げられた実践の概要を報告した。
この実践自体が予定調和的なものでなく動態的なものとなっており、その構造を三位一体モデルから分析している https://t.co/eFoUkHKWR4
第13章 外国人材と日本社会をつなぐ日本語ビジネスコミュニケーション
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 30, 2023
一般に外国人のみで行われるケース学習を日本人も参加しておこなったことに対する考察。
企業などと日本語教師が連携・協力することも必要になるのではないかとのこと。
確かにそこに異文化理解に長けた人がいてもいいですね。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第14章 日本語教師の越境的学習
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) May 31, 2023
既存の枠組みを超えて学ぶプロセスを「越境的学習」という。タイの日系企業において、所属の日本語教師がどのような役割を果たしているかが報告されている。
日本語教師の専門性はこのような場でも生かされることがわかる。 https://t.co/eFoUkHKWR4
第15章 「ちっぷ100人サミット」
— さくま しろう(佐久間司郎) (@shirogb250) June 2, 2023
今後外国人材の流入が予想される地方の住民向けにおこなった外国人との共生のためのワークショップについて。
地域住民がどのように外国人と関わっていけるかを考えることは今後必要になる。そこでも日本語教師としての専門性が活かせるとの報告。 https://t.co/eFoUkHKWR4
まとめ
こうやって少しずつ記録をつけていくのもいいものですね。本一冊読み終わったら大体内容を忘れてしまいますが、こうやって概観することで朧げながら内容を思い出すことができます。
この本から学んだことは、「動態的専門性観」という観点ですね。ルーブリックの各観点を埋めていくだけではだめだということです。未知の領域に果敢に飛び込んでいけるように、確固たる「理念」を固めそれを各「フィールド」で活かせる「方法」を常に模索していく力が必要なんですね。
ですから「それをルーブリックで示して点数で評価するようにしよう」というのは愚の骨頂で、じゃあどうやって個人の「専門性」を評価していくのかっていうと、それはそれでまた別の問題になるとは思うんですけど、個人としての進む方向は、この本を読む前と後で少しだけわかったような気もしました。
また、見えてきたのは日本語教師の日本語教師じゃない使い道ですね。
日本語の使用が前提となっている環境で日本語母語話者と非母語話者をうまいこと繋いで行けるのは、確かに日本語教師が得意だろうなと思いました。
いろいろと学びのある本でした。